第33話 驚くべき情報

「遅くなって悪くなったな。最近書庫の整理をしていなかったせいで時間がかかってしまったよ」


 魔法を使うモンスターに心当たりがあるというロウリーさんが持ってきた一冊の本。

 こいつはかなり古いな。

 保存魔法を使って可能な限り当時の状態をキープさせているというが、それでもかなりボロボロだ。つまり、こいつが発見された時にはすでにこの状態だった……相当年季が入っているってわけだ。


「何年くらい前の本なんですか?」

「詳しい日付などが記載されていないので何とも言えないが、恐らく二百年くらい前じゃないかと推定される」


 二百年……不戦条約が結ばれるずっと前か。


「現在使用されている文字とは多少違っている部分もあるが、おまえなら翻訳魔法が使えるだろう?」

「えぇ。ちなみに例の件はどこに書かれていますか?」

「確か――あぁ、この辺だ」


 ロウリーさんが開いてくれたページに書かれている文字は彼が言うように現在使用されている文字とほぼ同じだが、細かなところで違いがある。


 このままだと正しく意味を理解できないので翻訳魔法を使用。

 それでようやく読めるようになった。


 ――で、肝心の内容だが……これがまったく予想もしなかったものであった。


「災いを呼ぶ存在……ですか」

「災竜デルガゼルド――かつて大陸全土を焼きつくさんばかりに暴れ回ったと言われるドラゴンだ」

「名前くらいは聞いたことありますが……あの話はおとぎ話の類だと思っていましたよ」


 伝説のドラゴンことデルガゼルド。

 だが、その存在は長らく架空のものだと言われていた。


 さらに書物を読んでいくと、どうやら著者は長年にわたって災竜デルガゼルドを研究している方らしい。


 肝心の俺が求めている情報に関してだが、災竜デルガゼルドの大暴れによって甚大な被害が出た国では前兆現象として魔法を使えるモンスターが出現したという記述があった。


「デルガゼルドが実在していたなんて……」

「無理もない。デルガゼルドが討伐されてからすぐに各国が焼け野原を自国の領土にしようと各地で小競り合いが発生したからな。エルダインを含め、不戦条約を結んだ大国が一気に領土を拡大できたのも災竜のおかげだとこの本には書かれている」

「なるほど。大きな被害を受けて弱っている国を吸収していったわけか」


 こうなると昔のエルダイン王家は災竜の存在に感謝しているかもしれないな。


 ――だが、待てよ。

 

「不戦条約を結んだ大国が災竜の恩恵を受けているということは、今回の事態にも気づいている可能性がありますね」

「どうだろうなぁ。少なくともエルダインにその気はなさそうだが」

「やはりそう思いますか」


 これに関しては俺も同感だった。

 騎士団や魔法兵団がお飾りの状態になっているあの国が緊張感を持ってデルガゼルドの再来に備えているとは思えない。


 そんなことを考えつつ書物を読み進めると、さらに驚くべき情報が書かれていた。

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