第23話 防衛対策
騎士団を集めての話し合いの結果、緊急の防衛体制をとることになった。
アルテノア王国領内にある町や村は全部で五つ。
いずれも王都からはそれほど距離がなく、人口も少ない。
最初は王都への避難生活も考えたが、高齢者も多く、長距離の移動が困難なケースも見られたため断念。その代わり、俺が各地へと出向いて強力な結界魔法を張るという対策でカバーすると決まった。
王都の結界魔法がリザードマンたちによって打ち破られたのを考慮すると、かなり強力なものをかけていかなければ対処できないだろうな。
現状、この国でそれができるのは俺だけ。
できれば王都の防衛に全力を注ぎたいが……かといって他の町や村をないがしろにしたままというのもいただけない。
――というわけで、俺とルネ、そしてガイドとしてこの日から合流したヴァネッサの三人で各地を巡りつつ、魔法を使うモンスターに関する情報収集へと出かけた。
王都で何か緊急事態が起きた際はすぐに駆けつけられるよう転移魔法陣を設置しておく。
こいつがあれば、どれだけ離れていても転移魔法を使うだけで戻って来られる。
あと、移動には俺が契約している移動用の魔獣を召喚。
アレックスたちはゴブリン討伐の際にルネの召喚獣を見ているが、他の騎士たちは初めて見るのでかなり驚いていた。
ちなみに、俺が呼び出したのは十メートル近い鳥型の魔獣だ。
「かなりハードな移動になるが……」
「任せてください」
「私も全力でついていきます!」
ルネもヴァネッサも意欲十分。
若い子が頼もしいのは嬉しい限りだよ。
こうして、俺たちは王都を発ってアルテノア全域を巡る旅に出たのだった。
◇◇◇
各地の防衛対策は順調に進んでいった。
どの町や村の長も国王の魔紋が刻まれた直筆の書状を渡すとすぐに応対してくれた。
国王への信頼が厚くなければ、ここまでスムーズに運ばないだろう。
エルダインでも同じようにいくかどうか……まあ、小国ならではというべきか。
もちろん、国の規模が小さいから国王を信頼する民が多いって単純な話じゃない。打ち出してきた政策によって恩恵を受けているからこそ、今回のモンスター対策についてもすんなり応じてくれたのだろう。
「ここが最後ですね」
「ああ。――うん?」
予定よりもだいぶ早い時間で訪れた最後の村――クラトス。
そこへ降り立とうとした時、何やら村の様子がおかしいことに気づいた。
「っ!? モンスターだ! 村がモンスターに襲われているぞ!」
少しずつ高度を下げていき、ようやく村に起きている異変に気づいた。
「ルネ!」
「はい!」
「へっ? な、何を?」
「ヴァネッサ、君はあとから合流してくれ。――頼むぞ」
「キーッ!」
使い魔にヴァネッサのことを任せると、俺とルネは飛び降りた。
地上まではまだかなり距離があり、このままでは地面に激突して最悪の場合は――死ぬ。
だが、当然そうならないよう地上が近づくと風魔法を発動させてゆっくりと着地。
それからすぐに駆け出して村へと突入。
「ガアアアアッ!」
視界に飛び込んできたのはゆうに三メートルはあろうかというオークだった。
「リザードマン、ゴブリンときて次はオークか……」
豚面のオークは手にした棍棒を振り回して村人たちを追い回している。ヤツらの進行速度や家屋の損傷具合などを加味すると、襲撃されて間もないようだ。
「教官! 私は片っ端から氷漬けにしていきます!」
「なら俺は雷撃で丸焦げにしていこう」
攻撃手段は決まった。
村人たちへの被害を最小限にとどめるためにも、俺たちは迅速に行動開始。
二手に分かれてオーク討伐を開始する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます