第21話 報告と対策
王都からそれほど離れていない森の中で攻撃魔法を使うゴブリンと遭遇。
一報を耳にした国王は眩暈を起こしてしまうが、すぐに立ち直って今後の対策について考えを述べる。
「魔法を使うモンスター……まさか大国エルダインで長らく騎士や魔法使いを指導してきた君でさえ知らない存在とは」
「正直、私も驚いています」
「うむ。前例のないこの手の輩を相手にするには迅速な対応が求められるな」
「おっしゃる通りです」
アルテノア国王は危機感を募らせていた。
一度だけ――結界魔法を突破してきたリザードマンたちのようなモンスターが今後も現れるかもしれないと警戒していたが、まさかこれほどの短期間のうちに再び王都近くに出現するとは想定外だったのだろう。
問題はこれからの対策だ。
リザードマン、ゴブリンとくれば次もまた似たようなタイプのモンスターが王都近くに現れる可能性がある。
厳戒態勢を敷くのは当然として……懸念材料は戦力数だ。
現有戦力でどこまで戦えるのかまったく見通しが立たない。
作戦参謀的な立場の人物がいれば的確な指示も出せるのだろうが、小国のアルテノアには存在していない。
「グラント殿……君ならどんな作戦を立てる?」
「えっ? 私ですか?」
「おぉ! ぜひとも君の意見をうかがいたい!」
同席していたザネス騎士団長も興奮気味に語る。
作戦、か。
エルダインにいた頃はちゃんとした作戦参謀がいたからなぁ。
……まあ、最近は大きな戦争どころか小競り合いもないから、そういう立場の人間が残っているかどうか怪しいもんだな。騎士団の役割がただの肩書き自慢みたいになってしまっているし。
けど、本来はこういう不測の事態に対応するため、用意しておくもの。
アルテノア国王はその役目に俺を指名したのだ。
とりあえず、俺の率直な考えを述べておこう。
「セオリー通りなら、王都周辺の守りを固めます。破られた結界魔法は強化してあるので、そう簡単に中へと入ってくることはないでしょうが……それでも楽観視はできません」
「前のリザードマンより強いヤツが来るかもしれないと?」
「可能性は十分にあります」
ザネス騎士団長の問いかけにそう答えると、周囲がざわつき始めた。
「わ、我らだけで王都すべてをカバーするのは無理だ」
「周辺には他にも小さな村がある」
「そこまでは手が回らんぞ」
次々に課題を口にする騎士たち。
隣で様子をうかがっていたイリアム姫様も不安げな表情をしている。
もちろん、それは俺も危惧していた。
ただでさえ魔法を使うモンスターという前代未聞の敵を相手にしなければならなくなるというのに、こちらは圧倒的に戦力不足。
ルネやヴァネッサ、それに成長著しい新米騎士三人組など見所はあるが、それでも足りないだろう。
この状況下で第一に考えるべきは――
「グラント殿、私は民を守ることを最優先に考えたい」
「民を守るためであったらこのザネス・マドノー……喜んで命を差し出す所存ですぞ」
国王陛下とザネス騎士団長の言葉に、俺の思考は一瞬止まる。
そんなことを言われたら、こう返すしかない。
「では、私もこの頭脳で最善の策を練りましょう」
何を守るべきか。
これがハッキリすれば作戦も立てやすい。
早速、騎士団のみんなを集めて会議をするとしよう。
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