第32話

「これ、資料です」


「ああ、ありがとう。目を通させてもらっても?」


「構わん。……まぁ、それを見る限りはこの話から抜けられなくなるが?」


不安を煽るようなその言葉に、覚悟の上だと告れば鼻で笑われる。ニコニコと見つめていれば、呆れた色を宿したその瞳が逸れたので流させてもらい、そのまま資料に目を通す。


そこに記載されてるのは、朝比奈組の情報。

そして、『あの時』の事も細かく記載されているのに驚き息を飲んだ。


待ってくれ、これを紅華ちゃんが?ということは、


「……ねぇ、これ。もしかして、君達は……『碧葉』の死因を知ってるの?」



微かに揺れた紅華ちゃんの瞳や吐息だけで、肯定しているようなもので。



「……仇討ちに行こうなんて、」


「いつか、とは思っている。だが今はその時じゃない」



静かな声で言葉を落としつつも、こちらに向いた瞳に隠しきれない炎が宿っていて、思わず気圧される。

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