第4話 襲われていたのは……
「私の名前はイリアム・ローゼンメルド。このアルテノア王国を統治するローゼンメルド家の者です」
「アルテノア王国……?」
馬車から出てきた女性――いや、年齢的にはルネとそう変わらないから少女と言った方が正しいのかもしれない。
ともかく、若くて可愛らしい少女は自らを王家の関係者だと名乗った。
しかし……アルテノア王国なんて聞いたことないな。
「アルテノア王国という名に聞き覚えはありませんか?」
「えっ!?」
「みなさん大体同じ反応をされますので」
ビックリした。
心が読めるのかと一瞬めちゃくちゃ焦ったよ。
だが、そういう話題を振ってくるということは、あちらも自分たちの国の知名度がそれほど高くないという実感はあるんだな。
「不勉強で申し訳ありません。こちらの地理にはまだ不慣れでして……」
「あら、どちらからいらしたのです?」
「エルダインです」
「まあ、そんな大国から」
これにはイリアム様だけでなく周りの兵士たちも驚いていた。
まあ、ここからかなり距離はあるし、大国というのも間違いではないが……そこまで大きな反応を示すほどか?
「あなたは旅の者ですか?」
「えぇ」
「ならこの先にある王都で宿屋をお探しになる、と?」
「そのつもりで――王都?」
あれ?
確かさっきの行商は村って言っていたような?
「王都と言っても大国エルダインと比べたら田舎町レベルでしょうが、温かいベッドと食事を提供してくれる宿くらいならありますよ?」
「な、ならひと安心です」
その返しもどうかと思うが、うまい返答が思い浮かばずにそう答えてしまう。
結局、俺はイリアム様の馬車に乗せてもらって王都へ移動。
途中で姫様に前職のことを話すと、非常に興味深く話を聞き入っていた。
しばらくして目的地に到着したのだが……そこは彼女の言うように、王都と呼ぶにはあまりにも牧歌的な空気が漂いすぎている田舎町であった。
ただ、周囲にはこの町に以外何もなく、行商人や冒険者などが旅の途中に立ち寄る町としたら最適な規模と言えた。
全体的にのんびりとした雰囲気だし、なんか安心するんだよな。
「ここは結界魔法で守られているため、モンスターの襲撃もありません。安心して夜をお過ごしください」
「ありがとうございます」
「それと、もしよろしければ明日にでもお城へ寄ってください」
「お城?」
「あそこです」
イリアム様が指さす先。
王都から少し離れた小高い丘の上には確かにお城があった。
エルダイン城と比較したらだいぶ小さいが、王都がこの規模だと城もあれくらいのサイズにはなるよな。
それから俺はイリアム様の案内で村――じゃなくて王都の宿屋へ。
助けてくれたお礼ということもあり、なんと宿泊代は無料にしてくれるという。
さすがにそれでは悪いと丁重にお断りをしようとしたが、店主が「姫様を助けてくださったんならタダでいいですよ」と申し出てくれた。
ていうか、イリアム様でこの国のお姫様だったのか。
なんというか、こう……親しみやすいというか、庶民と距離の近い姫様だな。
「それではおやすみなさい」
「はい」
城へと戻る姫様を見送るが、見えなくなるまでの間、彼女はいろんな人に話しかけられていて、そのひとつひとつにしっかりと対応していく。
「今まで見たことがないタイプの姫様だなぁ」
そう呟く俺の顔は自然と笑っていた。
あとで宿屋の店主にその話をすると、「あの方と話した人はみんなそうなっちゃいますよ」と大笑い。
接する相手を笑顔にしてしまう姫様、か。
なんだか興味が湧いてきたよ。
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