第23話

 二人の話が終わるのを待っていた男が一人いた。


「ずっと前から貴方のことが好きでした」

「こんな汚れた私なんかでいいの?」

「僕もつよしと同じです。何があっても支える覚悟で来ました!」

「……本当は私もずっと前から貴方のことが気になってました」

「僕のこれからを貴女に捧げます。貴女を僕にください」

「……二人分だから重いよ?」

「重戦士の職を授かったから大丈夫です」

「もう…バカ」


 またカップル成立だ、よかったね。


「ちょっとぉー!アタシにも誰かいないのー?そりゃ二人が美人なのはわかるし、アタシはがさつな戦闘職だけどさぁ」

「いや、お前はいるだろ」

「アタシにもいるの?だれだれ?」

「お前……あれだけ毎日一緒に帰って…」

「あーあいつのこと?あいつはだって、一緒に居ると落ち着くというか、一緒に居ないと落ち着かないというか」

「はいはい、拠点でお前のこと待ってるからな?絶対に助けてきてって頼まれたんだぞ?鍛冶師の技能はだいたい盗んだから、鍛冶工房開いてあいつを養ってやるんだって言ってたんだぞ?」

「そっか…アタシもそこいこーっと」

「決まったな。じゃあ3人とも俺の領地に来い。ボロボロの帝国で子育てするよりいいだろう」

「え、このイケメンにアタシも妾にされちゃうの?」

「されません!」


 カイトさんは一途なのにどうしていつもこういう話しになるんだろう?イケメン過ぎるからかな?


 とりあえずこれで奴隷にされてたクラスメイトを全員救出できた。この後はこの世界で生きていけるようにサポートしないとだね。その為にもカイトさんの元で力を付けようかな。


……………………


「太陽に瑠奈、城に居た女子達解放しようと思うんだがどうだ?」

「どうだというと?」

「最悪、自殺を考えるような子がいたら記憶を消してやろうと思ってた」

「記憶を…消す…」

「たぶんできるって感じるだけだが」

「いや、カイトさんがそういうならできるんでしょう」

「女子達は私がしっかり見張ってるよ」

「じゃあ何かあったらすぐに教えてくれ」


 そうしてカイトさんは残り全員の首輪を外してくれた。女子達は、あんなやつに体を許してしまって彼氏に申し訳ないと泣きながら謝っていたけど、誰かが奴隷のうちにされてたことはノーカンってことにしようと言い出して、更には戦闘職女子達に「凄い石鹸があるから任せて」と大浴場に連れ込まれていた。あの石鹸ホントに無かったことになったりするの?


 その後景気づけに瑠奈特製カレーライスが振舞われて皆大盛り上がりだったが、花蓮だけは出たお腹をひっこめるために少量で泣く泣く我慢していた。今日くらいいっかと食べない辺りはさすがである。


……………………


「これで、奴隷にならなかった者を除いて全員揃ったということでいいな」

「はい、全部カイトさんのおかげです。ありがとうございます」

「いいんだ、気にするな。俺も酷い目にあってるやつがいるなら放っておけないしな」

「それで、カイトさんはまだここにいるんですか?」

「まだ数日は居ることになると思う」

「わかりました、それまでに皆の意見をまとめておきます」

「ゆっくり考えたらいいさ、一応ここなら生活するのに困らないだろ」

「大浴場付の宿屋ができるくらいですね」

「風呂はどうだろうな」

「なんかあるんですか?」

「日本人なら風呂はこうやって入るもんだってのがあるけど、この世界の人だと湯船のお湯すぐ汚すだろ」

「確かにそうですね。大浴場だと交換もままならない…」

「そういうことだ。俺が領内に公衆浴場作らないのもそれだな。家族風呂みたいなのも考えたけど、今度は管理するのに手間がかかり過ぎて高額になってしまう」

「なるほど。まずはお風呂の入り方から教育しないとだめなのか…」

「その点我が領内では学校を作ってそこら辺も教育済みだから徐々によくなっていくだろう」

「学校も作ったんだ…やっぱりカイトさんの所が子育てには最高ですね」

「ところで、太陽と瑠奈に会社を任せようと思ってるんだけど、どうだ?」


 フレアソード家直営会社としてカイト工業を立ち上げようと思っているらしい。街道整備事業を扱って、これから依頼が殺到することが予想されるので工程管理や人員の管理、依頼の受注や資材の確保などをこなして欲しいとのことだ。カイトさんが必要としてくれるなら、恩返しのためにいくらでも働かせてもらいますよ。


「そのうち大陸全土に拡がると思うから、太陽もそのうち転移使えるようになるだろ?あと空間魔術師のあの子も欲しい」

「わかりました。瑠奈を説得してみます」

「太陽と瑠奈の場合、転移使えなかったとしても合体技で高速で飛べるしな」

「あれは…瑠奈の言う通りにやったんだけど、凄かった」

「神竜様並みの速度出てたからな、誇っていいと思う」


 その後も、今いる人員をリーダーにして学校卒業生からどんどんスカウトして複数のチームを作るだとか、人が増えたら宿舎を建てて管理人に翔太と料理人の綾香を雇ったらどうだとか色々話し合った。


 カイトさんみたいな優しい人が領主の町で皆と住めたらいいな。

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