第6話

 今日はカイトさんが姫様のお願いをきいてくるというので、僕たちはエルフの訓練場にお邪魔してます。ここなら武器もあるし、エルフの剣術もあるらしい。


「は!せや!とや!」


 瑠奈がすごい速さで突きを放っている。なんか元々剣術やってたみたいに様になってるね。


「中々筋がいいな。そこはこうだ!」

「こうですか!」ビシュ!

「そしてこうだ!」

「こうですね!」ヒュン!

「よしよし、最後はこうだ!」

「こういうことか!」ゴォォォォ!

「うむ、上出来だ。明日からエルフの戦士になるか?」

「いえ、私は太陽を守る使命があります教官!」

「そうか。ならばこれからも励みたまえ!」


 あんたたち何してるの?最初は見様見真似で隅っこの方でやってたんだけど、瑠奈の突きを見てエルフの教官?みたいな人が寄って来てこうだ!こうだ!ってやってたんだけど、なんで瑠奈さんマスターしてるんですかね?最後なんてゴォォォ!とかいってたけど、その剣の先から何が出たの?ちょっとわけがわからないよ。


「いい?太陽、こうだよ!」ビシュ!

「こうかな?」シュ

「ちがうちがう、こう!」ビシュ!


 辺りが暗くなるまで瑠奈の鬼教官ぶりが発揮されるのだった。


……………………


「えー、本日はお集り頂きありがとうございます。今回の一件を受けて、今後のためにもエルフさん達にも高温の炎を作れるようになってもらいたいということで講習会を開きたいと思います。」


 カイトさんの目指せ蒼炎講習会が始まった。僕達の他に姫様と神竜様、それとララノアさんとエルフの子供達?見た目で判断すると、小学生から高校生くらいまでの30人くらいが集まっている。


「魔法はイメージが大事なので、早速僕が出してみようと思います。」


 そう言ってカイトさんが直径30センチくらいの蒼炎を5メートルくらい上に出して浮かせた。熱気がここまで伝わってくるすごい熱さだ。


「それではまず皆さんにやってもらう前に、火の温度を上げるにはどうするんでしたっけ、太陽クン。」

「はい、酸素を効率よく送り込む必要があると思います。」

「そうですね。それと?」

「え?それと?」


 なんだっけ?


「はい!その隣のハッとした顔の瑠奈クン、わかりますか?」

「えっと、燃えやすい燃料にするとよいんじゃないかなって。」


 あー!そう言われるとそうだね!


「よろしい。ではわかりますね皆さん。炎を作る時に込める魔力を、それ自体を燃えやすい性質の魔力にして込める。そして酸素がうまく供給されないと火は燃え上がらない。そのことをふまえてやってみてください。」

「ということは妾の炎も酸素を意識すれば?」


 と言って上を向いて空気を吸い込む神竜様…


「やめろやめろ!どこでブレス吐く気だよ!」


 カイトさんが慌てて駆けて行って口を塞いでいた。


「むぐ!むぐぐ!そうじゃった、ここでやったら怒られるのじゃ。」

「できましたよカイト!見て下さい!」


 おお!姫様すごい!美少女なうえに天才なのかも?異世界知識無しにできるんだからすごい!


「リリィとの協力技とは考えましたね。でも蔦を燃やすには十分でしょう、合格です。」

「やりましたね、リリィ!」

「カイトさん、僕たちもできました!」

「うん。君達は簡単にできそうだと思ってたけどやっぱりできたね、合格です。」

「「ありがとうございます。」」

「あとはその蒼炎をイメージするだけで簡単に出せるように練習してね。」

「わかりました!」


 やった!この炎なら熊にも通用するかな?ていうか魔法はやっぱりイメージが大事なんだね。しっかりイメージ出来てたら魔力消費が少し抑えられるかも。黒炎なんて作れるかな?


……………………


「というわけで。」

「え、カイトさんそんなラノベ主人公みたいなことするんですか。」

「いや、ごめんごめん。二人と話しておきたいことがあってね。」

「なんですか?」

「うん。二人のクラス?は魔法使いだったんだよね?」

「はい、そうです。それで最下級職だって言われて――」

「それたぶん嘘だよ。」

「え?」

「この世界では僕らやエルフ達、フェンリル達のような魔法の使い方は一般的ではないんだ。よくある詠唱して術式を構築して一つづつ放つという感じで、火系統なら火の魔術師と呼ばれるんだ。」

「は!?そうです!魔術師のクラスに選ばれた人達は上級職ですとか言われて調子にのってました!」

「やっぱりね。こうやって魔法使ってみたらどっちが強くてやっかいかわかるよね?」

「はい!イメージ次第でいろんな魔法使えるのは強みですよね!」

「そういうこと。魔法使いは何やらかすかわからないから成長する前に死ぬ確率が高い場所に追放したんだろうね。ましてや異世界人ならなおさらだ。」

「なるほど。じゃあ僕達は最高のクラスをもらえたということですか?」

「それについては、他にすごい勇者とか聖女とかあれば別だけど、魔法使いの可能性は無限だと思っているよ。ただし、魔力量がよく成長した幼少期にこっちにいたわけじゃないから、そこはちょっと燃費のいい魔法開発するとかで補ったほうがいいかな。」

「すごい!カイトさんありがとうございます!最下級とか言われて不安しかなかったけど、これからの努力次第でこの世界でも生きていける気がしてきました!」

「うんうん、よかったね。あと、さっき姫様と神竜様にもあげてきたんだけど、コレあげるよ。」

「これは、石鹸?」

「え?見せて!うわぁいいにおい…。こっちじゃ水浴びして拭くだけだったから石鹸欲しかったんですよ。」

「そうだと思ったよ。でもここで使うのは泉汚しそうだし我慢しようね。城に戻ったらお風呂あるからさ。」

「「お風呂……」」


 お風呂と聞いただけで涙が止まらない。こんなに僕達人並な生活に飢えてたんだね。いや、フェンリル様には感謝してもしきれない恩があるんだよ、あるんだけどね、狼だし…。生肉食いちぎる派だし…。ごめんなさいフェンリル様。僕達は人間に戻ります。

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