第14話
あれからどれほど日数が経ったのか定かではない。スマホやカレンダーもないし旅から旅へであちこち移動している。たぶん、こっちの世界に来てから1年近く経っているような気がする。
戦闘技術のほうもかなり上がった。魔力も使っていたら少し増えたし、カイトさんのように空を飛べるようになった。このおかげで行動範囲が広がって、北の北方諸国との国境近くまで行ってみた。やはり前線には奴隷兵士を投入しているという話しだった。だけど、首輪についての情報はなかった。
帝都の図書館も期待したものはなかった。あるとしたら施錠されたあの先、禁書庫とでもいうのかな?あそこだろう。
「太陽、これからどうする?」
「とりあえずハゲ支部長のいる町に何か情報がないか行ってみようか」
「わかった」
隷属の首輪に関しては正直お手上げだ。壊していいものなのかな?蒼炎なら焼けそうだけど、人間の首も焼けちゃうよね…。首輪だけ転移させられれば…転移か!カイトさんに相談してみようかな。
……………………
「随分逞しくなったなお前達」
「はい、ご無沙汰してました」
「いいんだ。で、その顔はまだ救出できてないんだな」
「はい。隷属の首輪をなんとかできれば、今の僕達なら簡単に攫ってこれるのに」
「あれはな…。あのローブの男がきてから急速に広まったんだ。どこから持ち込まれたのか、どこで生産してるのか謎なんだ。それまでは契約魔法で、痛みに耐えれば命令に背くこともできたんだ」
「ローブの男か…」
「俺も調べさせたがあいつは城から出ないから誘拐するのは難しいだろうな」
部屋が分かれば空から侵入して――
「それよりも戦争が近いぞ。そこに召喚勇者も全員配属されるそうだ。生産職も国境沿いの砦まで移動するとか」
「それ本当ですか?」
「ああ、もうこの町を越えてリーネフ方面に向かってるぞ」
「まずい!支部長!ありがとうございました!またいつか」
まずいまずい!放っておいたらカイトさんに皆殺されてしまう。カイトさんに合流しなければ!
「瑠奈、カイトさんの所に急いで向かおう」
「そうだね!飛んでいく?」
「いや…、戦争が近いとなると斥候もいるだろうから魔の森から迂回していこう。何日か泊りになるかも」
「わかった」
……………………
「たぶんもう少しでテムバー男爵領に入れるはず」
「焚火の前で太陽の膝枕で寝るのも悪くなかったし、膝枕するのも良かったからまだ着かなくてもいいよ?」
「いや、ダメだよね?皆カイトさんに焼かれちゃうよ?」
「そうだった!早く行こう!」
まだ時間的には戦端が開かれたかどうかってくらいだと思うけど、どっち向かったらいいかな?カイトさんのフレアソード領か辺境伯領の砦か…。よし、砦の周囲に潜んでカイトさんが来てないか空から見よう。
「な…んだこれは…」
「わからないけどすごく殺伐としてるね」
テムバー領の町に入った所、雰囲気がおかしい。何があったんだろ?
「太陽、あそこに冒険者ギルドあるよ、あそこで聞いてみよう」
「そうだね」
ギルドの中で得た情報によると、辺境伯と長男が砦に向かう途中で黒ずくめの奴に奇襲を受けて討たれたらしい。なんてことだ!カイトさんのお父さんとお兄さんじゃないか!黒ずくめってまさかあいつ、カイトさんの身内をどれだけ殺すんだ!
「カイトさんかわいそう…」
「瑠奈…」
「でも益々危ない!前の牛久大仏みたいなやつ出しそう」
「カイトさんを早く見つけよう!」
地図があるわけじゃないから砦の方角がわからないんだよね。とりあえず街道からあまり離れないようにして進むしかないかな。
「太陽!あっち!たぶんカイトさんがいる!」
「えっ!……なんか遠くに煙が上がってるね」
「行ってみよう!」
瑠奈に手を引かれてそっちに向かう。またいつもの直感かな?何も無かったら迷子になっちゃいそうだけど…。
「……いるね。あのバケモノみたいな魔力はカイトさんだ」
「でしょでしょ!」
「よし、カイトさんなら僕らのこと気づいてると思うけど、周りにバレないように上空から最高速で飛び込もう!」
「わかった!じゃあ背中からぎゅーって抱き着いてね!今はちょっとアレだから、私のお尻が魅力的なのはわかるけど押し付けるのは我慢してね?」
「……ちょっと何がどうなってその話になったのかわからないんだけど」
「私たちが一番力を発揮できるフォーメーションだよ!」
「そうなんだ?」
「そうなの!いいから早く!」
「はいはい」
って、うおお?確かにこりゃ早い!しかも瑠奈が風圧をガードしてくれてるから飛びやすい!いつどこでこんなフォーメーション考えてたの?
「ねぇ瑠奈、そろそろスピード緩めたほうが」
「私はもうガードしかしてないよ」
「僕か!やばいやばい止まって!」
瞬間、僕達の体は風に包まれてジェットコースターがループするようにクルンと回った。
「なんて速度で突っ込んでくるんだお前達は」
「カイトさぁん、死ぬかと思ったぁ」
「よしよし、元気そうだしちゃんと瑠奈を守ったんだな」
「それはもちろんです!」
「それで、どうなった?」
クラスメイトはほぼ全員奴隷にされてたこと、この戦場に配備されてること、隷属の首輪の解除方法がわからないこと、全部話した。
「なるほど。よし、城壁の上から見るか。目を魔力で強化するんだよ」
「わかりました」
「どうだ?」
「います!結構な数いますね」
「あ!最前列に翔太いるよ!」
「ホントだ!翔太…生きてたか…」
「よし!今から突撃して全員攫ってくるぞ!二人は俺の背後についてクラスメイトの元へナビしろ」
「「はい!」」
そうして帝国軍で金髪の悪魔と恐れられる男が人攫いに出撃したのである。
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