第12話
あれから1週間が経った。朝はギルドにいって依頼を受けて、3時くらいには帰って来て鍛冶工房巡りという生活を続けていた。
そして今日ついに毎朝の謎が判明した。今日こそはと思って緊張しながら眠っていると明け方に動きがあった。僕の手を引いて無理矢理寝返りをうたせて背中に抱き着く格好にさせた後、瑠奈の形がよくぷりぷりのお尻で僕の太陽をグリグリとしているのだ。そして反応したところをすかさず握りしめるという凶行ぶりだ。普段ならここで目を覚まして「あ、ごめん」て言うところだが、今日はそうはいかないぞ。じっと黙っていると瑠奈はしびれを切らしたのか恐るべき行動に出た。あ、やめて、にぎにぎしないで――
「ご、ごめん」
「ん。太陽おはよ。今日も元気だね?このままじゃ皆を助ける前に私襲われちゃうね?」
「……おはよ」
そういう策略なの?でも、僕が襲わなければいいわけだから、瑠奈に襲われるよりも安全なのかもしれない?
「いつも私のお尻に押し付けてくるけど、男の子は我慢できないのかな?」
「……皆を助けるまでは我慢するから大丈夫…」
そっちが押し付けさせてきてるんでしょう…。今そういう関係になったら溺れてしまいそうだからダメだよ。皆が酷い目にあってるのに…。
「……(我慢しなくてもいいのに)」
小声で呟いてたけど聞こえないフリをした。
……………………
そうして1か月が過ぎた頃、成果の無かった鍛冶工房巡り3周目でようやく見つけた。たまたま外にゴミを捨てに出たので見つけられたけど、普段は工房の奥の方でずっと単純作業をやらされてるみたいで見つけるのは困難だったかもしれない。これなら多少身バレのリスクがあっても聞き込みしたほうがよかったかもしれない。
「さて瑠奈さん、どうしましょうか」
「うーん。見たところ食事もちゃんともらってるし、理不尽な暴力とかもないし…以外とまともなほう?」
「そうだね。特に辛そうな表情はしてないし、生きるために甘んじて受け入れてるって感じがしたね」
「じゃあ奴隷の解放の仕方を調べながら、もう少し観察しよう」
「そうだね、そうしようか」
とは言ったもののこの町には図書館なんてものはなく、本屋を探してもそれらしい本はみつからなかった。ネット検索が恋しい。
「こういう時は酒場で情報収集するんじゃないの?」
「そうなんだけど、僕達みたいなのが酒場に出入りしてたら絡まれそうじゃない」
「うん、絶対絡まれるね」
「そうなると町を戻ってあのギルド支部長を頼るとかしかないのかな」
「とりあえず色んな町に行ってみるとかどうかな?どこかでポロっと情報が落ちてるかもしれないし」
それもいいかな?長居しなければ危険も減るかもしれないし。
「そうしようか」
「そうしよう!どこかの町に図書館があったりするかもしれないしね」
「そうだね。でも最後に彼に会ってみてもいいかな?僕一人で」
「どうして?しかも一人で?」
「もしも今の生活から抜け出したいと思っているなら一言伝えておきたくて、必ず助けにくるって。一人なのは念のため、もし来たことがバラされたら瑠奈のことを秘密にしておけるでしょ」
「そっか。わかった、遠くで見てるね」
よし、じゃあゴミ捨てに出てくるところを狙おう。また張り込みだ。
……………………
「太陽だよ。黙って聞いて欲しい。追放されたおかげで隣の国の貴族と知り合えてコネができた。今はまだ奴隷から解放する方法わからないけど、必ず調べて助けに来る。それまで頑張って耐えてて欲しい。OKならなにかアクションできる?」
すると彼はゆっくりと親指を立ててサムズアップしてみせた。それを見て頷いてから静かに去る。くじけないで待っていてね。
「太陽、うまくいった?」
「うん。頑張って耐えてて欲しいって伝えたらサムズアップしてくれたよ」
「そっか。助けてあげないとだね」
「うん、必ず助けよう!」
この後、念のためすぐに町を出た。次に向かったのはクラスメイトが向かったという町。ここには巨大な軍の駐屯施設があり、クラスメイトが居たとしてもその中だと予想されるので調査は困難だった。異世界人を見慣れた軍の人間も多数うろついており、ここに居ては危険だと判断しすぐに町を移動した。
町を1つ素通りして次の町に入った。この先には帝都があるけど、魔の森からは離れてしまい魔物討伐依頼はほとんどなくなるのだとか。代わりに増えるのが商隊の護衛依頼。でもこれはどこで身バレするかわからないので無理だね。
修行するならいっそ魔の森に入ってキャンプでもする?うーん、二人だと見張りが大変だよね。せめて4人なら…。
「隷属の首輪というアイテムで奴隷化してるのはわかったけど、主か主に権限を譲渡された者でなければ解除できないなんて…」
「それか権限を持ってる者を殺すかって…」
「何か別の方法探すしかないかな」
「帝都行ってみよう?」
「図書館あるだろうし行ってみようか。でもできるだけ少ない滞在にしよう」
そうは言ってみたがこの先に進むと依頼を受けることができなくなりそうなので、少しここでお金を貯めてからにしようということになった。ある程度旅の資金ができるまで3ヵ月かかってしまった。
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