第9話 そんな薄情な…エスケープ
士気が高まり
行き先を考え始めたその数時間後、
俺たちはなぜかリトの地下工場
にて、労働していた…。
ちなみに補足として言わせてもらうが
無賃労働だ!最高だぜ!ブラック大好き!
いい感じに旅に出る流れだったのになんで、
働いたら負けとは言わないけど
働きたくは無いのに…
場所はあの落下したカルデラの地下にあるリトの工場。
彼曰く5年ほど前に見つけ、3年ほどかけて
独自で再稼働させたらしい。なにやらところどころで
近未来的なデザインの機械のようなものが魔力で稼働している。その近くで
一体何を作っているのだろうか。
そして、
「これ、いつまで続けるの?」
と、疲労を感じ始めた俺は言う。
そう、その労働とは、
無数にいる
既に体が疲れている人間には分が悪い戦いだ。
「
と、言った具合に広大な工場の中でリトの作った逃げる労働者達をひたすらに追いかけて起動停止させるという途方も無い鬼ごっこに興じていた。…興じていた?
無表情で逃げる小型の工場のマスコットたち
「とあっ!せいやっ!はっ!
つーかーまーらーないッ!
とわっっっつ…」
あ、ヒスイちゃんがつまづいた。
なんせコイツら無駄にすばしっこい。
「ああっ!おわらねぇ!」
「あははっ!ボクも限界…」
「助けてください…」
そして、遡ること数時間前───
リトがぽつりと放った一言でこの労働は始まった。
「アテもない放浪の前にちょっーとだけ時間もらっていいかな?」
「俺はいいよ。」
出発の準備くらいはあるだろう。
「私も全然ですが。」
「それじゃあ、ボクの工場の整理を手伝って欲しいんだけど。」
「うん。」
流石に仲間だもんな。工場か〜大変だな。
「いいのか⁉︎本っ当にありがたい。少し大変になるかもしれんが二人がいてくれれば心強い。会ったばかりだがな!あははっ」
「そうだな、仲間として応援、させてもらうよ!」
「そうですね、頑張ってくださいっ!」
お腹も空いてきたし、流石に人里に降りて
飯でも食べに行かねば。労働は勘弁だぜ。
ここは流れに任せて逃げさせてもらう…
「それじゃ、また後で合流でいいか?」
「そんな薄情な…
昼飯も用意してあるんだぜ?金も取らないんだぜ?あと一体どうやってここから人里を探しに行くんだ?」
うっ…痛い所をついてくる。
だが、俺にもそれなりに考えがある。
残念だが、面倒な事はしない主義でね
「いやぁ、またスキルでぶっ飛んでどっかの町に墜落しようかなって…」
近くに湖もあるし突き落としてさえ
もらえれば一気に飛べるし完璧か?
折角新しい技を使えるようになったんだし、
是非使っていきたいんだけど
「…ふむ、リトさん!何をお手伝いしましょうか?」
あれぇ?だめなの?一瞬で手のひらを返されたんだけど、クセにならない?思いっきり投げ飛ばされるの、ヒスイちゃんを見るにこの案は論外らしい。
「んで、彼女はそうらしいど、
エスケープは?」
「はい…一緒に地下強制労働施設に
入ります…」
あんな事言ったけど一人じゃあ無理ですわ…。
流石に、手伝いくらいはしてもいいだろう。
なぜだか大分助けてもらってるわけだし
「何その名前からして
行きたくなくなるような施設。
ボクの工場そんなひどいところじゃないぜ…」
「まあ、仕事としては今働いてる
「あのなんかちいさくてかわいいやつ
ですか?」
見るからに言えるのはそうなんだけど。
リトの部屋の窓からは工場一面が見渡せる。
そこで働いている
全体的になんか丸っぽくて、ゆるキャラみたいな見た目をしている。これは、リトのセンスだと思うが。普通にかわいい、
「そうだよ。ボクがいない間にあの子達に何かあったら困るからね。それだけ!」
「なら、いいか。」
「そうですねっ!」
「おっ、捕まえたぞ〜。あはは〜。」
「私もやりました〜」
「上手いなふたりとも〜」
と、元気いっぱいの始めたての頃。
俺達は、和気あいあいと異世界には似つかわしい謎の工場で笑顔で鬼ごっこをしていた。
昼飯は食べれる、
つまりは、惨状である。
ヒスイちゃんがもう、いかにも死にそうな目で
「リトさん…アレ壊してもいいですか?」
そして俺はいつも通りに、
「俺、昼飯なしでいいから
バックれてもいい?」
「うん、それはむり。」
自分で限界って言ってたくせに…
俺家出てからまだ
24時間も経ってないんだけど
「あの、ご飯食べてから続きやるのじゃダメですか…?」
全員に明らかに疲弊の色が見える。
「そうだね、
昼飯を食べ終わったら続きでもやろう。」
そして、無事に食べ終わり作業が再開した。
休みの体感時間が本当に、一瞬だ。
ブラック企業という言葉を聞いたことがあるが
それよりはまだ、マシなのかもしれないが。
旅に出る前からここまで疲れる必要はあったのかと彼らの背中
についている起動停止ボタンを押しながら感じる。このボタンを押すとさっきまでなかなかの速度で逃げ回っていたやつらも一瞬で止まる。傀儡というよりも最早、あの世界のロボットに限りなく近いのかもしない。
といった具合に見ている側も疲れるような鬼ごっこを終え、次こそ、
無事に旅に出るのであった。
その頃、これから向かう町により面倒なアイツが待ち受けていることも知らずに…
「飛んだの、このあたりだと思うんだけど、
どこにいるのかしらねぇ。…あの子達♡
忘れ物届けてあげたいんだけど…」
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