第15話

 この戦場にいるクラスメイトは粗方攫ってきたと思う。それにしてもカイトさんの突破力の凄さ。蒼炎をバラまきながら蒼炎の剣で薙ぎ払い、飛んできた魔法を風魔法で吹き飛ばして部隊に指示も出す。クアッドコアでも搭載してるの?


「これで心置きなく極大魔法ぶちかませるな」

「やっぱりカイトさんもクラスメイトがいるってわかってたんですか?」

「いや、たぶんいるだろうなってくらいかな。太陽がきてくれて助かった」

「カイトさん。今まで抑えててくれたんですね、ありがとうございます」

「いいんだ。俺も同郷の者で善人なら殺したくはないからな」


 その後いちおう婚約したことも話しておいた。そしたらカイトさんも無事に結婚してすでに妊娠3ヵ月くらいらしい。全てにケリがついたら役人でも使用人でも雇ってやるからお前達も落ち着いて家庭持ったらどうだ、なんなら同級生の子作ってくれと言われた。瑠奈が頑張ります!と言って凄くやる気を出していた。


……………………


 カイトさんにもらった寝てる間に傷が治る丸薬を気絶してるクラスメイトに飲ませていく。とたんに傷が治りだし、スヤスヤと気持ちよさそうに寝入っているようになった。一人一人顔も確認してクラスメイトに間違いないことも確認した。そしてカイトさんの部屋に行き――


「カイトさんありがとうございます!男子9名女子8名確かに全員クラスメイトでした。そして指示通り男子は3名づつ、女子は2名づつで牢に入れてあります」

「うん、うまく拉致できてよかったね」


 あんな敵陣の真っただ中に突っ込んで拉致してこれたのは全部カイトさんのおかげなんだけど。その拉致の仕方も殴る蹴るとかじゃなく昏倒させる魔法?とかよくわからないもので、意識を刈り取った後は浮遊魔法で浮かせて倒れることさえ許さない優しさぶり。本当にこの人と知り合えてよかった。


「今日は疲れただろう?瑠奈の希望で2人の部屋にしてあるからもう休んだらいいよ」


 え?こんな所で2人の部屋でいいの?って瑠奈はまだ男装してるからいいのかな?それに軍の施設で偉い人でもないのに一人部屋はないか…。


「瑠奈、カイトさんのおかげで助け出せてよかったね」

「ホントだね、私達だけじゃ無理だったよね」

「うん。感謝してもしきれないね」

「じゃあちゃんと休んで明日も頑張らないとね!」

「そうだね」


 今日はシングルのベッドが二つだから大丈夫だよね。


……………………


「ご、ごめん」

「薄い壁で、周りには飢えた男どもがうようよいるんだからダメだよ太陽?私のお尻が大好きなのはわかるけど…」

「気を付けるよ…」


 おかしいな。別々のベッドで寝たはずなのにどうして瑠奈こっちにいるの?


「皆を助けるまでは我慢するんだもんね」

「うん、そうだよ」

「(男の子ってもう我慢できない!ってなるんじゃなかったの?)」

「うん?なんか言った?」

「なんでもないよ。今日も頑張ろうね!」


 よし、朝食はカイトさんの部屋で取ることになってるから向かおう。


「カイトさんおはようございます」

「おはよう。ちょうど朝飯がきたとこだ。そこに座って食べな」

「ありがとうございます」

「あいつらにも朝食出してるはずだから、これを食べ終わったら見に行こう」


……………………


「全員残さず食べたか?さっきのは朝食だ。夕食は親子丼食わせてやるから覚悟しろ」


 カイトさん。まるで拷問のように言うから、そこにいる牢番なんて酷い食べ物を食べさせられるのかと思って口押さえてるじゃないですか。それも作戦なんですか?オヤコドンなんて知らない人が聞いたら魔物みたいじゃないですか。


「ここで奴隷から解放したらお前達はバラバラの目的に向かって動き出すのだろう?今は戦時中故それに対処する時間が惜しい。落ち着くまでおとなしくしていろ」


 そうだね。今は帝国軍をやっつけて帝国の砦で生産職の人を助け出さないとね。ごめんね皆、おとなしくしていてね。


「よし、戻るぞ」


 今回、僕達にはまだ正体を明かすなと厳命されてる。たぶんカイトさんなりに考えてのことだと思う。僕もやっぱり解放する時までは明かさないほうがいいと思う。余計な思考は入れずに、今は大人しくしていれば解放されるって思っていてくれればいいよね。


「さて、太陽。あとは帝国軍押し戻して帝国の砦まで奪取する予定だが、他のクラスメイトはどうなってる?」

「はい、生産職の人達がカイトさんに攻められて人がいなくなった砦に配備されてるみたいなんです」

「それは丁度いいな。そこに残り全員居るといいけどな」

「そうですね」


 この後カイトさんは作戦会議に行くと言って会議室に向かっていった。


「あまりうろつくわけにいかないから大人しくここで待ってようか」

「そうだね。……綾ちゃん、砦にいるかな?」

「綾香はたぶん帝城な気がする…」

「この軍隊お城まで行くと思う?」

「……行かないかもしれない」

「私達だけでお城に…大丈夫かな」

「軍が動かないとしても、皆が奴隷から解放されたら行くって言うよね。特に翔太は…」

「そうだね」


 空から侵入して救出する?この世界では気配察知とか魔力感知とかあるからすぐバレそうな気がする。もしも捕まった時のことを考えると瑠奈は置いていきたいな…。


「やだよ、絶対一緒に行くからね」


 考えてることがバレてたみたい。わかったよ、一緒に行こう。瑠奈だけは絶対に守るからね。

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