第13話 余裕はあるがエスケープ

「よーし、案内係リト!おすすめのお店は?」


「気に入ってくれるかはわからないが、

           まずは服屋だな!」

そういえばドタバタしてて着替えてなかった…

それ以前に無かった、

リトに関してはしっかりと準備してから

一緒に来たわけなのだが。俺とヒスイちゃんも

服、買わないとな。


「レッツゴーですねっ!」


そんなわけで、俺たちは

朝の宿を出て、服屋に向かった。


町の通りでは多くの人で溢れている。

なかなかに活気のあるところだ。

ところどころでは、リトの工場の

話が持ち上がっているように聞こえた。


煙がどうとか、山がどうとか、

リトの話をしている人も居る。

変人。奇人とそう呼ばれていた

リトの話を。人によっては

分かりやすくこちらを見ながら話している。

宿の店主は特に気にしているようには

見えなかったが、他の客も

そんな目線だった気がする。

やはり、工場というものは

この世界で異質なものなのだろう。


あの二人組がいたという事は距離的には昨日の町とはそこまで遠くはないのだろうか…



「リトの服もこれから行く店で買ったやつ?」



そして問題のこの男、この世界でなぜか和服なのだが。


もし、その店で売っているとするのなら

たまたまあの世界の服と

似た服ってことで片付けられそうだ。

放浪の旅に遠回りな謎解きは

少しばかり重いから、


「この服?これは工場で見つけたやつだぜ。

多分前に管理してた人のものだと

思うんだけどね…この辺では珍しいと思う。

あっ、あとちなみにこれから行くところは

ボクも行ったことないぜ!」


なんかより散らかった気がする…


「無いんですか、

 私も服には特に興味は無いので

     なんでもいいんですけどねっ!」


「あはは、ボクも服は案外気にしないな〜」


「ホントに似たもの同士だな、

   好奇心といい、この服の話といい、」

まあまあいいだろう。この俺が

あの世界での学んだ知識とセンスを

活かしてこの二人を、この、ふたりを…


「ふははは…」


「き、急にどうしたんですか…

     不審者みたいな笑いを声出して」


「いやぁ?気のせいだが?

ほら、さっさと向かおうぜ!服屋へ。」


「あ、もう着いた。」

早いな、おい

俺が誘うとすぐ着くの何なの…


と、いうことで到着したのは

服屋モード。建物自体はいかにも古そうな

ものだが、店内は最近リフォームしたかのように小綺麗で、清潔感を感じる。

「いらっしゃいませー!」

高音での出迎えが聞こえた。

服屋の店員さんってどこでも元気そうだよな。


「そんじゃ、服選びに洒落込みますか。」


「うちにそんな洒落られるようなものがあればいいんだけどねぇ。」


「うおっ、店員さん⁉︎」

年配の女性の方だった。

年取ってもあの高音って出せるのか…


今の二人の服装といえば

リトは白い死装束みたいな着物に刀。

しっかりと武器を身につけてくれていて

ありがたい。ヒスイちゃんは

茶色のフードに黒い服。

材質としては良さそうだが、

いかにも逃亡者って感じだ。

目に見える幼さゆえに、

俺ほど不審者らしくは見えないが。


「それはともあれ、エスケープの服って

変わってるよな。」


「あ、え?」

今頃か!?俺、こっちの世界帰ってきてから

初めて言われたなそれ!

確かに異世界の服のままであるのだが。

パーカーにジーンズだもんな…

なんで今まで誰にも言われなかったんだか。

自分に服装にも忘れるほど動き回ってたし。


「まあ、そうだよな。」

と、改めての服選びに入りまして。


「これとかどうでしょう!」

白黒のストライプの服装…

囚人服みたいなやつ、


「これもいいんじゃないか?」

濃い黄色のズボンに、明る過ぎる赤の上着。

道化師みたいなやつ


「………」



「よしっ!お前らぁ、

     俺に選ばせろくださいっ!」

あの流れ通りの服のセンスだったようで…

俺も、言ってみたはいいが、



        数分後…


「ちったあ、マシになったな。

       なった、よなぁ?…」

と、無事に服選びを終えました。


「これが、服…」


「初めて着ましたね、服という物を」


「君たち服、ちゃんと着てたよね!?」

ヒスイちゃんの服は

優しめを緑を基調とした動きやすい服装を。


リトには普通に物騒な刀を少し隠せる

くらいの大きめの上着を一応…


そして、俺は

Tシャツに長ズボン。

至ってシンプル…


結果として

二人の服のセンスも変わってたが

対して自分自身の選択も

平均的極まりなかったようで。


会計のお時間です。  それではせーの!



      「「リト様!」」



「あ、ああ。金は任せろ!

        会計は任せる!」


「任された!」

会計くらいはしないとな、


そして金を払いましての、

「はい、どうも〜!」

の軽快な一言と共に、小さな声でその店員さんは顔を急に近づけて。

「昨日から急に山から煙が出なくなったって

聞いたんだけど、お客さん、同行者の人だろ?気ぃ付けときな。」との、忠告を受けた。

気を付けるって何にだかと、言いたいが、


町の人、分かりやすくリトのことを…

まあ、いいか。どうせ暫くすれば

出るわけだし。さっさと済ませよう。

やることだけやって去ろう。

   

こんな感じで、怪しげな道具屋、武器屋などなど…を回っていき、気づいた頃には再び日も

暮れはじめていた。


あ、書店行ってねえ。

まあ来いって言われてた訳じゃないから

行く必要は特に無いだろう。多分!


そして、現在宿屋前


「また、ここに泊まりますか…」

前回のお隣の方の件もあって

少しはばかられるが。


「ところでリト、残金ってどのくらい…?」


「あと2、3日、ご飯食べれるくらいだな!」


「……ま、じですか?」


「ああ!余裕はあるが相当ピンチだ!」


旅に金銭問題がうまくいくわけがなかったようで…宿泊代ってこわい、

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