第2話
レイノー様から婚約破棄を告げられた私は、その後すぐに彼の部屋から追い出されてしまう。
私はそのままゆっくりとした足取りで廊下を歩いていきながら、先ほどレイノー様に言おうとした言葉を頭の中で再現する。
「(レイノー様は、私と婚約関係を築いておきながら、他の貴族令嬢との関係を深められていた…。そのアプローチはずっと続けられていたはずで、きっと向こうからいい返事が得られたから私の事を切り捨てることにしたのでしょうね…。そう考えたら、全ての辻褄があうもの)」
私との婚約関係がつなぎのものに過ぎないという事は、私はここで暮らしていてうすうす感じていた。
それくらいに、彼から愛情の言葉をかけられた印象が全くないためだ。
…普通に婚約関係を築いて、普通にお互いを愛し合う。
それができないという事は、少なくともレイノー様は私の事を婚約者だなんて思っていない、愛してなんていないという考えになるのは、ごくごく普通の事。
「(いなくなっても構わない程度の存在、レイノー様は私の事をそう言った。確かに、今の彼からすれば私の存在はもう邪魔でしかないのでしょうね…。新しい婚約者との未来を夢に見たいというのに、そこに私のようなつなぎでしかない存在がいつまでもいたら、婚約破棄のひとつもしたくなることでしょう。…あそこまで言ってくるという事は、やっぱりもう新しい婚約者との関係は確かなものになっているという事なのでしょうね…)」
私がレイノー様から選ばれた時、彼は私の事を幸せにするとは言わなかった。
ただただ、お互いが貴族家であるから政略的な意味の強い関係である事、お互いにとって得になるようにしかこの関係を考えていないという事、そして最初から私の事を愛しているわけではないという事…。
しかしそれでも、私の存在を必要と言ってくれるというのなら、私はレイノー様のために仕えようと心を決めたのだった。
…その思いは今日の婚約破棄をもって完全に裏切られる形となってしまったものの、もう私の中に心残りな事や後悔はなにもなかった。
「(あなたが私の事をそうとしか見ていなかったという事がよくわかりました。でもそれなら、その考えをあなた自身にお返しされても文句は言えませんよね?)」
そう、私の頭の中には彼のやったことをそのままお返ししてあげるプランがあった。
…彼がその事を知った時、そしてそのプランをぶつけられることになった時、一体どんな表情を見せてくれるのか。
私は今からそれが楽しみで仕方がないのだった♪
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