第16話
帝国軍をリーネフ国から追い出す作戦が始まった。念のため、クラスメイトを判別できる僕達はカイトさんの後ろに控えてる。僕達の居る中央前線は遠距離から魔法攻撃を繰り返してる。
「カイト様、このままでよろしいのですか?」
「うん、もうちょっと待とうか」
カイトさんと騎士団長さんが何か話している。カイトさんは時折右をじっと見たり左をじっと見たりしてるから何かを待ってるのかな?
「もうそろそろだな、他の隊もぬかり無さそうか?」
「はい、おそらく大丈夫かと」
もうそろそろだなと言いながらカイトさんは蒼炎の玉を浮かべ出した。え?ちょっと何個出すの?
「太陽…カイトさんすごすぎ…」
「ホントだね…」
クアッドコアどころじゃなかった!空を覆いつくすほどの蒼炎の玉だ!100個くらいある?
そしていつの間にか最前列に歩いていってたカイトさんは――
「これがフレアソードの炎だ!お前達帝国に戻れたらフレアソードに喧嘩売るのはやめておけと周りに宣伝しておけ!」
空を覆いつくすばかりに広がって浮かんだ100発くらいの蒼炎の玉が一斉に発射された。慌てて防御魔術を展開するが意味をなさない。帝国将兵っぽいのを次々と焼いた炎は、その場で更に勢いを増して敵軍を混乱させる。そこに中央軍全軍の粛々とした前進である。帝国軍は指示もないまま呆然とするのみだった。
「隷属の首輪着けてる者は3人纏めて縄で縛って捨てておけ。あとで本陣に回収させる」
カイトさんかっこよすぎ!奴隷達が無抵抗で縛られてるけど、さっきの蒼炎乱舞で指揮できる人皆消したの?この人はどこまで考えて行動してるんだろう…。僕も見習わないと。
……………………
帝国軍を追い立てて、その勢いのままに国境も制圧、そして帝国の国境沿い砦まで辿り着いた。もう辺りは暗くなり始めたから今日はここで終わりかなと思ったらカイトさんはやる気だった。
フレアソード騎士団の団長に何やら指示を出してたと思ったら――
「太陽と瑠奈は俺と一緒に突入部隊だ。誰よりも早くクラスメイト見つけるぞ!遅れるなよ」
「「わかりました!」」
一日置いたら奴隷達がどうなるかわからないからこんな時間から突入を決めてくれたのかな?時間をおけば色々準備できるもんね。
「そろそろ団長達も配置に着くな、始めるか」
フレアソード騎士団は砦をぐるっと回って反対側に到達しようとしていた。逃がさないためかな?いや、他の部隊もいるからわざわざ向かわせたということは奴隷を生け捕りにするためかな?そうだよね、使えるから連れていくとか肉壁にするとかやりそうだもんね。
「よし、突入するぞ、付いて来い」
と言って城門から離れた何もない城壁に向かっていくカイトさん。城壁燃やすの?
「幅は10メートルくらいでいいかな、よし皆いくぞ!」
「え、どこから――っ!」
言った通り城壁が10メートルくらいの幅ですっぽりとくりぬいたように消えた!嘘でしょ?何したの?
「ほらほらぼーっとしてないでいくぞー」
「は!だめだ、カイトさんのやることにいちいち驚いていたら寿命がなくなる」
「そうだぞ。瑠奈が10人は産みたそうだから頑張れよ」
「えっ…瑠奈?」
「……カイトさんなんでわかったの…」
「「まじか…」」
カイトさんは冗談で言ったつもりみたいだけど、瑠奈はマジだった。瑠奈、大変そうだけど大丈夫なの?なんてぼーっと瑠奈のこと見てたら目的地に着いたようで、入り口蹴破って潜んでた帝国軍らしき人を制圧してた。
「最初はここだ!どうだいるか?」
「います!あそことあそこ!」
「任せろ!他も見落としないかしっかり見ておけ」
他も一人一人しっかりと確認してる間にカイトさんは昏倒魔法と浮遊でクラスメイトを浮かせてこっちに連れてきてる。
「騎士はこいつら担いでおいてくれ。次行くぞ」
「はい!」
そうして数か所回って全部でクラスメイトを8人みつけた。
「8人ってどうなんだ?計算あう?」
「今の所僕達入れて27人ですね。あと13人行方不明ですか…」
奴隷にされてても意識はありそうということでここに全員集めて奴隷から解放して情報持ってないか聞いてみることになった。
「よし、あの城壁に沿って土魔法で家建てるか」
「家、建てる…?」
「形は四角でいいな、部屋はとりあえず4つ、崩れないように圧縮して固めてと…ほいできた」
「「……」」
「驚いてないで生産職の人ら押し込んで戦闘職迎えに行くぞ」
「はい…」
土魔法で家建てちゃったよこの人。頭の中に家を建てる図面があるの?なんて考えてるうちにカイトさんに手を握られたので、反対側を瑠奈と手を繋ぐとすぐに転移した。
「よし、帝国の砦落としたからお前達を連れて行く。太陽は男子、瑠奈は女子を集めて手を繋いでくれ」
「太陽だ!皆今までよく耐えて来たね!これからカイトさんが奴隷から解放してくれるから僕達の指示に従って欲しい」
「瑠奈だよ!女子もよく頑張ったね!向こうで生産職の皆も待ってるから、あっちに行ってカイトさんに開放してもらおう!」
うんうん、皆泣いてるね。僕も泣けてきたよ。結果的に追放されてカイトさんと知り合えたから翔太や皆を助けられる。最下級職って言われて追放された時は絶望しかなかったけど、今は皆を救えてよかったなって思うよ。
「皆手を繋いだな?離すなよ?――転移!」
そして僕達はまた帝国の砦に建てた家の前に戻ってきた。
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