第17話

三貴が話してる間に、紫保は静かに席を外した。それを横目に、私は三貴との会話を続ける。



「ビックリしたのはこっち。

見回りしてたら、華狼総長サマの〝樺月珠優〟が路地裏で倒れてるんだからな」


「はは。…やんちゃのし過ぎも困ったものだ。救急に運んでくれてありがとう」


「まぁ、…他に気になることもあったしな」


 え?なんて聞き返してくる三貴に、私はなんでもないと答える。

 三貴に会ったらどうしても聞きたい事があって、それを切り出す。




「『あの子達』は元気か?」


 自然と、落ち着きのない声色になってしまったが、三貴はそこに深入りしてくるような奴ではない。



「うん。2人ともいつも楽しそうにしてる。

元気にしてるよ」


「…そう、か。…あの子達には笑っていてほしいからな」


 私の言葉を聞いた三貴はぐっと眉を顰め、私から目を逸らす。


「…まぁ、笑ってるには笑ってるんだけど、最近は華狼と火蛇との間で大変なことになってるみたいだし…なんとも言えないよ」



 それを聞いた私も、三貴と同じように眉を顰めてしまう。



「…知ってる」



 思ったより低い声が出てしまった。

 それを聞き取った三貴は、大丈夫かと聞いてくるが私はそれに愛想笑いで大丈夫と答えるしか無かった。


 だって、三貴は〝一般人〟だから。


 昔からの知り合いで繋がりがあると言っても、今は住む世界が違うのだから。

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