第20話

 女子達も混じっちゃったけど昨日カイトさんは明日出立だと言ってたので翔太も起こして準備しよう。その時ちょっと聞いてみたんだけど、翔太は目を逸らしながら「なにも、なかった…」と言っていた。なんか怪しいけど怖いから何もなかったということにしよう。


「リーダー遅かったな。ん?寝不足か?」

「ちょっと太陽が…」


 ちょっと!やっぱりなんかあったんじゃないの?瑠奈は何か知ってる?


「ん?何かあったの?酔っぱらった太陽、翔太に連れていかれてたよ」

「そうなんだ、ごめんね」

「大丈夫だよ。でも太陽はお酒弱いみたいだから気を付けようね」

「わかった」


 僕はお酒弱いのか…。気を付けよう。


「まぁ大丈夫か。とりあえず今日は女子の希望で軍の駐屯地に乗り込んで奴らを粛正してくるぞ!」


 カイトさんは自然に僕らの復讐に付き合ってくれるみたいだけど、いいのかな…。


「どうしてそこまでしてくれるのって顔してるな。まぁ、お前達の境遇を聞いて、いい機会だから帝国には隷属の首輪を廃止させる。あんなものはあっていいものではない」


 隷属の首輪と聞いて皆苦々しい顔つきになったね。


「そういうわけだから、お前達は気にしなくていいぞ。じゃあ広場みたいなところに転移して俺が最初に魔法撃ち込んでやるから行くか」


 なるほど。僕達が気にしなくていいようにそんなこと言ってくれたんだね。カイトさんは優しいね。


「じゃあ転移しますよ!女子達が指示した奴らをボコボコにしてやってね!」

「任せろ!皆殺しにしてやる!」


 翔太ヤル気満々だね。僕も気合入れないと!


……………………


「ここが駐屯地か…なるべく人のいない所吹き飛ばすか」


 カイトさんのことだから蒼炎撃ち込むのかと思ったら、建物のあちこちが爆発して吹き飛んだ!あれはなに…爆発魔法?


「よし、敵が動揺してる今のうちに乗り込むぞ!翔太と太陽と瑠奈が先頭だ」

「「「はい!」」」


 ホントに中は大騒ぎだ。金髪の悪魔がきたって言って青い顔して逃げていくね。


「そいつ!逃がさないで!」

「よっしゃ!死ねえ!」


 早速女子から指示が飛んで男子が応えて数人でリンチにした…。ピクリとも動かない。そんな事気にしてる間もなくソイツもソイツもと指示が入り、その数の多さに驚いた。一体何人が抵抗できない乙女を弄んだんだ…。男子達はきっとそういう境遇を知っていたのだろうね、皆鬼のようになってるよ。僕は風の刃で逃げようとする奴の足を切りつけて逃げれなくしてる。


「あれ太陽がやってるのか?すごいな」

「そうだよ、翔太も練習すればできるようになるよ」

「マジか!綾香を救出したら教えてくれな」

「わかったよ」


 その後も本当に皆殺しかって思うほど復讐対象がいたけど、大抵は僕らの後ろにいるカイトさんが背後に浮かべる蒼炎の盾?を見ると途端に硬直して僕らにリンチされるという感じで進んで行った。


 カイトさんそれカッコいいね?どうやってるの?


「何人か集団で逃走しようとしてるな。そのまま真っ直ぐ壁ぶち抜いて進め」

「任せて!」


 見守ってくれてたカイトさんから指示が出たと思ったら、瑠奈が蹴りで石壁をぶち抜いた。どうなってるのその足?


「ん?教官に習った剣術の応用だよ」


 あのエルフの突き技のゴォォとかいうやつ?足でも出せるの?すごいね瑠奈…。


「これは、狭い通路?隠し通路かなんかだろうか?」

「左に進め。走って逃げてるぞ」

「この匂いはあの豚だ!絶対逃がさないで!」

「よし、皆行くぞ!」

「護衛も連れてるようだから気を付けろよ」


 ほどなくして逃げている一団に追いついた。護衛対象が太ってて遅いのであまり早く逃げれなかったようだ。他にも取り巻きみないな奴が2人と護衛の騎士が5人いる。


「騎士は男子達任せた!他は私達でやる!」

「僕の魔法で牽制する」


 風の刃で騎士の足を斬りつける。男子達は騎士を取り囲んでるように見えるが、流れるように移動して豚どもに一発づつ殴ったり蹴ったりしている。


「まったく、うちの男子達は…」

「瑠奈は参加しなくてもいいの?」

「うん。皆にあいつだけは私達にやらせてって言われてるから」

「そうなんだね」

「ぎゃぁぁ!」


 女子に風の魔術師がいるみたいだ、豚の股間がズタズタになったよ…。


「じゃあ皆!瑠奈に習った火の魔法で火炙りにしてやりましょう!」

「やめてくれ!助けてくれ!」

「黙りなさい!」


 女子の一人が拳大の岩を3人の口に突っ込んだ。


「騎士は片付いたぜ」

「皆怪我はない?」

「大丈夫だ。太陽の最初の魔法のおかげで楽勝だったぜ」


 それはよかった。ってあれ?カイトさんがいない?どこいったんだろ…。


「俺、女子達には逆らわないようにするよ…」

「俺も…」


 女子達の火炙りの刑に男子達は戦慄した。気絶しても水をかけて石を投げて目覚めさせる徹底ぶりだ。


「私達は抵抗することも気絶することもできなかった」

「面白がって何人も相手させたお返しに皆で相手してあげてるんだから感謝してね」


 その相手してあげてるというのが火炙りとはずいぶん過激だけど、もしも瑠奈がそうなってたらと思うと僕も同じことしそうだから何も言えない。そうして最後は一斉にと声が掛かって豚どもは事切れた。


 全員がその様子をじっと見ていたが、突然炎が蒼くなって灰も残さずに消滅した。


「ぁ…」

「これでお前達の最大の復讐対象はこの世から抹消された。あとはさっきの広場に戻るぞ」


 カイトさんがいつの間にか戻って来ていた。どこ行ってたの?と思ったけど、それは広場に着いてすぐに理解した。


「とりあえずここから逃げ出そうとする奴全員捕まえておいた。この中で逃がしていいやつが居たら教えてくれ」


 200人くらいはいるだろうか…。昏倒した状態で首から上だけ出して土に埋められている。


「たぶん、左側の半分は変な魔力の紐が出てるから扱いが違うんじゃないか?」


 女子達がしっかり検分して相談した結果、カイトさんの言う通り関わりが無いということになった。


「じゃあお前達は解放してやるが、この駐屯地から出ることは許さん。1週間は大人しくしていろ」


 カイトさんは続けてそのほうが都合がいいだろとぼそりと言った。


 その後、男子達と一部過激な女子達によって埋められたまま無抵抗でボコボコにされた者達はかろうじて息はあったが、土の中から出してもらうことはなかった。


「カイトさん、皆、私達の復讐に付き合ってくれてありがとう」


 皆静かに頷いた。これにてこの地における女子達の復讐劇は幕を閉じた。

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