第29話
────三貴視点
あれから数日。頭のアザを隠す包帯の取れた珠優が退院した日の、夜。俺はと言えば、『あの日』を境に来る事の無くなった場所へ訪れていた。
「紅華ちゃん、朝比奈が絡んでるって?」
「…ああ」
どうして『そこ』に用があったかなんて、紅華ちゃんにこの話があるから以外入れてもらえる理由が無くて。
「火蛇が最近活発になってるのは裏で朝比奈組が絡んでるからだ。組のモンが紛れ込んでやがる。……火蛇自体はそこまで強くない。だが、元々火蛇総長や幹部達だけなら今の樺月と同等…それ以上。それは感じてたさ」
「…うん、そうだね。でも、最近のアレは異常だ。数が可笑しい」
「…それは、朝比奈組が人員を回してるんだよ」
その言葉に俺は、やっぱり…と言葉を落とす。
紫保ちゃんが戻ってきてお茶を机に置くと同時に、紅華ちゃんが爆弾発言。
「…朝比奈に出向く」
「え…?」
「朝比奈の今の頭には釘を刺しとかないとな」
「ちょ、それは…!」
思わず、席を立ってしまう。
「…流石に言いたいことは分かる。
『あの人』を殺した朝比奈組に私が出向くのは危険だと言うんだろ?」
分かってるなら、何で。
「……分かってるだろ?私は、殺られっぱなしは性にあわないんだよ」
痛々しい表情で苦笑した紅華ちゃんに、俺は何も言えなくなった。
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