第25話
あれから1週間とちょっと経った。状況は、1週間前に帝国の宰相が来て僕達への賠償と好きな所に住んでいいということを認めてもらえた。後々、他所の国に行ったとしても帝国からその国に返せとかいちゃもんつけられたら面倒だからね。そういうのは大事な権利だと思う。
賠償金も、生産職の人はそれでお店開けるほどの額らしいからよかったのかな?これからの生活のために準備するにしてもなんとかなりそうでよかった。
そしてこの期間で皆と相談したんだけど、とりあえず皆でカイトさんの所にお世話になることにした。落ち着いてから、異世界を巡ってみたいとかあるようだけど、危険な世界だから自己責任にはなるよとは伝えておいた。魔物もいるし、野盗もいるから旅も安全ではないからね。あとは行く先々の領主が、帝国皇帝のような人がいる可能性もあるよと言ったらブルリと震えていた。この世界じゃ王侯貴族の権力は絶対だからね。
せっかく建ててもらった僕達の宿舎だけど、もう皆いなくなるのでカイトさんに撤去してもらった。そして――
「ここがフレアソード領の街道だ。この街道整備事業をこれから大陸全土に進めていくから関わりたい人は太陽か瑠奈と相談してくれ」
この人数でも苦も無く全員連れて転移できちゃうカイトさんスゴイ。というかこの街道もキレイだね。帝国のとは大違いだ。生産職の人達も興味津々で見ているよ。
「じゃあ宿舎建てる場所相談してくるからこのまま進んで町でも見学しててくれ」
「わかりました」
言うが早いかカイトさんはすぐに転移して消えていった。
「じゃあ皆、ゆっくり歩いて行こうか」
「太陽ちょっと聞いてもいいかな」
歩いて行こうとしたら建築士の彼が聞いてきた。
「この街道とかも現代日本のそれっぽいけど、カイトさんて何者なの?」
「んー、それは僕の口からは言えないよ」
「そうか。そうだよね、でもなんとなくわかった」
「カイトさんは奥さんとのんびり暮らしたいらしいからあまり言いふらさないでね」
「わかったよ」
歩きながらの会話で、近くには瑠奈と翔太と綾香がいたけど、翔太と綾香も頷いていた。
「ところで私達は冒険者ギルドに登録してるからいいけど、皆は身分証どうするの?」
「あ、どうしよう?」
「太陽達冒険者ギルド登録してるのか」
「皆を助ける手立てを探すために身分証と路銀が必要だったからね」
「なるほど」
と話してる間に門番の所まで着いてしまった。
「カイト様のお客人ですね。どうぞお通りください」
すでにカイトさんが話を通しててくれたみたいで素通りできた。
「心配することなかったね」
「ホントだね。さすがカイトさんだね」
「っていうか皆見て!町の人が皆笑顔で楽しそう!」
「帝国の町では見られなかった光景だね」
帝国では皆何かに怯えて暮らしていたね。奴隷落ちを避けるために隙を見せないって感じだった。
「俺も冒険者ギルド登録してみたいな」
「そうだね、せっかくだし皆で冒険者ギルドに登録していこうか」
「やった!行こうぜ!」
カイトさんもゆっくり見学してこいって言ってたし少しくらいいいよね。
「テンプレ展開きたらどうしよう」
「ちょっと!あまり騒ぎ起こさないでよ?」
「ああいうのは向こうからくるもんだし…」
「いやいや、ダメだからね!カイトさんに迷惑かけないでね」
「うっ、そうだった」
「太陽、あそこにギルドあるよ」
不安しかないけど、瑠奈がギルド見つけてしまった。
「まずは僕と瑠奈が行って話をつけてくるから皆はここで待ってて」
そう言って瑠奈とギルドに入ると一斉に視線を集めたけど、特に何事もなく受付までこれた。
「冒険者ギルドへようこそ。本日はどのようなご用件でしょうか」
「僕の仲間30人ちょっといるんだけど、登録をお願いできますか?」
と僕達の帝国で修行と路銀集めで銀級になった冒険者証を見せながら聞いてみた。
「かしこまりました。ちょっと人数多いので別室を用意しますね。2階の階段上がってすぐの部屋にお集りください」
「わかりました。呼んできます」
そうして皆でゾロゾロと2階へ向かったけど、何事もなく指示された部屋に入ることができた。
「ちょっと太陽!冒険者って皆あんなに強そうなの?」
「え?そうだった?」
「年下っぽいのに帝国の騎士なんかよりよっぽど強そうだったけど…」
「あ…、カイトさんの歳より下は学校で戦闘教育も受けてるからもしかしたらそのせいかも」
皆大人しいと思ったら、強者のオーラにやられてたみたい。大丈夫だよ、やばそうな人が居たら瑠奈が真っ先に何か反応するはずだから。
「邪魔するぞ」
受付嬢さん2人とスキンヘッドの強面さんと、あれ?あの人は…。
「俺はここの支部長をやってる。よく来たな召喚勇者達」
「なんで知ってるんですか?」
「カイト様から通達があったからな」
「ここまで手をまわしてあるなんて…」
「そうだな。俺も本当に来ると思ってなかったから驚いたが、この町なら冒険者してれば薬草採取でも食うに困らないから安心しろ。あとは何かわからないことがあったらこいつに相談しろ」
「フレアソード家の騎士を引退してギルド職員になりました。太陽と瑠奈は30騎で2万の大軍に突撃した時以来だね」
やっぱりあの時の騎士さんか。
「その節はお世話になりました」
「ちょっと太陽?瑠奈ちを何でそんな無双ゲーの世界に連れていってるのよ!」
「いや、あの時はもしクラスメイトがいたら教えてくれってカイトさんに言われてたから…」
「そうだよ!カイトさんに薙ぎ払われないように皆がいないか確認するの大変だったんだから」
「それを言われると…。そういえば攫いに来た時もカイトさんの後ろに居たのそうだったんだよね」
とりあえず女子達も納得してくれて無事にギルド登録も終わった。最初は鉄級からなので僕達みたいな銀級になりたいと戦闘職の人達は闘志を燃やしていた。
ところで支部長って皆ハゲの強面なんだろうか…。
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