第11話

 思えば小さい頃から家で本を読んでるのが好きだった僕を、手を引いて連れ出してくれたね。すぐ家の前の公園だけど、翔太と綾香と仲良くなったのもそんな時だったね。いつもグイグイ引っ張って行くんだけど、何かトラブルがあるとすぐ僕の背中に隠れたね。そんな瑠奈だから僕が守らないとといつも真っ先に謝ってたんだよね。ホントにいい幼馴染だよ。


「今日からはただの幼馴染ではいられないね?」

「まだ大丈夫じゃないかな?」

「だって、太陽の太陽が硬くなってたよ?それってもう私襲われちゃうんでしょ?」

「あれは生理現象のようなもので…」

「太陽は私じゃ興奮しない?」

「そんなことないよ!ずっと結婚するなら瑠奈がいいって思ってたよ!」

「ぇ…太陽…」

「あ、ちがうちがう」

「ちがうの?」

「いや、ちがうくなくて…」

「私は、太陽になら全部捧げてもいいって思ってるよ」

「僕もずっと、瑠奈に全てを捧げてもいいって思ってたよ。でも今はクラスメイトを助けてあげないと」

「そうだね!じゃあ今日からは婚約者ということにしよう!」

「婚約者…」

「もう逃がさないからね?」

「逃げたりしないよ。瑠奈は僕が守るんだから」


 こんな感じでいいのかな?うーん、僕達らしくていいか。ていうか僕の硬くなった太陽握りしめた瑠奈に僕が襲われそうだったんだけど…。昔のこと思い出すのもしょうがないよね?


……………………


「じゃあ今日は隣町に行きますよ」

「はーい。っていうか今までどこいってきたの?」

「ちょっとギルド支部長に会って来た」

「そうなんだ。一人で出かけたら危ないよ?」

「うん。もうしないよ」


 こっそり支部長にこの世界で婚約って何かルールがあるのか聞いてきたんだよね。二人で聞くのはちょっと恥ずかしかったから、ごめんね。


「あ!ちょっとお祈りしたいから教会に寄って行こう」

「いいけど、珍しいこと言うね」

「だって、今二人で居られるのって女神様のおかげかもしれないじゃん?」

「うん、そうかも!よし祈ろう!」


 さて、教会に着きました。まずは献金して婚約の手続きがしたいというんだっけ。


「では、こちらに署名をお願いします」

「はい」

「え?署名?……婚姻予約の誓約書…?太陽?」

「形に残した方がいいかなと思って、ずっと一緒に歩いて行こう」

「太陽!嬉しい…ありがとう」

「はい、それでは受け付けました。最後に女神様にお祈りを捧げましょう」


 女神像に向かって心の中で感謝を伝えた。瑠奈は小さい声で「えっ」とか言ってた。なにかあった?


 教会から出たあと瑠奈がこっそり教えてくれた


「鑑定の時と同じ声が聞こえて、よかったですね、けど彼は誘拐されやすいみたいだからちゃんと守ってあげてくださいねって言われたの」

「誘拐されやすいの!?」

「そうみたいだよ。だからこれからは一人で出歩くの禁止だからね!」

「うぐぅ、わかった」

「だけど、太陽が一人で出歩くなんて珍しいなと思ったら婚約のこと調べてたんだね」

「実はそうなんだ、ごめんね」

「ううん。ありがとう!すごく嬉しかった!指輪は太陽が大金持ちになってからでいいからね!」

「ありがとう。迷ったんだけど、やっぱりカイトさんに路銀としてもらったお金で買うのはダメだなって思って諦めたんだ」

「うん、それでいいよ。だって私たちのことは女神様が祝福してくれてるし!」

「そうだね。じゃあ隣町にいこう」


 瑠奈をきっと幸せにしてみせるからね。


……………………


「やば、途中でイノシシ見かけて追いかけてたら遅くなっちゃったね」

「危なく門の前で野宿するところだったね。どうして瑠奈はイノシシ追いかけたの?」

「なんとなく本能が捕まえて食べろって…」

「フェンリル母さんに毒されてますな」

「振り返ってみるといいお母さんだったよね」

「ホントだね。なんだかんだ面倒見いいしお母さんって感じだったね」

「話し込んでる所悪いが身分証を」

「あ、はい」

「駆け出し冒険者か。なんでこの町に?」

「友達がいるので誘いに来たんです」

「なるほど。通ってよし」


 なんとか無事に通過した!鍛冶師だっけ?鍛冶工房を片っ端からあたってみるしかないかな。


「太陽、宿の交渉は私に任せてね、得意なんだ。」

「うん、任せるよ」


 もうダブルでも何も言わないよ。でも、襲わないでね?


……………………


 無事に宿も確保できて食堂で食事をしていたら隣の席の客の話が聞こえて来た。


「皇帝陛下が召喚勇者の一人を妾にしたらしいな」


 え!?誰を?


「聞いた聞いた、なんでも召喚勇者達との友好のためとか」

「皆奴隷にしちまってるのになにが友好なんだか」

「おい!聞かれたらまずいぞ」

「おっといけねぇ。だけどよ、もし子供なんて生まれたら皇子はどうするんだろうね」

「それな!召喚勇者の血を引いてたら人気も才能もありそうだし、こりゃ内戦にでもなるんじゃないか?」

「おーいやだいやだ」

「ちょっと!その妾になった人って名前わからないんですか?」


 瑠奈!?あまり目立つことしたら…。


「んーたしかアヤカっていったかな」

「うそ…」


 瑠奈が崩れ落ちそうだったので傍に行って支えた。これがホントなら酷い話だ。


「部屋に戻ろう」


……………………


「まだホントかどうか決まったわけじゃないけど、覚悟はしておいたほうがいいかも」

「小さい頃からあんなに仲良しカップルだったのに…」

「許せないな帝国」

「帝国ぶっ潰してでも助け出そう!」

「そうだね、それにはもっと強くならないと」

「明日からは依頼も受けて修行しながら皆を探そう」

「じゃあ明日に備えてもう寝よう」

「うん、太陽。今日は背中からぎゅーってしててほしい」

「わかったよ」


 そうして朝になったら、やっぱり僕の太陽は硬くなってて瑠奈に握りしめられてた。なんで?

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