第19話 鍛錬開始

 正式にアルテノアの魔剣教官となって二日目。

 念のため、俺の結界魔法で王都の守りを強固にしてからみんなにこう提案した。


「よし。今日はちょっと遠征してみようか」


 ケビン、アレックス、ジェイソンの三人に新しくルネを加えた四人で挑むのは王都の外れにある森。

 そこにはモンスターが出現するらしい。前に戦った魔力を操るリザードマンも、もともとはその辺を巣にしていたようだ。


 ちなみにヴァネッサは明日から合流する予定となっている。


「そこでモンスターを相手に実戦訓練といこう」

「モンスター相手の訓練……」


 ルネの声はわずかだが震えている。

 さすがの彼女もモンスターを相手にするとなったら緊張するのか。


「いいですね。できればこの前のリザードマンより戦い甲斐のある相手がいてくれることを願います」

「そ、そうか」


 ……違う。

 あれは緊張で声が震えていたというより、強い相手と戦えることに対して喜びを感じる武者震いから来るものだ。


 一方、若手三騎士の方は本当に緊張しているようだ。


 しかし、彼らの実力は本物だ。

 リザードマンが襲撃してきた時は初めての戦闘という状況に加え、相手は魔力を操るという前例のないモンスター。実力ある者であっても、警戒してそう簡単に手を出せない状況だったろう。


 だから、少しでも慣れておくことが大事だと思った。


 エルダインの養成所でも、ある程度のレベルに達したら外に出て実際にモンスターと戦闘して場慣れさせる。そのために国が管理している専用のダンジョンがあるくらいだ。


 とはいえ、それはあくまでもエルダインの場合。

 アルテノアでそれは不可能。


 なので、モンスターが出現するという森へ来たわけだが……もちろん、安全には配慮して俺と戦闘経験豊富なルネが常に周囲を警戒している。例のリザードマンの件もあるしな。


 もちろん今回の鍛錬についてザネス騎士団長からは許可を得ている。


 さて、どんなモンスターが出てくるのか――と、周囲を確認していたら近くの茂みからガサガサと音を立てて一体のゴブリンが姿を見せた。


「モ、モンスター!?」

「落ち着け、アレックス。君のパワーならば問題なく倒せる」

「は、はい」


 ゴブリンといえばすばしっこく、集団で襲ってくる特徴がある。知能は低く、力も強いわけじゃないのでアレックスたちが本来の実力を発揮できれば難なく倒せるはずだ。


 ――そう思っていたのだが、ここで想定外の事態が。


「む? 魔力?」


 まさか……こいつも魔法を使うのか!?

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