第14話 普通に馬鹿だ。エスケープ
気ままな放浪のはずだったのに、
まさか金銭問題が存在するなんて…
はやいよ工場長!
「値切るか⁉︎値切っちまうか?
勿論だが、ボクは無理だぜ…
交渉はあまりしてこなかったからな!」
これまた堂々とおっしゃる。
俺も値切りはしたことねぇよ。
実際やってるの見た回数数えられる程しか
ないし…
「そうですね、なら野宿しますか?
道具屋で寝袋、買いましたし!」
「ん〜判断が早い!」
町中で野宿ちょっと、なぁ?
こうなったら書店にでも行くか。
どうせ呼ばれたから。
「さてリト君、書店って何処か分かるか?」
「書店なら服屋の向かいの角を曲がってすぐだがどうした?」
「よし、近いな。分かった。」
「え?買いたい本でもあるんですか?」
「特に無い!
まあ行ってくるから宿の前ででも
待っといてくれ!」
思いたくないことでも
思い立ったが吉日。さっさと行って、
怖かったら逃げる。助けて、オネエさん!
さて、着いたは良いが暗い暗すぎる。
そして怪しげな空気が漂ってくる。
外から見ても分かる危険な本がこちらを向いている。まあ、あの人達の行く様な場所だし
まともな所だと考える方が、おかしいのかもしれないが。暗い、古い、怖いの三拍子の書店だなんて。
「お邪魔しまーす。
ってまだやってる…?」
先ほどの通りの暗い店、
中も相変わらず薄暗い…
棚には古書が大量に詰まっている。
鍵は掛かっていなかったものの。
人の気配が信じられないほど無い。
本当に本しか無いみたいだ。
流石は書店、と言いたいところだが
探している人間が居ないとなると
来た甲斐が無くなっちまう。
そして、店内を歩くうちに
後ろから、見事に。効果音的には
ぬうっと、
「いらっしゃい、
ここは一日中営業しとりますや、ご安心くだされ。知の探究に休みは要らぬ…
さて、次はどの本を出そうかの、、、」
「ひぃっっ⁉︎は、はあ。知、いいっすよね…」
軽いホラーだ。夜の古い店で後ろから
じいさんに話しかけられるとは。
ところで、
「いますか〜、オネエさん?」
だから暗いんだよ、この書店。
目ぇ悪くなるわ。それよりも
あのじいさんの方が心臓に悪い…
「あの〜。あ、出た。」
出合い頭にあの男。朝ごはん食べれなかった奴
「あ、出た、じゃねえよ。つか小僧じゃねえか。思ったよりも早いな。俺は来ないと思ってたわ。」
「んね、察しが良いって言ったでしょ♡」
「いやあ?それほどでも」
「そうだな、一人でこんなところに来るなん
て普通に馬鹿だ。」
「なんだって?」
馬鹿とは心外な、
夜の本棚の中でこの人見ると悪いが不気味でしか、ない。書店の話してた時めっちゃ俺のこと
見てきたくせに何言ってやがる。
「用件は何だ?」
「アナタのお友達の事よ♡」
「お前もかよ、リトのことか…
で、どういう事だ?」
「まあまあ、落ち着いてちょうだい。
どちらかというと、彼というよりは
この町のコトなんだけどね♡」
この後に及んで町のことかよ。
もう離れるってんのに、よりによって
書店の中だから動きにくいそのうえ
多分後ろにこのオネエさんの連れの方が
立ってるだろうし。
あ、俺馬鹿だ。
「この町、そろそろ終わるのよ。」
「……は?」
「え、俺も聞いてねぇんだけど?」
連れのおにーさんも知らないのかよ、
何考えてるか全く分からん、
「っつか、それと
リトにどんな関係があるんだよ」
それこそ分からん。
「昨日あの山からアナタ降りてきたでしょ?」
「そうだな」
「隣町は昨日いたわよね?」
「そうだな」
「あの町、水害が多いの、知ってるわよね?」
「そうだな」
「じゃあ、あの山が
まだ元気な火山ちゃんなのは?」
元気な火山ちゃん…可愛げねえよ、
「まあ…察しはついてるが、」
「なら…」
「っておい!前回の仕返しかよ⁉︎」
見たことある、質問攻めだったぞ?完璧に。
あの流れ、前回は逆だったけどさぁ、
「そうね、でもこれで分かったかしら?」
何がだよ…地理問題でもしてんのか、
「…分からないっす」
「あ、俺も分からん!」
おにーさん…アンタもかいな、
「そうねぇ…♡
なら宿でこの本でも読んでおきなさい。」
いかにも古そうな本を本棚から躊躇なく取り出した。参考になりそうだが、
「あ、どうも、金ないですけど」
「これは私の本だから大丈夫よ?」
「紛らわしい…
そんじゃ借りさせてもらいますよ。」
「分かったわ。なら貸してあげるから
お友達と宿で読んでなさい♡」
「分かりました。それではさようなら…」
「……じゃねえ!」
「うわぉ!驚かさないでちょうだい、
どうしたのよもう」
「いや、お金が…無くてですね、あはは」
「そうねぇ、明日の朝に宿にでも返しに来てくれればいいわよ♡」
「あ、はい…」
金はもらえなさそうで…
といった具合で再び宿の前で。
「あ、お帰りなさい。」
「おっかえり〜!でもどうしたんだい?
急にあの書店に向かって」
「なんか、どうにかなるかな〜って
思ったら返り討ちにあって厄介ごとを持ち帰って来てしまいました…」
「そうか、しょうがないな!
だが、ボクたちからも朗報はあるぞ!」
「なんとですね…」
「なんと?」
もしかして、俺のいないうちに
交渉にでも成功したのか?
二人とも俺なんかよりも優秀だし
可能性的には無くはないが…
数分後
例の本を読んだ後、
無事に宿のロビーで俺たちは寝ていた…
「まあ、悪くはないか…」
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