第34話 災竜デルガゼルドの影響力

 災いを呼ぶドラゴンこと災竜デルガゼルド。

 ヤツが出現する前触れとして魔法を使うモンスターが各地で目撃されているという。

 

 ――だが、書物にはさらにいくつかの前兆現象が書かれていた。


「自然災害の多発に動物の異常行動ですか……こちらは今のところ見られませんね」

「まだこれから発生するかもしれんから対策は必要だな。動物の異常行動に関してはこっちに例がいくつか載っている。これを参考にするのもいいだろう」

「ありがとうございます。では、メモを――」

「いや、こいつを持っていってくれていいぞ」


 そう告げて、ロウリーさんは本を俺に渡してくれた。


「い、いいんですか?」

「今は君の手に置いておく方がいいだろう。あと、君なら承知していると思うが……そこに書かれているのはあくまでも情報の一端。鵜呑みにしてはダメだぞ」

「心得ています」


 あくまでも有力な情報のひとつとして扱うが、自然災害の対策については国王陛下に伝えておく必要があるだろう。


「有益な情報をありがとうございました」

「おう。気をつけて帰れよ」

「ロウリーさんも、何かあったらアルテノアに連絡をください」

「分かった。その時は使い魔を送るよ」


 最後に握手を交わし、俺はアルテノア王都を目指して魔境をあとにした。

 これで少しは前進できたかな。


  ◇◇◇


 王都到着後。

 すぐに国王陛下へと謁見し、新たに発覚した内容を伝えた。


「そうか……魔法を使えるモンスターの出現は序章に過ぎないというわけか」

「あくまでもここに書かれている内容が確かであればという前提ではありますが」

「だが、モンスターに加えて自然災害まで加わるとなると結界魔法だけでは対処できない場面も出てくるな」

「私もそこを危惧しています」


 おまけにそれらがいつ発生するか皆目見当もつかないと来ている。

 そこにどうやって対応するのか。


 俺としてはひとつプランがある。


 王都をはじめ、国内各地を回ってみて思いついた案。

 これを国王陛下が認めてくださるか……聞いてみるか。


「陛下……ひとつご提案があります」

「提案? 聞かせてくれ」


 関心を示す国王陛下に俺は温めていたプランを話すのだった。

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