3
翌日。私は普通通り自転車で登校して、普通通り授業を受けた。ちなみに、数学の宿題はきちんと終わらせた。――正直、死ぬかと思ったけど。
そんな中で、お昼休みの話のネタといえば――やっぱり「幽霊屋敷」の話だった。
「杏奈ちゃん、例の屋敷に行ったの?」
とある生徒が、瀬川杏奈に話しかける。
当然だけど、彼女はその生徒の質問に答えていく。
「もちろん。――まあ、結局あの子は見つからなかったんだけど」
「あの子? あの……最近行方不明になっている2年A組の神崎友美恵っていう子のこと?」
「そうよ。――どうやら、彼女って『降霊術』っていう儀式をやっていて、その過程で行方不明になったって話よ?」
「降霊術……。怖いわね……」
*
「杏奈ちゃん、少し良いかな?」
その子との話が終わったところで、私は瀬川杏奈に話しかけた。
「良いわよ? 言ってみなさいよ」
「実はね……私のお父さんが、こんなことを言っていたのよ」
私は、お父さんが言っていたことを瀬川杏奈に説明した。
*
「――なるほど。あの幽霊屋敷って、昔から有名だったのね」
「どうやら、そうみたい。まあ、どこまで本当でどこから嘘なのかは分からないんだけど」
私が瀬川杏奈に話していると、ある生徒が話しかけてきた。
「おっ、2人でオカルト話か。オレも付き合うぜ?」
「あら、慶ちゃんが付き合うなんて珍しいわね」
「そうか? ――オレ、こういうモノ好きだけど」
そう言って、慶ちゃん――
菅原慶次というのは、絵に描いたようなヤンキーである。そのクセ性格は良くて、憎めない。曰く「タイマンを張ろうにもこんな田舎町じゃタイマンを張る相手もいない」とのことであり、特に他校の生徒とトラブルを起こすという気配は感じられない。
彼は話す。
「なるほどなぁ……。確かに、それは大問題だな。オレが『白い服の幽霊』を見たらグーパンで沈めてやるぜ?」
私は、彼の提案を冷静にあしらった。
「それはやりすぎだと思う」
「そうっすか……」
瀬川杏奈が、茶番に対して咳払いをしながら話す。
「――コホン。『菅原慶次』という戦力を入れた以上、今すぐにでも幽霊屋敷に向かいたいけど、今日は部活がある日よね」
「確かに。私は文芸部だし、杏奈ちゃんは女子バレーボール部だし、慶次くんはサッカー部だったよね」
「そうだな。――互いにバラバラだから、どこかで『会う日』を作らなければな」
菅原慶次の提案に乗ったのは――瀬川杏奈だった。
「うーん、『土曜日』はどうかしら? 一応、私も含めて3人共土曜日の部活はないはずだし」
「オレはないぜ?」
「私もないわよ」
2人の意見を合わせたのか、瀬川杏奈は話す。
「それじゃ、土曜日の午後1時に――デパートのフードコートに集合で」
「それなら、お昼ご飯を食べてから幽霊屋敷に迎えるわね」
「そうは言うけど、昼間に幽霊屋敷って――意味あるのか?」
「慶ちゃん、幽霊屋敷っていうのは――敢えて、昼に行くモノなのよ」
「お、おう……」
菅原慶次は、納得しているんだかしていないんだかよく分からない顔をしている。なんというか、滑稽だ。
一応、私は瀬川杏奈の提案に乗ったし、菅原慶次も「ああ見えて心の中では納得している」という判断となった。
そうなると、あとは――行方不明になっている神崎友美恵のことだが、彼女はどこに消えてしまったんだ?
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