何処へ向かおうエスケープ

第10話 無いんだがな!エスケープ

後片付けが終わった頃にはもう既に日も沈んでいた。工場から出たと同時にあの湖と一緒に月が空からご挨拶をしてくれたような時間帯だ。すっかり霧もなくなり、綺麗に浮かび上がる星々を見て、そのまま下の町へと下った。意外と近かった…逃げれたのに…なんで真面目に動いてしまったんだか、



「みんなお疲れさまー!」


「やっと片付きましたね。」


「ついに、放浪できる…」


「おにーさんはクラゲですか!ははっ」


と、無事にただただ面倒だった鬼ごっこも終わり、今は3人で町の宿で楽しく夕飯を食べている。無一文の俺とヒスイちゃんの分を払ってくれるのはもちろん元工場経営者のリト様。



唯一収入源を確保していた仲間が、先導して金を払ってくれる。これで暫くは安泰だ。この働かずに放浪できる喜びよ…


結局何を作って何を売ってたのかは工場の中を走り回ってもわからなかったが。あの世界で見たものと僅かに外見の構造が一致するものが確かにあった。


「それはともあれ、ありがとう。俺達の財布。」

  


「ん、なんか言ったか?」


「いやあ?別に。すまないな。何回もタダ飯させてもらって。」


「どういたしまして、だ。つかこっちのほうが嬉しいくらいだぜ。あの工場に長いこと居て、暇で暇でしょうがなくなった日に、

        二人に出会えたんだらな」


うわあ、コイツ良いやつだな、すごいいい人のオーラが漂ってる……一般市民の風下にも置けない善良な何かとして尊敬させてもらおう。


「それにしても、よくあの工場動かそうと思ったな。普通あんなの動かそうと思わないぜ?しかも5年間も使って」


「おおっ!よく聞いてくれたな。その質問をずっと待ってたんだ。待ってただけだから返せる言葉はまだ特に無いんだがな!」

堂々と言われましても…


「無いのかよ…。」


「あのう、何と言いいますか今更なんですが、?何かを作っているというのはわかったのですが、私のスキルを何回使っても出てこないんですよ…」


「………」

あ、リトが黙った。そして、

「あ、しまった。この世界には工場が無いんだった。」


俺もミスった。リトがあまりにも自然に工場って言葉を使うものだからすっかり忘れていた。


俺は、以前に見たことも入ったこともあるわけで知ってはいたが。リトは何故、


実際、あの世界で科学、工学などと呼ばれる分野に限りなく近いものは複数存在するが、よく見てみれば全く違うものに行き着き、向こうの世界にはない魔力というものが働いている。

そんな中、この世界でそれらを利用した形跡の残る工場という言葉を知るのならば…



「っておい、分かりやすく黙るなよリト。お前が説明せい。」


「………あ、ああ。うん。いや、分かったよ。話すから。その前にスキルで検索かけまくってるヒスイちゃんをとめたげて、」


「工場、工学、科学、機械、…

…あ、魔工文明いや、でもこれは確か架空で…ぶつぶつ…」


二人とも大丈夫かなあ、俺も含めてまだ話していないことは山ほどあるのだが。

「よ、よしヒスイちゃん一回落ち着こうか…。リトが話すみたいだから。」


「あっ、また我を忘れて…すみません。お話、聞かせてもらいます。」

互いに軽い自己紹介はリトの部屋で済ませておいたものの、やはり頭の中の本を読み漁っている様子を見るのはそう簡単には慣れないらしい。現に俺も見ていて違和感が残る。



「まず、2人に聞きたいことがある。


      君たちは、異世界を信じるか?」


話を聞こうと思ったらピンポイントで答えにくい質問が返ってきおった。これは、どう答えるのが正解なんだ…。行ったことがありますなんて、言うべきかは考えかねる。俺は、周囲から逃げていたこともあっていつか別の世界にでも飛ばされたい、と願い、そしてまた戻ってきたのであるが。一時の夢のようでもあったがあれは事実なのだ。だがそんなことを考えている俺なんかよりも早く確信を持ってヒスイちゃんは言う。


「そんなの当たり前じゃないですか。」と。


まだ、今は無難な回答を

「俺もあると思うよ。」


「あはは、そうか。変わってるんだな2人は。

ボクもあの場所をずっと調べてて変人扱いされてたけどそんなことをしてくる人たちを自分なんかよりは到底まともな人間だって思ってたし。周りの人間が言うには」


 

「実際変人の」


      俺もある。」

「「「自覚は あるよ。」

     私もありますね。」


きれいに重なった。どうやら俺達三人は自覚ありの変人の集まりらしい。普通に別の世界が在ると確信できるのは、どうかしているのだろうか。魔法のない世界が存在することが。



「それで、その異世界の話だが、

あの工場の由来がその世界にあるんじゃないかって思っててね。ある日に急に思いついたんだよ。工場って言葉を。思いついたとは違うか、前から記憶の中にあったような気がして、思い出したのかな?だから、気になってしょうがなくて誰もわざわざ近づかないあの山に籠って

復旧させようとしてたんだぜ!」



好奇心かわったひとですねっ!」



「あははっ。それは、君も同じだろう!」


なんだろう、この好奇心が変な方向に向けば

これはこれは厄介なことが起こる気がする。

いや、そんな気しかしない…



場所は移り、

そんなことを宿のベランダで考えていた…。

隣の部屋にもしっかりとベランダがあり、

その場にて憂鬱そうに

とあるオネエが外を眺めている。


「俺は一体何をしているんだろう。ただの現実逃避の放浪のつもりだったのに…」


「どこかしら、ワタシの探し人は…♡」

と…

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