第14話 就任

 人生とは本当に何があるのか分からない。

 大国エルダインの魔剣養成所を用なしと追い出されてからそれほど経たないうちに、別の国で同じ仕事を依頼されるとは。


 ただ、どちらかというと俺にはこっちの――アルテノア王国のゆったりまったりした雰囲気の方が肌に合っている気がするんだよな。


 とりあえず、この日は城の中に部屋を用意してもらえることになり、俺とルネはそこで一夜を過ごすことになった。


「私は先生と同じ部屋でも構わなかったのですが」

「いや、さすがにそれはダメだろ……」

「むぅ……昔は一緒に寝ていたじゃないですか」

「いつの話をしているんだ」


 学園を出て遠慮がなくなったのか、こちらへ来てからのルネは素を出しっ放しの状態になっていた。


 まあ、学園にいた頃は俺が釘を刺していたというのもあるが、今では周りに彼女を数字で評価する存在がいなくなったからというのが原因か。


 騒ぐルネをなだめつつ、俺は明日からの行動について彼女と話をした。


 この国にはエルダインのように騎士や魔法使いの育成に関するノウハウがなく、指導方針などは当然確立されていない。


 まあ、最近のエルダインも似たようなものだったけどな。

 大国同士の不戦条約によって戦争がなくなり、今では騎士団や魔法兵団は貴族たちの肩書き要素でしかなくなっている。


「最初は騎士の育成から始めるべきか」

「先生の本職は魔法使いですよね? そちらはよろしいのですか?」

「そいつをするには魔力属性の鑑定が必要になってくる。残念ながら、俺にそのスキルはないんだ」

「あぁ……そういうの入団式の前にやりましたね」


 魔法使いの育成も急務だが、こちらは俺以外にも必要な人材がいる。

 これについてはもう少し時間がかかりそうだ。


 あと、ザネス騎士団長からは直々に「若い騎士たちを鍛えてもらいたい」という依頼を受けている。


 本来ならば自分たちが面倒を見なくちゃいけないのだが、彼の剣は我流とのことで教えるのは難しいという。この辺もしっかり理論などが確立されていればスムーズに教えられるのだろうが。


「本当に戦いとは無縁の国だったようだな……」


 改めてこの国の平和ぶりを思い知らされた。


 ――しかし、これからはそうも言っていられない。

 何せ魔力を駆使するモンスターが現れたのだ。

 

 対抗できる魔法使いの育成より先に、まずは彼らを徹底的に鍛え直さないとな。


「ルネ、君にも明日からいろいろと手伝ってもらうぞ」

「任せてください!」


 元気よく返事をするルネの頼もしさに思わず笑みがこぼれる。

 さて、明日から忙しくなるぞ。





※今日は18時にもう1話投稿予定!

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