第13話 帝国サイド

――Side翔太


 最近は軍の巨大駐屯施設に呼び戻されて、兵士に混じって訓練に明け暮れている。ここで訓練しているよりも魔の森で魔物討伐していたほうが良さそうだが、俺達異世界人は軍のお偉いさん方に人気だ。なぜか?異世界人の女子達を抱き放題だからだ。くそが。


 女性陣だけを此処に留めたら上から何か言われるのだろう。こんなところにいても功績など上げられないし、ただ無為に時間を過ごすだけだ。魔物討伐なら、懐が温かくなった管理者が酔った勢いで開放してくれそうになったことがある。もう少しのところで他の者が来てしまい止められてしまったが、ここにいるよりはチャンスがあるだろう。今なら奴隷から解放さえされてしまえば帝国の人間を切り伏せて逃げ出せると思う。


「召喚勇者の中ではお前が一番強いな。というか兵士どころか騎士でもお前に勝てるのは限られてくるだろうな」


 奴隷解放を目指して必死に戦ってきたからな。


「異世界人は色んな知識を持ってると聞いたし、奴隷から解放して俺の部下に欲しいくらいだぜ」


 この人はいい人だが、解放されたら帝国軍になど絶対に残らない。


「しかしお前達の体はどうなってる?何か違うのか?なぜあの女達妊娠しない?」


 それはわからない。この世界に来て1年近く経とうとしている。その間毎晩のようにされているのに誰も妊娠したようなことがないのだ。どういうことだろう?やればできるんじゃないのか?


「まぁいいか。ここだけの話しだがな。またそのうちリーネフ国に攻め込むらしい。そしたらお前は手柄立てて奴隷から解放されることを目指せ。そして解放されたらそのままリーネフ国に逃げ込め。あの国なら事情を話せば助けてくれる」


 え?そんなこと言っていいの?


「何言ってんだこいつって顔してるな。実は俺はな、帝国に占領されて滅ぼされた国の騎士だったんだ。その時の主家のお嬢様が奴隷にされてあんな扱い受けてな、すぐに身籠ってどこかに移されたのかそれっきり見かけてないが腸が煮えくり返る思いだったぜ。その時のお嬢様を弄んだ首謀者が今この駐屯地の一番上でふんぞり返ってる奴だ。いつか隙をみつけて殺してやる」


 いきなりこんな話し信用してもいいのだろうか?まぁ、してもしなくても俺にはさほど実害はないか。


「帝国は何個もの国を滅ぼしてここまで大きくなったからな、内心恨んでる奴は多いんだぜ」


 なるほどね。中枢を叩けば内乱が起きるかもしれないか…。


「まぁそういうことだ。お前は何か目的があって励んでいるようだが、仲間を全員連れて逃げようなんて思わないほうがいいぞ。何人かは完全に向こう側に落ちてるぞ。あと魔術師3人も信用するな」


 嘘だろ?闇の魔術師には世話になってるんだぞ?お城の厨房で元気に働いてたって綾香の情報も持ってきてくれたし。あれは嘘なのか?


「おっと?何か混乱してるようだな。俺の話は信用できないだろうけど、帝国に忠誠を誓って誓約書に署名しないと奴隷から解放されないということだけ憶えておけ」


 誓約書があるということは奴隷から解放されても逆らうことはできないということか?そういえば頑張れば奴隷から解放されるぞって言い出したのあいつらだったな…。それも指示されたことだとしたら…。


「まぁがんばれよ。俺はお前達に期待してるんだぜ。なんなら帝国の中枢ぶっ潰してくれ」


……………………


 あれから思考がグルグル回って考えが纏まらない。綾香が元気にやっているというのが嘘で酷い目にあっているとしたら、俺はどうしたらいいんだ…。


「翔太、聞いたでござるか?」


 お前…俺を騙してるのか?


「ついに戦闘職女子の一人が妊娠したようでござるよ」


 なんだと!異世界人と現地人の間ではできないということではないのか!


「出産のために修道院におしこめられるらしい」


 それは…ここにいるよりはいいのか?


「今まで出来なかったので影から色々観察してたのでござるが、拙者の見解としては、堕ちるとできるんじゃないかでござる」


 そんなことがあるわけ…、いや、神様に祈ってるうちは大丈夫とかありそうだな。


「城に残ってる者も3人妊娠したそうでござ――いや、なんでもない」


 おい!それどういう意味だ!まさか綾香じゃないだろうな!?くそ!消えやがった!


 もしも綾香だったら俺は…。


……………………


――Sideローブの男


 誰が先に孕ませるかは俺の勝ちだったな。最後に残った3人の中で見た目がいいのを客を取らせる用に残したからな。好みで言えば客を取らせた2人のほうがよかった。だがその二人もできてしまった。もう暫くは客は取れないが異世界人の子供なら高く売れるかもしれん。せいぜい丈夫な子を産んでもらうとしよう。


「旦那様、今日はずっとこちらにおられるのですか?」


 こいつも変わったものだ。ある時妙にしおらしくなったと思って会話を許可したら、すっかり懐かれていた。ちょっと前まではずっと苦悶の表情を浮かべていたのにな。最初は誰が先に孕ませるかなんて興味もなかったが、思いの外抱き心地がよくてはまってしまった。本当に妻にしてもいいくらいだ。


「今日はずっと居られるぞ」

「それは嬉しゅうございます。ですがお腹の子に障りますので夜伽は…」

「わかっておる。丈夫な子を産んでもらわないとな」


 そうだな。お前はまだ若いし沢山産んでもらうことにしよう。

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