第16話 新たな試み

 アルテノア国王からの依頼を受け、今日から騎士団の若者たちに指導することになったのだが……正直、うまくいくかどうかちょっと不安だ。


 本日は初日ということもあってルネとともに騎士たちへ挨拶しに向かう。


 所属している者は約五十人。

 かなり少ないが、国の規模からするとこれくらいになるか。

 全員がアルテノアの出身らしく、騎士団内で親戚関係というのも少なくないという。


 知り合いが多くてやりやすい職場環境と言えるが、それゆえになぁなぁになってしまう部分もありそうだな。まあ、ピリピリと張りつめた空気でいるのがよいとは言わないが、ある程度の引き締めは必要だろう。


 そんな騎士団の若手育成教官として招かれたわけだが……彼らからすれば、俺はこの地にゆかりのないただの旅人。

 そんなヤツの指導なんて受けられるかって反発があってもおかしくはない。


 ――と、危惧をしていたのだが、どうやらそれは杞憂に終わったようだ。


 全員の前で自己紹介を終えると、早速若手の実力を知るため公開形式での鍛錬へ移行したのだが、その場にいたすべての騎士が残ったのだ。


 関心の高さをうかがわせるな。

 どうやら、リザードマン襲撃事件で俺やルネの実力を目の当たりにしているという点も大きいようだ。


 ちなみに最初に対象となったのは今年入団した三人。


 年齢はいずれも十六歳。

 剣術では特に師と仰ぐ人物はいないようで、ほとんど我流だという。さすがに騎士団へ入ってからはそれぞれの所属する部隊で指導を受けているようだが、感覚派が多いようでいまひとつ技術が身についていないらしい。


「では、最初に君たちがどれほどの腕前を持っているのか把握するために、軽く打ち合っていこうと思う。――ケビン。まずは君からだ」

「は、はい!」


 指名された金髪の少年ケビンは緊張した面持ちで前に出た。


 騎士団の先輩たちが見守る中、彼は深呼吸を挟み、鍛錬用の木製剣を握る手に力を込めて挑んでくる。


「はあっ!」


 気合の入った掛け声とともに繰り出される一撃。

 俺はそれを正面から弾き飛ばした。


「「「「「おおっ!」」」」」

 

 周囲から驚きの声が響いてくる。

 いとも簡単に反撃したと思っているようだが、想定していたよりもずっと素晴らしい攻撃だった。


 リザードマン襲撃の際は怯えてまともに剣も触れなかったようだが……どうも単純に実戦不足なだけのようだ。


 裏を返せばそれだけ鍛え甲斐があるというもの。

 ……さて、他のふたりはどうかな?

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