4人目の独白
多分俺には他のメンバーと違って姫との思い出は少ない。
けど、決して全くないわけではない。
基本的に俺は姫を止めるストッパーのような役割だから、姫から誘われる回数自体が少ない。それに、姫を追いかけて捕まえる回数の方が圧倒的に多い。
ていうか、他のメンバーは姫に甘すぎる。
でも、たまに姫は他の奴らの目を盗んで俺のそばでゆっくりした時間を共に過ごしていることがある。
姫曰く、結構楽しいらしい。
そんな俺が1番楽しかった姫との思い出は一緒に城を抜け出したことだ。
俺はあの日、いろんな不運が重なりともかく失敗が続いていた。
いつもだったらあいつだけがかぶるミスも今日は巻き添えを喰らった。
もちろん、圧倒的にあいつが悪い。俺は1割ぐらいしか悪くない。
最悪すぎる。
全てが嫌になって俺は城の1番上で日向ぼっこ。
城の城壁を登らなければ辿り着くことさえできない。
そして、誰も知ることができない。
なぜなら、俺が作った場所でもあるから。
ここが俺にとって唯一の避難場所だった。
なのに、姫はあの日たまたま登ってきた。
いつもの服ではなく、動きやすいズボンを履いて、姫とは思えない庶民の服を着て登ってきた。
アホだ。
バカすぎる。
なんで姫が登ってきたのか全くわからない。
てか、姫が見つけられるはずがない。
慌てた顔をしてる俺を見つけた姫は登りながら自身の笑いを噛み殺していた。
落ちないように気をつけながら、姫が登るのを手伝うと姫は
見つけた
と、いつものくしゃっとした笑顔でいった。
その後、姫はまるでこの場所は自分が最初に見つけたと言うような身振り手振りで街を説明しながら、少しの間喋っていた。
姫も嫌なことがあったらしい。
もしかしたら優しい姫の嘘なのかもしれない。
でも、そんなことどうだっていい。
姫といると空を見ているだけの俺の避難場所がいつのまにか華やかになって行った。
姫の突発的な提案により、いつも悩まされて顔を顰めてしまう城を脱出することも今はやってやろうと思える。
なんなら、いつもより悪い顔をして賛成した俺に姫は少し驚いていた。
いつも失敗するであろうことも俺とならうまく行くと謎の自信に満ち溢れた姫とそんな姫を悪い顔をして助ける俺。
側から見たら、絶対組み合わせてはいけない二人組だろう。
だって、姫の突発的な発言をいつも宥めて違うことにフォーカスをずらすことが俺の仕事。なんなら、逃げ出す姫を探し出し、捕まえる指示を出すのも俺の仕事。
だから。。。
うまくいくのは当たり前。
いや、行きすぎてる。
これははめられてるのか、それとも他の奴らがアホすぎるのか。
まあ、この際どうでも良い。
いつも俺に頼ってばかりの司令塔を失ったも同異議の彼らがどう動くのか、俺は楽しみでたまらない。
きっと、てんやわんやしてる城の中きっと誰もうまく回せないだろう。
でも、あいつのカリスマ的センスでまとめるんだろう。
それをさも当たり前のように、一つに意識をまとめて姫を探し出すんだろう。
まあ、俺がいない時点で姫のそばにいることはバレるんだろう。
流石の俺もあいつには怒られたくない。
まあ、夕食までには城に戻ろう。
きっと姫は街で食べ歩きもしたいだろうが、流石に遅くまで姫を外に出しておくの危険がすぎる。
俺は正直、他のメンバーよりも動けない。
体が弱いとかではなく、他のメンバーが動けすぎてしまう。
俺らは基本的に自分が得意なことでみんなの役に立つ。
だから、俺は他のメンバーよりも頭を使うことがうまかったから司令塔のように立っている。
だから、姫を丸め込んで城に戻すことは容易い。
さあ、何もないことを祈りながら、森でもう少し寝よう。
いつだって姫の周りには動物たちをはじめとした、いろんな人たちで溢れている。
それは姫の優しい人柄が溢れ出ているからだろう。
俺は少し離れたところから見守ることしかできない。
けど、こうやって姫が愛されているところを見ることは大好きだ。
だからこそ、姫にはずっと笑っていてほしい。
一旦、あとで怒られることは間違い無いから、姫に全てを押し付けよう。
まあ、姫となら楽しく終わりそうだけど。
姫がきっかけだから、うまく逃げよう。
あいつらに、おかしを献上したら許されないかな。
まあ、街に少しだけ繰り出して、免除にしてもらうもありだ。
でも、そんあんことしたら姫が相当怒るだろうなぁ。
まあ、姫に俺の唯一の避難場所バレたのはあいつがきっかけだろうから絶対に姫とあいつは許さないかも。
面白いよな、あの二人は。
全て今では笑い話だ。
あの時、少しの怒りはあったけど、それ以上に状況が面白すぎた。
きっと、他の奴らは姫にしか声かけてやらないだろうから、俺は二人に言ってやる。
最高だーーーー!!!
永遠に笑ってろ。
6人の騎士と姫 湊香あおと @soka_aoto
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