第26話 緊急会議

 当初の目的通り、国内にある町村へ結界魔法を張り終えたが……最後に訪れた村では召喚魔法を使うオークと戦闘になるという事態となった。


 リザードマンやゴブリンの時もそうだったが、魔法を扱えるモンスターが出現したとは言っても現段階ではまだまだ初心者が使うようなレベルの低いものであったため、なんとか対処ができた。


 ……しかし、問題はここからだ。


 ここまですでに三つの種族が平然と魔法を使ってきている。

 その事実を踏まえ、村長宅へとお邪魔して話をすることにした。


「このたびは危険なところを助けていただき、ありがとうございます」

「いえ、とにかく村人に怪我人が出なくて本当によかったですよ」


 今回の事件はルネやヴァネッサの活躍もあって家屋の一部が破壊されたくらいで人的な被害なひとつもなかった。


 ――ただ、これは運がよかったに過ぎない。


 俺たちの到着があと十分でも遅れていたら……最悪の場合、死者が出ていただろう。

 迅速に対応できて本当によかった。


 だが、こうなってくると結界魔法だけでは心もとないな。

とりあえずの対策として俺とルネの召喚魔獣を町村の周辺に配置し、常に様子をチェックしておくとしよう。


 本来ならこのまま王都へ戻ってもいいのだが、ちょうどいい機会でもあるのでこの場から国王へと連絡を取ってみよう。


「ルネ、あれを頼む」

「はい」


 俺が何を欲しているのか、現状からそれを的確に読み取ったルネは持ってきていた遠征用のバッグからとあるアイテムを取り出した。


「? 水晶玉なんて何に使うんですか?」


 首を傾げながら訪ねてきたのはヴァネッサだった。

 この国は魔法兵団がないせいか、国民が本当にこの手の魔道具とかに疎い……ちょっと心配だが、これから徐々に浸透させていこう。


「こいつは遠く離れた人とも連絡が取り合える優れものだ。ちょっと値は張るがな」

「こ、これで連絡を!? そんなことできるんですか!?」

「試してみようか」


 俺は水晶へ魔力を込める。

 すると、少しずつ色が変化していき、それはやがて人の形となっていった。


「っ!? こ、国王陛下!?」


 相手の正体が分かった途端、村長が大声をあげて頭を深々と下げた。


『む? グラントではないのか?』

「私はここにおります、陛下」

『おぉ、そこにいたか。調子はどうだ?』

「各地の結界強化は順調に終わりました。今はリストの最後にあった国境付近のクラトス村に来ています」

『クラトスか。――ということは、さっきの声はもしや村長のロデロか?』

「へ、陛下!? 私の名前を覚えていてくださったのですか!?」


 驚きに顔を上げるロデロ村長。

 もしかして面識があったのか?


『昨年の収穫祭で君が王都へ届けてくれた野菜はおいしかったぞ』

「おぉ……ありがとうございます!」


 ロデロ村長は泣き崩れるのを耐えながらそう告げる。

 それにしても、一年前とはいえ王都からもっとも離れた辺境の地にいる村長の名前をしっかり覚えているとは。本当に国民への想いが強い御方だ。


 その後、俺はクラトスで起きたオークの件と、結界魔法の他に召喚魔獣たちを各町村に配置する案を提案。事態を察した陛下は即座に了承してくださり、すぐにでも動き出すこととなった。


『君には何から何まで世話になってしまって……すまないな』

「とんでもない。まだここへ来て日は浅いですが、この国が好きになりましたから」

『そう言ってもらえると国王としても喜ばしいよ』


 こうして、次の動きが正式に決定すると水晶から魔力を遮断し、召喚魔獣の配置作業へと取りかかる。


 それと……今回の件の真相へ迫れるよう、もう少し周辺を調査していくとするか。

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