第29話 真相へ近づくために
翌朝。
俺たちは朝早くに出かける準備を整え、昨日訪れた村に再度訪れることとなった。
結界魔法をさらに強化してモンスターの襲撃に備える。
――だが、相手はかなり未知数の存在だからな。
次にどんなヤツが出てくるのか……怖いところだが、今できる最善の策を練って対策するしかないか。
やはり、根源を断たない限りは心から安心して眠れる日は来そうにないな。
すべての村での強化を終えて王都へと帰還する途中も話題はずっとその件だった。
「教官は今回の事件をどう見ます? 私は某国の陰謀ではないかと推理しているのですが」
「どうだろうな。確かに自然発生的に魔法が使えるようになったとは思えないが……だからといって安易に陰謀論へ結びつけるのは危険だ」
そうなってくると、大国同士の不戦条約も揺らいでしまう。
互いの国が密かにモンスターを兵器として運用しようと企んでいるなんて噂が広まれば、長らく続いた平和にも亀裂が入るってものだ。
とはいえ、まだ他国でも同じような被害が出ているか分からないのでその線を疑うのはもうちょっと先になるだろう。
けど、俺たちとしてはそうのんびりと構えてはいられない。
エルダインのような大国であれば戦力もあるのでいくらでも時間をかけて対策を講じられるし、他国との協力体制を取ることもできる。そうすれば、自国が怪しいという疑惑の目を向けられる心配もないからな。
「じゃあ、もし人の手によるものでないとするなら、グラント教官は魔法を使えるモンスターの出現について何が原因だとお考えですか?」
「そうだなぁ……」
ヴァネッサからの質問に対し、俺はちょっと悩んでから自分の考えを述べる。
「人間とは違う存在によって知恵を与えられているのかもな」
「「人間とは違う存在?」」
ルネとヴァネッサは声を重ねて首を傾げた。
「あくまでも俺の予想に過ぎないが……わざわざ不戦条約を破ってまで事を荒立てるメリットが大国同士であるとは思えない。まあ、密かに戦力を蓄えて他の国の資源や領地を奪おうっていう業突く張りが国王をしているのなら話は別だが」
「うーん……その可能性は低そうですかね」
「でも、それじゃあ一体何が原因で?」
さっきとは一転して不安そうな表情を浮かべるふたり。
こればっかりはもっとしっかり調査していかないと答えにたどり着けないので、俺としてもその先は何も言えない。
ただ、この国のために頑張ろうって意欲は強く燃えている。
「原因究明のためにはまず王都に帰ってこれまでの報告をすること。今後の方針についてはそれから練るとしよう」
「「はい!」」
元気よく返事をしてくれるルネとヴァネッサ。
ふたりにはこれからたっぷり活躍してもらわないとな。
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