6人の騎士と姫

2人目の告白

俺が初めて姫と会った時は、今でも覚えてる。

あの日俺はいつも通り女の子に間違われてむしゃくしゃしてた。

いつもだったら気にならない。

裏路地で殴って脅して金を取れば良いんだから。

でも、あの日は違った。

殴っても、金を奪っても何も面白くなかった。

だから、歌で発散してやろうとか思ってたのに。

この森の中心にある大きな木の根元で彼女は、姫は、あの日寝ていた。

姫は俺の定位置で寝てた。

月の光に照らされた姫の横顔はどことなく儚くて、それでもどこか力強さを感じる。

一目惚れだった。

なんて可憐なんだって俺のものにしたかった。

今まで見てきたどの女よりも惹かれた。

今までにないほどに独占欲が湧いた。

きっとさっきの男は彼女との対比のためだけの男だと思えるほどに俺は彼女を手に入れたいと思った。

でも、姫は俺が近づいた物音で起きた。

俺の気持ちをカケラも知らない姫は、なんとも言えない可愛い顔で

「あー、いつもうたをうたっているおにいさんだー。」

って言ったんだ。

歌を聞かれるのは嫌い。

だからこんな森の中心にまで来ているのに、なぜか姫には思わなかった。

なんなら嬉しかった。顔に俺の感情は漏れ出てしまうほどに。

ほんとに心から惚れてしまってたんだろうね。

単純すぎるだろう。

今の俺なら客観的に判断できる。

姫と話し始めてすぐに姫を呼ぶ衛兵の声が聞こえ始め、また会うことを約束して俺たちは別れた。

それから、俺たちは満月の夜、毎回深夜になる教会の鐘が合図だ。

姫はいつも森で歌を歌っている俺のそばで楽しそうに聴いてくれる。

時には姫が歌ってくれる時もある。

まあ、俺のことなんて、ただの歌が上手なお兄さんぐらいにしか考えてなかったであろう。

あの時までは。

ある満月の夜。

俺は姫に会った日に出会った男に襲われかけていた。

どうやら、あいつはただの男ではなく奴隷商人だったらしい。

女っぽい俺の見た目は貴族に高値で売れると判断された。

前々から狙われてたらしいが、軽く対処さえてきたため、20人以上はいるであろう傭兵の軍団に襲われてる。

気づいたら教会の鐘が鳴った。

終わったと思った。

俺の姫に逢えない。

これを逃したら30日前後会えない。

あいにく俺は今独り身だ。

姫に逢えないなら、死ぬほうがマシ。

地獄の道連れはお前らだけなのが悲しいな。

と思いながら、街中で初めて大暴れした。

案の定、姫のお父さんが出てきて全員牢屋行きだったが、姫の一言で俺は姫の部下になった。

俺が姫に忠誠を誓ったあの日。

姫はまた森で歌ってくれ、と懇願してきた。

あの日、姫は俺を朝方まで待っていてくれたらしい。

もう、姫を抱きしめることはできない。

だって、俺の手は汚れてしまっているから。

それでも、姫がもし誰か望まない相手に奪われるようなら、俺は姫を絶対に守り抜く。

叶わない夢ではない。でも、決して簡単なことではない。

だって、姫は姫なんだから。

俺は姫が横で俺の歌を褒めてくれるためだけで働き続けられる。

だから、姫のためだけに俺は働く。

まあ、親父さんにもおせわになってるしね。

でも、そんな俺のことを姫は見てない。

いや、歌が上手な女装家とでも思っているんだろう。

俺だって、一応イケメンと呼ばれる部類なんだけどね。

そんな姫が男としてみてるのは。。。

まあこれからすぐにわかるよ。