失敗

「お前何か疲れてねぇ?そんなに昨日の顔合わせ疲れたのかよ?」


 昨日の出来事でなかなか眠れなかった僕は思った以上に顔色が悪かったらしい。悟に心配されてしまった。




「いや気のせいだろ、昨日の顔合わせも本当にすぐ終わったし。それにしてもあの生徒会長はパワーがスゴいな、圧倒されたよ」


「あー確かにあの人はスゴいよな、でもあの会長のフォローが出来る大地もスゴいけどな」


「悟は副会長と知り合いだったのか」


「おう、俺弓道部に入ってるだろ?部の予算の話してたら意外と気が合ってな」


「そうだったのか。」


「あーあと会長と副会長は幼なじみだぞ。学年違うにしては仲が良すぎると思わなかったか?」


「同じ生徒会で長いことやってるから出来る距離間だと思っていたらそういうことか、同じ幼なじみ同士でもえらい違いだな」


「何言ってんだよ。これから頑張るんだろう?」


「だな、今日も張り切っていきますか」








 午前の授業が終わり昼休みに入ったので悟と二人でご飯を食べていると珍しい来客が来た。




「凪野くんいるかな?」


 その台詞にまた奏関連かと思い、逃げる準備をしたら悟が大丈夫だと言って僕を席に戻した


「大地か、どうしたんだ?」


「そうか。凪野くんは遠山と付き合いが長いんだったな。本題に戻そう、今日は今度行われる一年生歓迎会の打合せに来たんだ」


「それは生徒会メンバーと各委員長、副委員長が集まって決めるんじゃないのか?何でわざわざ光の所に?」


 僕が疑問に思ったことを悟が代わりに聞いてくれた。


「俺もそう考えたんだが五組の鈴木くんがまず委員長達だけで意見をまとめてから話し合いにしたいと言ってな。まぁせっかく集まってもいちいち意見を最初から考えてるようじゃ時間がもったいないから許可したわけだ」


「そしたら光はのけ者じゃねーか。普通委員長同士の話し合いに参加させるべきだろ」


「今日で他のクラスの副委員長も決まる。そうしたら副委員長同士での話し合いが出来るからね。各委員長、各副委員長が話し合った意見を生徒会がまとめていく、という形に当分はなりそうなんだ。そんなわけで今日だけは俺が凪野くんに概要だけでも伝えに来たってわけ」


「それ考えたの五組の鈴木って言ったっけ?確かに効率的ではあるがあんまり好かないやり方だな」


「それに関しては俺も同意見だ、今後会長と話し合ってみるよ。じゃ凪野くん話の続きをしようか」


「分かりました、副会長」


「あはは、別に敬語じゃなくていいよ。気軽に大地って呼んでくれ」


「分かったよ大地」


「じゃ続きから話していくよ」
















「とまぁこんな感じかな?明日に副委員長の集まりを呼び掛けておいたから今日話したこと説明しといてくれないか?」


「了解、ありがとうな」


「いやいや、おっとチャイムが鳴りそうだからもう行くわ。二人とも今度はゆっくり話そう!」




 大地は伝えることを伝え、自分のクラスに帰って行った。同時に僕と悟の間で普段ではありえない沈黙が続いた。




 そして放課後になって悟が話しかけてきた。




「今朝のお前が元気無かった原因って五組の鈴木のせいだろ?」


「いや、そんなこと無いよ。大丈夫 」


「嘘つけ。いや鈴木だけじゃないな、今の生活自体が昔と…」


「黙れ!大丈夫だって言ってるだろ!」


 いきなり怒鳴ってしまった僕にクラスの注目が集まり、静まりかえった教室にいるのが気まずくなってしまった。


「やっぱり調子悪いから保健室行ってくる」


 そう言い残して慌ててクラスを飛び出す。






「最悪だ、悟は心配してくれたのに怒鳴っちゃうなんて…もう本当にダメだな僕は」




 特に行き先も無く学校内をふらついていると今の僕には一番見たくないものが目に入ってきてしまった。視線の先には鈴木と楽しそうに二人で話す奏の姿、僕が見ていることに気づいた鈴木は勝ち誇ったように微笑んできた。それ以上見ていることが出来ず、すぐに逆方向に走り出した。そしてこの時間帯にはほとんど人の来ない四階に逃げて階段に座り込んだ、さっきの光景が頭から離れない。誰が見てもお似合いの二人、僕では釣り合っていないという現実を見せつけられたようで暫くは立ち直れそうに無いようだ。




「頑張るって決めたんだけど。やっぱり弱いな僕」




 このままずっと一人でいたい気分だったが、そろそろけ下校時間で警備員が回ってくるから追い出されてしまうだろう。疲れたせいか異常にダルいし今日は大人しく帰ることにした。








「明日から学校行きたくないなぁ」


 夏休み明けみたいな台詞を呟きながら何とか家に着いたが、精神的によっぽど疲れていたのか自分のベッドに少し横になったらうとうとしてきた。


「あんまりいい夢は見れそうにないな、出来れば夢の中でくらい仲良くしたいんだが」


 そんな事を考えているうちに意識が途切れていった。

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