第31話 先輩魔法使い
魔法を使えるモンスターの存在。
なぜそのような存在が急増したのか――謎を解くため、俺は国王陛下の許可を得てある人物のもとを訪れることにした。
彼は現在大陸の最南端にある【魔境】と呼ばれる場所に住んでいる。
あそこには獰猛なモンスターがうようよ生息しており、どの国も領地にしたがらないことからそう呼ばれるようになった。彼のような規格外の存在でなければ足を踏み入れても数分でモンスターに食い殺されるだろう。
そういった場所なので今回は俺が鳥型の使い魔に乗り、単独で訪れた。
ルネやヴァネッサたちには自主鍛錬のためアルテノアに残っている。
ルネは最後まで同行すると言っていたが、なんとか説得に成功。さすがにここはルネでも苦戦するだろうからな。
俺としても現役を離れて長いし、あまり激しい戦闘は医者から止められているので空から彼の家へと最短ルートを使用してたどり着く。
彼が周囲の木を伐採し、そこに強力な結界魔法を張ってモンスターの侵入を防ぐようにしている。何を隠そう、俺の結界魔法もかつて彼から教えてもらったものだ。
――そう。
ここに住む彼ことロウリーさんは俺がエルダイン魔法兵団に所属していた時の先輩魔法使いなのだ。
そんなロウリーさんは現在この魔境で暮らしている。
退団する際、俺のもとへ別れの挨拶をしにきたが、その際に「これからはあまり人と関わらないように生きる」と言っていた。
風の噂では上層部とかなりもめたらしいが……あの人も正義感の強い人だからなぁ。あの頃は俺もまだ教官として駆け出しだったからこれといって圧力をかけられることもなかったけれど、騎士として分団長クラスまでいったロウリーさんにはしがらみも多かったみたいだ。
そんなロウリーさんだが、実は退団後も何度か会っていた。
魔法使いとして尊敬できる先輩だったし、いろいろとアドバイスをもらったんだよな。
ロウリーさんも俺のことは信用してくれていたみたいで、自分に分かる範囲ならと協力してくれていた。
今回の件……ロウリーさんなら何か知っているかもしれない。
木造家屋の扉の前に立ち、ノックしてみる。
「ロウリーさん、いらっしゃいますか? グラントです」
名乗ったところ中から物音が。
それからすぐにドアが開けられる。
「グラント? どうしたんだ? おまえがアポなしで訪ねてくるとは珍しい」
「実は折り入って相談がありまして」
「っ! ――分かった。とりあえず、中に入れ」
こちらの様子からただならぬ事態を察したらしいロウリーさん。
もしかしたら、彼も今世界に起きている異変に気づいていたのか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます