第17話 若手騎士たちの実力
若手騎士たちの実力が果たしてどれほどのものなのか。
最初に腕試しをしたケビンはこちらの想定以上の実力を示してくれた。
周りから見たらあっさりと弾き飛ばされたように映るのだろうが……スピード、パワーともに大国エルダインの養成所に集まった若手たちと大差ない。それどころか、むしろ上回っているようにも感じる。
あとは残りふたりだが……まずはあちらの大柄な少年からいこうか。
「次はアレックス、君だ」
「は、はい!」
緊張のためか声が上ずっているアレックス。
他のふたりに比べて身長が頭ひとつ分くらい飛び抜けており、全体的にもがっしりとしている。
「いい体つきだな。幼い頃から鍛えていたのかい?」
「ち、父が王都近くの村で林業をやっていまして、騎士団に入るまではずっと手伝っていました」
「なるほど。自然と基礎体力の鍛錬を重ねていたというわけか」
伐採したり、樹木を運んだり、創造できるだけでもかなり足腰を鍛えられることができる。
その成果は彼の戦いぶりにもしっかり反映されていた。
先ほどのケビンに比べると筋肉量が多いためか少し動きが鈍いものの、一撃の破壊力は数段上だ。林業で鍛えた強靭な足腰はこちらの攻撃を受けてもビクともしない。地に根を張る大木を相手にしているようだ。
最後の三人目は小柄なジェイソン。
彼もまた幼い頃から猟師をしている父と頻繁に山へと入っていたことで基礎体力は平均以上あった。おまけに素早く動き回る野生動物たちを相手にしてきたからか、動体視力が優れており、俺の攻撃を先読みしてかわすこともできた。
入団間もない新人三人と聞かされていたが……全員がかなりの伸び代を秘めている逸材揃いで驚かされた。
というか、入団してすぐの段階でこれほどの実力がある者ってエルダインでもそうそうお目にかかれないぞ。
「グラント教官、あの三人ですが……めちゃくちゃ強くないですか?」
「ああ……実に素晴らしい。鍛え甲斐があるよ」
どうやらルネも三人の実力を認めたようだな。
あの子が他人に対してそういう評価をするのは珍しいが、嘘をついたりするタイプではないので素直に関心しているのだろう。
「どうだろうか、グラント。彼らの力は」
鍛錬終了後にやってきたのはザネス騎士団長だった。
彼もまた俺と三人のやりとりを最後まで見届けており、評価が気になっているようだな。
俺は嘘偽りなく、戦った感想をザネス騎士団長へと語った。
つまりベタ褒めしたのである。
「そ、そんなに凄かったのか?」
「お世辞でも忖度でもなく、彼ら三人の現段階における実力は大国エルダインの若者に引けを取りません。それどころか、基礎体力という面であれば三人の方が上でしょう」
そう告げると、周りから歓声があがった。
先輩騎士たちは三人のもとへ駆け寄ると「よくやったな」とか「うちの騎士団の未来は明るいな」とか、盛大に称えていた。
……いい光景だな。
変に先輩風を吹かさず、いいことがあれば年下の後輩騎士が相手でも全力で祝福する。
戦いを二の次にして出世争いに明け暮れるエルダインの騎士団に比べたらずっと健全だな。
まあ、あっちの騎士団にもまともな者たちはいる。
特に次期騎士団長の呼び声が高いバルガスは歯がゆい思いをしているだろうな。
ただ、彼は俺が教えていた頃から非常に正義感が強いヤツだった。
きっと、腐敗する騎士団も彼が団長となれば改革してくれるはず。
そうなれば、一度コンタクトを取ってみてもいいかもしれないな。
その後、ザネス騎士団のおごりで俺とルネの歓迎会を開いてくれることになった。
また、俺が推薦をしておいたヴァネッサについては本人の希望が取れ次第、入団に向けた手続きを開始するという。
宿屋の娘として家を継ぐという気持ちもあるだろうが、彼女の持つポテンシャルは今日戦ったあの三人を凌駕するし、何より度胸がいい。
ぜひとも騎士団に加わってもらいたいものだ。
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