第9話 まさかの再会
「ル、ルネ!? どうしてここに!? というか、なぜ俺の居場所が!?」
「方々捜し回ってようやく見つけだしたのです!」
「それは大変だったな――って、違う! 学園はどうしたんだ!?」
「お叱りは後で。それよりも今はリザードマンへの対処を優先した方がよろしいかと」
「そ、そうだな」
いろいろと聞きたいことはあるが、今の段階ではルネの言い分が正しい。
それに……少々不謹慎だが、この状況下でルネが加わってくれるのは純粋に頼もしかった。
彼女の魔法使いとしての実力は学園にいた頃からよく知っている。
そもそも、入学前から高い資質を見せており、先代学園長やハリソン教官に推薦したのも俺だしな。
「リザードマン程度なら瞬殺できますね」
「油断するな、ルネ。ヤツらは本職の魔法使いほどではないが魔力を操れる。何をしてくるか
未知数だ」
「了解です。――む?」
言った矢先に一体のリザードマンが建物の屋上からこちらを目がけて落下してきた。
すぐさま回避行動へと移るが、敵は地面に着地したと同時にルネの方へと襲いかかっていった。
恐らく、男である俺よりも倒しやすいと判断したようだが――それは判断ミスだな。
「たかがトカゲの分際でこの私を襲うつもりですか?」
迫りくるリザードマンに対し、ルネは魔力を開放。
それは一瞬のうちに強烈な冷気となって敵の全身を覆いつくし、氷像を作りあげた。
「得意の氷魔法か……相変わらず凄い威力だ」
学園時代からあらゆる属性の魔法を高水準で操れるルネであったが、中でも氷魔法は特に評価が高く、本人も得意魔法だと豪語するだけあって実に素晴らしい。
「はあぁ……」
感心していたのは俺だけでなく、宿屋の娘であるヴァネッサも同じだった。口が半開き状態となっていたが、ハッと我に返るとルネへと近づいていき彼女の手を取る。
「こんなに近くであんなに派手な魔法を見たのは初めてだよ」
「そ、そうですか?」
いきなり褒められて照れと困惑が入り混じったような表情となったルネ。
そういえばちょっと人見知りの部分もあるんだよなぁ、ルネって。
仲良くなれば普通に接することができるんだけど、慣れるまでに少し時間がかかるタイプの子だったのを思い出したよ。
まあ、最近は少しマシになってきたが、今回はあまりにもいきなりすぎてちょっと引いているのかもな。
あの反応を見るのは久しぶりだが……今はそれほどのんびりしてはいられない。
「ふたりとも、楽しい会話は一旦置いてリザードマン討伐に向かうぞ」
「「はい!」」
早くも息がピッタリと合ったふたり。
これは……早くもコンビネーションが楽しみになってきたぞ。
――って、いかんいかん。
俺も今は討伐に集中しなければ。
その後、俺たちは町の中を縦横無尽に駆け巡りながら暴れるリザードマンたちを一体ずつ退治していった。
途中からアルテノアの騎士団も戦線に加わったのだが、案の定というか、あまり戦力とはならなかった。
まあ、戦闘慣れしていないというのは姫様の護衛を見て分かってはいたのだが、ルネやヴァネッサにフォローを入れられるようだとさすがに頼りないにもほどがある。
この辺は根本的にいろいろと変えていかなくちゃいけないんだろうけど……ともかく、負傷者ひとり出さずにすべてのリザードマンを倒すことができてよかった。
「あなた、なかなかやりますね」
「そっちこそ」
ひと仕事を終えて固い握手を交わすふたり。
もはや歴戦の勇士と呼べる貫禄がそこにあった。
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