第27話 Side太陽⇒Side瑠奈
次の日、当初の予定通りこの宿舎の管理を翔太と綾香にやってもらうことになって、料理長は綾香ということに決まったので朝から4人で食材の買い出しに向かった。
「うわぁすごい!市場なのかな?活気があるね!」
「ホントだね!野菜もいろんなのがあるよ」
瑠奈と綾香は市場の活気に目を輝かせているね。あれ?翔太どうしたの?そんなに気張らなくてもカイトさんの町なら安全だよ?
「……太陽。売り子してる中学生くらいの子達がやたら強そうなんだけどどうなってるのこの町」
「それでキョロキョロしてたんだ。この町は一般人が帝国騎士レベルだと思っておいたほうがいいかもね」
ちょっと学校でどんなこと教えてるのか気になってきたね。そのうち余裕ができたら見学させてもらおうかな?
「こりゃまだまだ鍛えないとだめだな」
「そうだね、時間作って4人で魔物狩りにでもいこうか」
「4人って綾香も?料理人だぞ?」
「うん、たぶん大丈夫なんとかなるよ」
綾香だけ置いて行ったらかわいそうだし、翔太も行きづらいでしょ。それにこの世界の人は自然に身体強化使うみたいだから、綾香も教えてあげればできるようになるよ。
「ちょっと瑠奈、嘘でしょ?イノシシ丸ごと買うの?」
「なんかそうしないといけない気がするの」
翔太と話し込んでいたら瑠奈がイノシシを丸ごと買おうとしていた。うん、わかるよ、僕も買わないといけない気がしてきたよ。
「よくわからないけど、解体とかできるの?……あれ?解体?」
「どうしたの綾ちゃん」
「なんか解体できるような気がしてきた」
「え?料理人のスキルかなんか?」
「そうかも…なんか解体って言ったら頭に浮かんできたんだよね」
「綾ちゃんすごいすごい!じゃあ丸ごと買おう!」
ホントに凄いね!どこかで解体教えてもらおうと思ってた所だったんだよね。あとで見せてもらおう。
……………………
「それじゃあやるよ?」
買い出し終わって戻って来て早速綾香に解体を見せてもらうことにした。毛皮が固いから短剣でやることにしたみたい。
「解体!」
綾香が気合を入れてそう唱えると、短剣を持つ腕がシュババババって動いてあっという間に解体されてしまった。
「え、すごい」
「綾ちゃんすごい!」
「なんという短剣捌き…それで戦えば俺より強いんじゃ…」
ホントだね。何してるのかよく見えなかったよ。
「よかった!私でも役に立てることありそう」
「すごい才能だよ!これからは定期的にイノシシ捕まえに行こう!」
そうだね、これだけ早いならその場で処理したほうがいらないものも捨ててこれるしいいかもね。
「まずいまずい、この中で一番弱いの俺じゃん…」
盛り上がってる女性陣を他所に翔太は俯いてぶつぶつ言っていた。
「翔太、ちょっと外で剣を振ってこようか」
「うん、いこう」
この後翔太に魔力の使い方を教えてあげたら身体強化が任意でできるようになって少し自信を取り戻していたよ。
……………………
――Side瑠奈
午後からはカイトさんが奥さんとリンさんを連れてやってきたよ。
「じゃあ結婚する太陽と瑠奈のために自宅兼事務所でいいのかな?」
「はい!それでお願いします!」
「じゃあ瑠奈ちゃんはあっちで私とお話ししようか」
「お願いします!」
リンさんがイスとパラソル付きテーブル出してくれて紅茶まで用意してくれた。なんて手際の良さなの?メイドさんってすごい。
「いちおう遮音の結界張ったからこっちの声は向こうに聞こえないよ」
「ありがとうございます」
「それで、何が聞きたいの?」
「それが、どうやって幼馴染をおとせばいいか聞きたかったんですけど、色々あって婚約できちゃったんです」
「あら、よかったね。じゃあクラスメイトも助け終わった今のタイミングで結婚しちゃおうか」
「え…」
「聞くところによるとあなたたちは今回の救出劇の最大の功労者だし、率先して明るい話題を示すのもいいと思うな」
なるほど。どうやって太陽に襲わせようかと考えていたけど、先に結婚しちゃうのもアリかもしれない…。
「新居も作ってるし今日やっちゃう?」
「やっちゃいますか!」
「リン、何か準備することある?」
「貴族ではないので教会で届け出れば済みますので大丈夫です」
「ウェディングドレスとかすぐ作れる?」
「ウェディングドレスというのがよくわかりませんが、奥様が着ていたような白いドレスを一から作ってもらうなら少々時間がかかりますね。既製品で良いのがあれば、微調整だけで済みますのですぐできます」
「なるほど。あっちもまだかかりそうだしちょっと見に行ってみようか」
「はい、いきましょう」
そう言って気づいたらどこかの倉庫に居た。アリシアさんも転移使えるんだ…。
「ここは…」
「ミース商会の倉庫だよ。ここ出たらすぐお店あるよ」
そうして目的のお店に着いてすぐに私の目は飾ってあるドレスに奪われた。
「これはまさしくウェディングドレスだね」
「ホントですね。私これがいいです」
「アリシア様、こちらお気に召しましたか」
「ええ、これをこの子に合わせてくれないかしら」
「かしこまりました、ではこちらへ」
「あ、その隣に飾ってある男性用のも太陽に似合いそう」
「こちらセットで昨日裁縫師が仕上げたものなんですよ」
「へぇ、瑠奈ちゃん達運がいいね」
「裁縫師が、急に閃いたんだとか言って仕上げたんです」
「あ~そうなんだ」
これはきっと女神様のおかげかな?
「女神様もそうしなさいって言ってるみたいだね」
「女神様ありがとう」
ドレスは手直しの必要も無く私にぴったりだった。この分だと太陽のほうも…。
「じゃあ戻ったらリンはクラスメイト達に教会に集まるように連絡して教会に話し通しておいてね」
「かしこまりました」
「じゃあ一旦戻ろう」
……………………
戻ったらすでに3階建ての建物ができていて、今はウッドデッキを作っているところだった。
「なんかカイが熱弁してるから見に行こう」
「すごい!そこまで計算され尽くしたあの屋根の形なんですね!」
「やっとわかってくれたか太陽くん」
屋根の形?確かになんか変わってるけど…。
「カイと太陽くんが楽しそうで何よりだよ」
「あれ、アリシアいつの間に」
「なんかウッドデッキ作ったと思ったら熱弁してるから気になっちゃって」
「あはは、まぁ中も見てってよ」
見せてもらったけど、テレビで見たような大理石っぽい豪華なアイランドキッチンとか凄かった。エアコンみたいなの見つけた時にはアリシアさんがカイトさんをジト目で見てたけど、帰ったら作らせてもらいますって言ってたのでたぶん初披露なんだよね。
「こんなすごい家で太陽と新婚生活が送れるなんて夢みたい」
「瑠奈ちゃんよかったね」
「うん!カイトさんもアリシアさんもホントにありがとう!」
「僕からも!カイトさんの期待に応えられるように頑張ります!」
「うんうん、裏の部隊も考案中だからしっかり頼むよ」
「え…それはどういう…」
「じゃあ帰ろうかアリシア、リン…あれ?リンは?」
「これからちょっと行く所があります!リンにはそのために動いてもらってるんだ」
「行く所?」
「今から瑠奈ちゃん達の結婚式を行います!」
ついにきた!計画通りに実行に移す!まずはカイトさんに教会に転移してもらって、そしたら太陽を控室に連れていくんだったね。
「アリシアさんと新居もできるし結婚しちゃおうって話になってドレス作りに行ったんだけど、奇跡的に昨日仕上がったっていう私達にピッタリな衣装が飾ってあってね、これは女神様も祝福してくれてるってことだよね?」
「そんな奇跡が…それはそうかもしれないね」
「だから、急でごめんだけど観念してね?」
「……わかったよ。結婚しよう瑠奈」
「太陽…ありがとう」
そして着替えたんだけど、やっぱり太陽のほうもサイズはピッタリだったようですぐに出て来た。
「まるで僕のために作られたようにサイズピッタリだったんだけど」
「私もだよ」
「これは本当に女神様の思し召しなんだね」
「だよね!そうとしか考えられないよね!」
そんなわけで太陽の手を引いて移動した。
「ここから先は太陽がエスコートしてね」
「が、がんばるよ」
と言ってもわからないようなので太陽の少し後ろに立って、左肘を90度に曲げさせてそこに私がそっと手を添えた。太陽は困惑顔してたけど「これでいいよ、行こう」と言って促した。
そうして結婚式自体は、――誓いますかっていうのがあるくらいで婚約の時とそれほど変わらずに、緊張してる間にあっさりと終わっちゃった。太陽はまだどうしていいかわからないって顔してるので、祝福の言葉を投げかけてくれるクラスメイト達に笑顔を返しておいた。
お父さんお母さん、宣言通り太陽と結婚したよ。孫の顔を見せられないのは残念だけど、私達はこっちで元気にやってるから心配しないでね。
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