第15話 そうなんですか⁉︎エスケープ


「んーおはよう二人とも!

少ーしだけ遠いけど、ここいても

いいこと無ぇし、さっさと次の町へ向かおうか!」


これが、朝の開口一番の俺のセリフだった。


行き先のない人間の生き急ぎだ。


昨日の話をまとめると、ヒスイちゃんの誘拐さ

れてた隣町の水害による地盤への影響。

それとあのリトの山、通称 

元気な火山ちゃん の双方に

挟まれたこの町は今大分マズい

状況にあるらしい。

天気も地面も見るだけじゃ何も

教えてくれないってのによくもまあ

確信を持って本にできるものだ。

そして、あのオネエも同じように。


確信も自信も関係なくとも

災害があったところで、この町の人間が

リトの事をなんか、いい目で見ていないのは分かる。だから…


「道具も揃いましたし、何処か別の場所に

向かうというのは良いのですが、

     この町はどうするんです?

昨日の話が本当ならここの人たち、 

        危ないんですよね?」


昨日の夜、一緒にあの本を読めば

当然の反応だ、あのオネエの本には

しっかりと、この町を救う方法が

書いてあった。それと、起こりうる災害の

内容も。

だからこそ、

「そんな事は知らん。」

立ち去っ後にいつか何処かの町でここが

潰れたって話でも聞くだけだ。

まず、第一にこの俺じゃ何もできやしない。


「そうですか…」


それでも俺なんかは良いんだけど、

「知らんけど、リトの事を聞きたい。」


するとわざとらしく、こう答えた。

「ボクの話か?もし情熱的なラブコールなんならお断りするぜ、生憎好きな人が居るからな!」


「そ、そうなんですか⁉︎」


「違えよ、どこからその思考に結び付く。

お前の工場の話だよ。

     あと、会話聞いてたよな?」


昨日、馬鹿をしでかした俺は

少しばかり勉強することになった。

しっかりと、本読ませてもらったからな。

出来の悪い伏線くらい回収できるように

ならないとな。


「ボクの工場か?それなら閉鎖して戸締りも

しっかりしたし。ついでに言っておけば

話してなかったけど、仕事としてお金くれてた

人たちにボクが帰ってくるまで、貸す予定なんだけだが。」


「私も一緒に本は読みましたから

あの山と隣町の水害で危ない、

みたいなことは分かりましたけど

それがどうしてあの、こうじょう?と

結びつくんです?」


「よく聞いてくれた

模範解答だよヒスイちゃん。

俺の一番の疑問点だ!

話進めててさっぱりだ!」

工場ってもの作るところ、だったよな?


「ボクも分からないぜ。

仕事は嫌いじゃないがただ好奇心だけで

働いてた、だなんて言い切れないしな!」


「じゃあ

  地図でも買って次の町にでも行こうか。」


「まあ、そうですかね…

残念といえば残念ですが。

地震も噴火も止められませんし。あはは」


話がこうしてぐだぐだと進まないうちに…

昨晩泊まれなかった階につながる

階段の方から聞き覚えのある二人組の

会話が聞こえる。


「あらやだ、連絡の件忘れちゃってたわ♡」


「またですか…、今回くらいなら全然

問題は無いと思うんすが。あの山の廃坑道

買収って何考えてんでしょうね、あいつら。」


「そうね、…と。おっはよー♡

本、回収しに来ちゃったわよ?

どう、何か分かったかしら?」


「あ、さっぱりです、」


「そ、じゃあ私たちは仕事が

あるから行くわね♡

    次こそは、気をつけなさい、」


やはり、教えてはくれない、

「次?」


「小僧、またな!」


「あ、本、どうぞ」


「はいどうも♡さようならね…

         また会える事を…」


あの二人組はまたも急に現れて

そして去って行った。飛躍するかのように。

結局名前、聞きそびれたな。

裏社会のヒトを自称する人の名前を知った

ところで王国やらギルドみたいなやつ、らに

垂れ込む以外する事は無いんだが、

そんな事をする気にはならないし。

それどころか、オネエは

俺に何を伝えたかったのだか。ヒスイちゃんを助けたからって俺がこの町を助けられるだなん

て思うほど思考が飛躍する人ではないと思うの

だが。それ以前に、この町にあの人たちの

大切なものでもあるのだろうか。


「さて、私たちも行きましょうか!」



「あ、ああ。次こそ、そうだな!

何処かで、乗り物にでも乗せてもらおうぜ!

ついでに次の町の話でも!

こうして点々と放浪していくだけで、退屈なん

てないもんな!」



「そうだな、リト!」

そうは言ったが

リト言葉は元気そうな割にどこか心配そうな顔、してるんだよな…。そりゃリトと工場のことを不審がってる人はいるだろうけど一応

地元ではあるんだもんな、

でも旅は旅だ、ついて来ると言ったからには

そんな後悔は少ないだろうが。




無事に地図を買い終え、

こうして町を歩き始め数十分、とうとう

端の端まで来てしまった…

もう、人いねぇ…


「ええ…歩き?」

確かに昨日より人に避けられてるようには

感じていたがここまでかぁ?普通。

だからリト悪いやつじゃねえのに、

でもそう思ってるような奴らに

助けを求める、というのも無いな…


「そうですね、地図屋の店主さん

が言うにはここから半日と言ってましたので

夜には着くと思いますが、

近くに火山も滝もありますよ。

森もありますよ。大自然ですね。

この天気ならお散歩日和です…」


「うん、そうだな!きついな!」


「ええ…出られないの…?」


「このままこの町が終わるのを待つか!

あははっ!って…いつ終わるんだ?」


「あ、確かに…もうまもなくとは聞いてたが

何も分からん、」

分からないことだらけだぜ…


「で、でも、ここから入ってくる商人の方にでも頼めば何処かしらには乗せてくれると思いますよ?放浪の行き先なんてどこでもいいんですから!」


「お、そうだ!天才ヒスイちゃん!」


「なら、ひたすらこの町の入り口で待機だな!」

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