第12話

「紫保」


 私の投げかけた声に紫保はニッと笑うと「大丈夫よ、救急車は呼んだわ」と答えてみせる。それを聞いた私は流石の紫保に満足げに頬を緩ませる。


「ふ、流石の一言に尽きるな」


「光栄な言葉ね」



 華狼の総長が殴られ倒れ込むのを見届けた鉄パイプを持った男達。彼等は、くすくすと楽しげに笑う。

 そして、無防備な樺月の体に再び鉄パイプを振りかざす。



 その時聞こえた、コトバ。


「〝満(みちる)〟さんの遊びは相変わらず楽しいなぁ」


「ハハッ!ほんとにねえ?〝朝比奈(あさひな)〟さんは愉快な人だよぉ」


 何処か狂ったようにクスクスと笑う、楽しそうな声色の男達。



 瞬間。樺月に鉄パイプが振りかざされ、殺ったと誰もが思った。



────ガッ!!!!



 …だが、それは今、私の手により阻止されている。目を見開き驚く男達へ、私は冷ややかな表情で言い放つ。



「…さて、そろそろ…



 ────介入させてもらおうか?




 お前達は不運だな、我ながら同情さえするよ。


 ────私に〝朝比奈 満〟の名を聞かれたのだから」

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