第4話
「フェンリル様そちらの方は?」
瑠奈を後ろに庇うように前に出る。
「俺はリーネフ国のランカスター辺境伯家次男のカイト」
「リーネフ国?帝国じゃない?」
帝国じゃなくてよかった。この人がフェンリル様の言ってた人かな?金髪碧眼の優し気な目をした超絶イケメンだ。見た目は中学生くらいに見えるけど…。
「今現在帝国に攻め込まれて防衛してるとこだね。帝国の人間ならこのまま見逃すわけにはいかないけど?」
「ち、ちがいます!確かにクラスメイトと共に帝国に召喚されたけど、僕達だけ追放されたんです!」
待って待って!誤解しないで!帝国にはすぐ追放されたし何の関わりもないから!
「これからどうするつもり?」
「うーん、よくわからない。最下級職とか言われて転移魔法?みたいなのでこの森に飛ばされて、空から落ちてくる所をフェンリル様に助けてもらったんです。そしてこの世界で生きるなら魔法おぼえろって言われて必死に練習してたところなんです」
「なるほどね。これでもいちおう貴族の権力使えるので、帝国に帰る気がないなら面倒みてあげてもいいけど?」
面倒見てくれる?もしかしていい人なの?もしかして奴隷にされる?優しそうな目はしてるけど…。
(どうする?瑠奈)
(人間の生活がしたいけど…)
(そうだよね、とりあえず何が目的かわからないから油断しないで行ってみてやばかったら二人で逃げよう)
(うん、わかった)
「僕は
「わかったよ。改めて俺はカイト。前世の日本人の記憶がある。よろしく」
「え!?それホントですか?」
「ブレザー着てるし日本の高校生だったんでしょ。クラス転移からの追放ってラノベでよく流行ってたやつだよね」
「うわぁ!ホントっぽい…。うぐぅ、カイトさん、助けてください…」
違った!日本人の転生者だ!同郷のよしみで助けてくれる?きっとホントにいい人だ。
「瑠奈を守るために頑張って魔法使えるようになったんだけど、魔力が無尽蔵にあるわけじゃなくてそれほど続かなくて…剣術とかも覚えたいけど、フェンリル様は爪と牙で戦えって言うし。そんなのあんな魔物に通用するわけがないじゃないですかぁ」
「わかったよ。けど今はこの先に用事があるから、それが終わってから帰りに拾っていくという形でいいかな?」
「はい、大丈夫で――」
「――あー、そうですかわかりました。やっぱり一緒に行きましょうか」
ん?フェンリル様と会話してるのかな?
「はい、よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
瑠奈、この人を逃がさないようにしようね!カイトさんに付いて行けば生きていけそう!だって貴族だし?
「カイトー!置いてかないでー!」
あれ、また人が来た。ってすっごい美少女…。カイトさんの彼女さんかな?
「すみません。誘拐するのがバレて無理でした」
違った。誘拐犯だったみたい。フェンリル様の言ってた誘拐の実行犯ってこと?
「あの人はエルフのララノアさんで、これから行くエルフの里の住人だよ」
「エルフ!?エルフ居るんですね!?……ってもの凄い美人ではあるけど耳は普通なんですね」
「はいはい!うちの里で2番目の美少女と噂のララノアですよー!」
「太陽です。こっちは瑠奈です」
「町へ行くために変装してたんですよ、ほら!」
うわー!変装の魔法かなんかかな?耳が伸びたよ!
「キミ達も勇者――とはちょっと違う感じがするね。なんだろ?」
「そのままの姿で帝国に召喚されたようだよ」
「へぇ、そんなこともあるんですね。……ん?ということはカレーライス作れる?」
「材料さえあれば瑠奈が料理得意なのでできると思いますけど」
「じゃあルナちゃんエルフの里に行こう!すぐ行こう!」
「あ、ちょっと待って、フェンリル様に魔道具手配してもらったお礼言ってなかった」
「待てません!ルナちゃんのカレーライスが待ってるんです!」
あ、ちょっと?瑠奈を連れていかないで?
「あとで追いつくからあの二人追いかけてあげて」
「わかりました」
「ショウガヤキテイショクも作れるのー!?ルナちゃんずっと一緒に住もう!」
「ちょっと!ララノアさん、瑠奈は僕の大切な幼馴染だから、住むなら一緒です!」
「え…太陽?私と一緒に寝るってそんな…」
あれ?瑠奈が頬を赤く染めてもじもじしてる…。そんなこと言ったっけ?
「うーんー?……私はフリンしてみたいけど、カイトとするからダメよ。ごめんね、タイヨウは外」
「だめだめ!私は太陽と一緒にいるからララノアさんとは一緒に住めません!」
おぉ、瑠奈…。さすが僕の幼馴染。信じてたよ。
「おーいみんなー!緊急事態だヤバイのが来る!太陽は瑠奈をお姫様抱っこ!瑠奈は太陽の首に手をまわして!ララノアさんは前に向き直って足元見る!」
「はい!」
「ん、何もないけど?」
ガッ!ガッ!
「うわぁ!飛んでる!?」
「太陽…。」
「……」
なんかララノアさんが瑠奈をじーっと見てる。
「どうして同じ女の子なのにこんなに扱いが違うのー!首根っこ掴みやすいように下向かせたなー!」
「はいはい、ララノアさん方向の指示よろしくね。」
「あっ、このまま真っすぐでいいよ。」
カイトさん、ララノアさんの扱いが上手!さすが貴族?
「ララノアさん、あとどれくらい?」
「この調子だともう少しかな。」
「真っすぐフェンリル様の所行くかと思ったけど途中で曲がってこっちに追尾してきた。まずい、追いつかれそう。」
「いったい何が来てるんです?」
「神竜って言ってた。」
「ひぃっ!カイト急いで!もっと早く!」
「よし、じゃあもっと飛ばすよ!」
「きゃあ!」
瑠奈にしがみ付かれて嬉しいんだけど、ララノアさんがめっちゃ見てる。
「カイト、私もしがみ付きたいからお姫様抱っこにして!」
「無茶言わないでくださいよ。」
カイトさん、お姫様抱っこさせてくれてありがとうございます!初めてしました!
「やばいやばい!ララノアさんまだなの?」
「そこ!あの二つ並んだ樹のとこで止めて!」
「みんな、私の後ろに付いてきて!」
「よし!これでたすか――」
「いいにおいするのじゃ!それにこの魔力!美味しそうなのじゃ!」
「あ、神竜様もきちゃった。」
カイトさんの首元に抱き着いて背中に張り付いた幼女がいた。
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