第8話
「よし!一先ず城門開けてもらって砦に入ろう」
なんと!たったの30騎ちょっとであれだけの数の帝国軍を蹴散らして後退させてしまった。最初の巨大火柱で全員の度肝を抜いたってのが大きかった気がする。城門に近づいた所で中から開いて、これまた金髪碧眼のとんでもないイケオジが飛び出してきた。カイトさんが父上とか呼んでるのでお父さんなんだろうけど、もの凄くカイトさんを心配しているよ。愛されてるんだね。
カイトさんに付いて色々聞いて回ったところ、ただ一人を除いてはクラスメイトらしき話はなかった。一人はちょっと怪しいね、これは調べに行ったほうがいいかな…。
「瑠奈、黒ずくめのヤツって忍者好きのアイツじゃないかな?」
「私もなんかそんな気がする」
「だよね…帝国軍に潜り込んで調査してきてもいいかな?」
「わかった。行こう」
「え?瑠奈も行く気?ダメだよ!」
「行くよ!こんな世界で太陽を一人にしないから!」
「瑠奈…わかった。でも危ないから男装でもしていこうか」
「それならいいよ」
ホントに連れてっていいんだろうか…。あのローブの男が使い道って言ったのが気になるんだよね。なんか嫌な予感しかしない…。
「カイトさん、ちょっといいですか?」
「ん?どうした太陽」
「クラスメイトの様子を探りに行きたいんです。この戦場で黒ずくめの人なんて見たことないし、もしかしたらウルリック様を討ったのは忍者きどりのクラスメイトな気がしてきて…。一人、忍者のことばっかり話すヤツがいたんですよ」
「そうか。その黒ずくめはじいちゃんの仇だ、もしクラスメイトだったとしても許すわけにはいかないよ?隷属化されていればまた話は違ってくるかもだけど」
「はい、わかってます。それを調べに行かせてください」
「わかった。瑠奈はどうする?軍に合流するなら貞操を守れるかわからんぞ?」
「うっ…。でも、連れて行きます。一人にしないって言ってきかなくて。男装でもして…」
「ふむ。軍には合流しないで町にでも行って情報収集したほうがいいかな。たぶんだけど、魔の森に入って暴れてる連中がいるって話だったんだけど、それってクラスメイト達を魔物狩りさせて鍛えてたんじゃないかと思ってる。だからこの近辺の町のどこかにいるんじゃないかな?」
「そんなことが…。わかりました、その線で探ってみます」
「クラスメイトみつけても隷属化されてないか様子みるんだよ」
「わかりました」
カイトさんに話してみてよかった。軍じゃなく町ならいつでも逃げれるように準備してればなんとかなりそう。よし、あとはどうやって国境越えて潜り込むかだね…。
……………………
「よし、今だ!」
僕と瑠奈は捕虜の中に混じって行動してる。周りには10人程いる。牢を移ると言われて移動中に警備の人に計画通り頭から袋を被せて軽く縛る。それで脱走するんだけど、この捕虜達には仕込みをしてある。「あんな魔法使うバケモノと戦うなんて冗談じゃない!俺は故郷に帰る」というもの。黙ってたらそのまま軍に出頭してまた軍に組み込まれちゃうから、できるだけ散り散りに逃げれば斥候も呆れて放っておいてくれるんじゃないか?というのがカイトさんと相談してひねり出した計画だ。
普通に旅人を装って国境越えようとしてもこの戦時中に見咎められるだろうし、僕らの場合は止められたらアウトだ。容姿で召喚勇者だとバレるだろう。カイトさんの話では戦場の周囲には斥候が潜んで監視してるので見られないで潜入するというのは無理だそう。
というわけで捕虜達にはできるだけ錯乱した体で逃げようと言いくるめてある。
「ぎゃ~!焼かれる~!金髪の悪魔がくるぞ~!」
カイトさんごめん。
「金髪の悪魔が空からくるぞ~!」
瑠奈うまい!国境警備の人達みんな空見てるね、今のうちに駆け込もう!ついでにあそこに蒼炎出して燃やしておこう。
「うわ、どこからか金髪の悪魔の蒼炎が飛んできたぞ!逃げろ~」
カイトさん、悪者にしてホントごめん。
「空だ!あいつは空から炎を吐いてくるぞ~!」
瑠奈、それは聞かれたら怒られるよ。
……………………
なんとか国境越えて砦の近くまで来た。砦は入らないで素通りして町まで行こう。たぶん街道沿いを進めばあるよね?ずっと走って来たからかなり疲れたけど、夜までに着けるかわかんないからできるだけ急ごう。
「瑠奈、野営はちょっと怖いからできるだけ急ぎたいけど大丈夫?」
「うん、私は大丈夫だよ」
「よし、もう少し頑張ろうね!町に着いて宿で休むために!」
「宿で休む…よし!行くよ太陽!急いで!」
「ちょ、瑠奈?待ってよ~」
ちょっと瑠奈さん元気良すぎじゃないですかね?僕もうヘトヘトなんですけど…。
……………………
「太陽、町っぽいのが見えてきたよ」
「ほ、ほんとだね…」
もう少しで太陽が沈むかと思われるような時間にようやく町が見えて来た。よかった、野営しなくて済みそう。
「太陽、ところでどうやって町に入るの?」
「え?どうしよう?…魔物討伐してきた帰りだとかいって勇者のフリしてみる?」
「うーん、身分証とかないしそれしかないかな」
「よし、ここは僕に任せてね。変に目を着けられたら困るから瑠奈は喋っちゃだめだよ」
「わかった」
僕の天才的な演技力のおかげで?無事に町に入ることができた。とりあえず宿の確保だと大通りを適当に歩いてたら見つけたので入る。交渉は私に任せてと瑠奈が言うので任せて出口で着けられてないか様子を見ていた。
「太陽、お部屋借りれたから行くよー」
「はーい」
と言って案内された部屋は、一人部屋でもツインでもなくダブルの部屋だった。
「急だったからここしか空いてなかったんだー」
瑠奈さんや、目が泳いでますが?
「しょうがないから昔みたいに一緒に寝ようね」
そりゃ昔はよく一緒に昼寝してたけども…でも小学校低学年までだよね…。
「まぁ、フェンリル様のとこでも一緒に寝てたし今更か…」
「うんうん!じゃあ決まったことだしご飯食べにいこう」
瑠奈がご機嫌になったので、どうでもよくなった太陽だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます