第30話 今後の方針

 王都へ戻ると、すぐさま国王陛下のもとへ報告に向かう。


「そうか……現状は想定以上に厳しいようだな」


 思わぬ内容に、イリアム姫と並んで項垂れるアルテノア国王。結界魔法の効果で安全性が増したには増したのだが、魔法を使えるモンスターという厄介な案件の根本手的な解決には至っていない。


 おまけに手がかりさえないときている。


「防戦一方というのも気持ちがいいものではないな」

「はい。ただ、間違いなく元凶はどこかに存在しているかと思われます」

「その元凶とやらを直接叩かない限り、魔法を使うモンスターは今後も増え続ける――君はそう考えているんだね」

「ここ数日の間に複数の個体で同様の現象が見られますので、そうなってくるかと。もっと懸念すべきはモンスターの扱う魔法がレベルアップしていくのではないかという懸念です」

 

 通常、魔法には扱えるレベルが存在する。

 最初に戦ったリザードマンは魔力を操作する程度であったが、次に遭遇したゴブリンは下級とはいえ攻撃魔法を使ってきた。さらにクラストの村では高度な召喚魔法を駆使するオークが出現した。


 この成長スピードは見逃せない。

 当然、それについても国王陛下に包み隠さず伝えた。


「そうか……」


 大きなため息とともに肩を落とす国王。

 

「陛下……私はこれからモンスターのことを詳しく調査していきたいと思っています。もちろん、教官としての仕事にも全力で挑んでまいりますが」

「よいのか?」

「このままというわけにはいきませんからね」

「グラント殿! 我ら騎士団も喜んで協力させていただきますぞ!」


 凄まじい熱量で叫ぶザネス騎士団長にたじろぎながらも、騎士団からも協力を得られるのはありがたい。


「しかし、調査とはいえ何かあてがあるのか?」

「正直、今回の件は前例がなくて原因について皆目見当もつきません」


 これは本音だ。

 現状では手詰まりの状態と言っていい。

 

 ――だが、そこから抜け出せるかもしれない手は考えてある。


「ですが、それはあくまでも私の知る限りの情報。過去に似たような事態が発生していないか調べてみようかと」

「なるほど。君がこれからしようとしていることに関しては理解できたが、そんな古い資料があるのか? 少なくともアルテノアには……」

「資料に関してはあてがありますので、問題ありません。少し調べてまいります」


 俺が知らないだけで、過去にはそういった事例があったのかもしれない。

 それを調べれば自ずと手がかりに行きつくだろう。


 大国エルダインの頃から続く伝手をここで生かそうか。

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