第22話

 皆に励まされて一段落付いたところでこれからどうするかという話しになった。


「さて、一人は推定彼氏クンがやっちゃったのでいいとして、あとの6人の復讐対象がわからないわけだけど」

「それなら私わかります!皇帝の側近どもです」


 カイトさんの問に妊娠してるフリをしてたあの子が答えた。


「なるほど。皇帝と思われる者の所に結構な数集まってるしそこにいるかもしれないね。よし行ってみるか」

「行きましょう!」


……………………


「ここだな。先ずは俺が入る、その後にうちの騎士3人、そして太陽瑠奈翔太だ。他は制圧するまで扉前で待機」

「はい」

「行くぞ!」


 気配探ったら結構な数いるみたいだね。後ろの人達にいかないように僕達も頑張らないと!と気合を入れていたらカイトさんはドアをバーンと開けてズンズンと進んで行った。え?そんな無防備に…。


「カイト様そんな無防備にズンズン進んだら…」


 ほら、騎士さんに言われてるよ?


「よい、跪け!」

「……本当に奴ら跪いてるんだけど…」


 ホントだね…どうなってるの?……いや、魔力がカイトさんに集められてる?


「さすがカイト様ね!私が背中を守りたいって思った唯一の主人様」

「お前ら呆けてないで止めを刺しておけ、こちらには非戦闘員もいるからな」

「「「承知!」」」


 騎士さん達が跪いてる帝国の騎士かな?その人たちに止めを刺していく。


「ねえ太陽、カイトさんって神様かなんかなの?」

「なんでもありの人だと思ってたけどちょっと僕にもわからない」

「カイトさんのことは深く考えたら負けだよ!」


 直感で動く瑠奈がそう言うくらいだからそうしたほうがいいんだろうね。


「奥で跪いてるのが皇帝の側近の4人です!」

「てめえらか!」

「よくも俺の彼女(予定)を!」

「覚悟しろ!」

「こ――あへ」


 側近と聞いて帝城で奴隷にされていた女子達の彼氏達が勢いよく駆け出して各々胸倉を掴んだのだが、一言発したら跪いた。カイトさんがまだ何かしているようだ。


「ごめん、解除したから続けて?」


 とカイトさんは言うけどお互いに跪いて睨み合ってるだけだね。


「どうしようか…」

「カイト様…」

「魔力返せるだろうか…」


 ん?カイトさんから4人に向かって魔力が流れてる気がする?


「うがぁ!死ね!」


 復活した!4人とも武器は手に取らないでずっと殴り続けている…。その4人を女子達はじっと見つめていた。


「あとは皇帝が綾香の…」

「あいつか!」


 聞いた瞬間翔太が飛び出して皇帝をぶん殴った。玉座から引き摺り下ろしてもさっきのカイトさんが何かした影響なのか身動きできないまま翔太に殴られている。その時皇帝の手に蒼炎が宿って手首ごと燃えてなくなった。


 翔太はビクっとしてカイトさんを見たが何やら頷いてまた続けた。4人のほうもケリがついたようで全員が皇帝の周りに集まった。


「こいつのせいで俺達はこんなことになった」

「最後は皆んなで一斉に串刺しにしよう」

「ま、待ってくれ、悪かった」

「修道院に送られたのは何人だ?」

「3人だ」

「場所はどこよ!」

「帝都の東の城壁近くにある修道院だ」

「よし、聞きたいことは聞けたな」

「なんでもくれてやるから助けてくれ」

「ダメだ」


 勇者召喚などと言って異世界人を召喚した皇帝は、その所業により異世界人達に処刑された。


「よし、お前達は修道院へ向かえ!救出は容体次第だな」

「よし、皆んな行こう!」


 僕達は追放されて出口がわからないから翔太に付いていく。瑠奈は救出してからずっと綾香の傍に付いている。綾香の視線はずっと翔太に向けたままだ。何か言いたそうなのはわかるけど、首輪外すまでもうちょっと我慢してね。


……………………


「東の城壁近くの修道院といったらここかな?」

「じゃあまずは僕と翔太で行って話を聞いてこよう」

「わかった」


 確かに3人いるようだけど、呼び出してもらおうとしたら拒否された。なので離れた所で様子を伺っている仲間達を見ながら、僕らは仲間を救うために皇帝を殺してきたと伝えたら大急ぎで呼びに行ってくれた。まだ首輪付いてる女子もいるから本当だと思ってくれたのかな?


「あの、今のお話しは本当ですか?」


 ちょっと年配のシスターが出てきて聞いてきた。


「本当ですよ。皇帝の側近も全員殺しました」

「では、ローブの男は?」

「……そういえばいなかったですね」

「それなら私達が始末してきたわよ」

「花蓮…」

「ではもう隷属の首輪は作られないのですね…よかった」


 そう言って年配のシスターは涙を流した。帝国の奴隷に対する扱いに思う所があったのかもしれない。


「様子はどうだ?」

「4ヶ月から5ヶ月くらいだろうということでした」

「そうか、とりあえず首輪外さないと話もできないな」


 ちょうど修道服を着た3人の女子が出てきて、そしてカイトさんが首輪を外したのだけど…。


「私達はずっとここで暮らすことにするわ、ごめんね」

「お、おい……子供なら一緒に育てても――」


 3人の中にも1人だけ恋人がいたね。


「ダメなの!辛い生活に耐えきれなくて……逃げちゃったの。だからきっとバチが当たったのよ」


 まぁ責められないよね、普通はそうだもんね。1年も耐え続けた子達が強靭なだけだと思う。


「俺も同じだよ、頑張れば奴隷から解放して貰えるって聞いて、解放されてお前を迎えに行くって思ってたけど、だんだん怖くなって怪我しないように死なないように頑張らなくなった。迎えに行くのが遅くなってごめん」

「そんなこと…」

「でも、ここにくる前に何があってもお前を支えるって決めてきたんだ!」

「じゃあずっと私を捕まえていて」

「もちろんだ」

「この子に愛着が沸いちゃっても許してね」

「ああ、赤子に罪はないんだ、一緒に愛情込めて育てよう!」

つよしー!」


 彼の名前を聞いてカイトさんが変な顔をしたら、花蓮にじと目で見られながら「花蓮だからね」と言われていた。カイトさん何してるの?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る