おやすみ
「奏?こんな時間に急にどうしたの?そこの部屋のカーテン開けるの久しぶりだよね?」
奏は黙ってこっちを見たままでこっちも少し困ってしまった。
「奏?本当にどうしたの?」
「勘違いしないでね!」
「えっ?」
「だから勘違いしないでって言ったの!副委員長に選んだのは他の人達の下心が余りに分かりやすかったからで君を許したわけでは無いんだから」
あぁそう言うことか、急に何の用事かと思えば今日の副委員長決めのことね。どうも彼女は副委員長に推薦したことで僕がもう許されたものだと勘違いしてしまったと思っていたみたいだな。いや、そうだったら僕も嬉しいだろうけど流石にそこまで僕も単純ではない。
「勘違いしてないよ、まだ許されたなんて思って無い」
「本当に?まぁ分かってるならいいのよ。あとこっちが指名しておいてなんだけど、意外と学級委員は面倒よ」
「イメージからして何となく想像はついていたから大丈夫。せっかくの奏の推薦だし、奏の足を引っ張らないように頑張るよ」
「別に『頑張るよ』だけでいいじゃない。何でいちいち私にこだわるのよ…」
何か奏が呟いたようだが近いとはいえ聞こえる声の大きさでは無かった。
「奏、今何て言ったの?」
「うるさい!何でも無いわよ!」
「えーそんなに怒らなくても…」
「もういいわ、とりあえず用件は済んだし私はもう寝る」
「そうか、おやすみ奏」
「………おやすみ」
そう言うと向かいの部屋の窓が閉まりカーテンもしまった。久しぶりの部屋同士の距離での会話、久しぶりに言った『おやすみ』、何もかもが久しぶりだったけど心地よかった。色々あった一日だったけど最後は穏やかな眠りにつくことが出来た。
「おはよう光!」
「おはよう悟、相変わらず朝から元気だな」
次の日になって僕たちはいつものように待ち合わせをして学校に向かっていた。
「なぁ、もしかして雪姫に指名されたってやつ?」
「あぁそうっぽいぞ、でも何か冴えないやつだな」
僕たちはいつものように学校に向かって…
「あの子が雪姫様に選ばれた子みたいよ」
「え~何か微妙じゃない?ちょっと暗いっていうか」
「もう帰りたい…」
「おいおい、まだ学校着いてねーよ!頑張ろうぜ!」
「僕はガラスのハートなんだ、心折れやすいんだよ…」
「いやいや、でも今は好き勝手言われてもしょうがないだろ?彼女と違って実績を残したことの無いわけだし。周りには言わせておけばいいんだよ、ここから結果を出していけば!」
「ありがとう悟。あ、あとちょいちょい聞こえてくる雪姫ってのは?」
「あー雪村を崇拝してる連中がそう呼んでたのが周りにも浸透してきたってとこじゃないか?見た目も良ければ頭もいい、その上性格も完璧だし、まるで絵本に出てくるお姫様みたいってことで雪村と姫、雪姫になったらしい、ほら、肌も雪みたいに白くてキレイでぴったりじゃないか」
見た目と成績はともかく性格はどうなんだろう…まぁいいや。
「とりあえず学級委員をやる以前に周りの対応の方が面倒な事になりそうなのは分かった」
「俺は頑張ってしか言えないからな、所詮は他人事だ」
「だよな…あ、教室着いた」
僕達がというか僕が教室に入ると少しざわめいた。教室でもこんな反応か、これは本当に精神的にキツいな。でも我慢するしかないか、そんな事を思っているとクラスメートの一人で、僕達と奏の共通の友達の
「おはよう~何か大変な事になってるんだ、さっきから色んな人が『凪野はいるか?』って来てるんだよ~」
「えっ?何で?」
「さぁ?あーでもみんな帰り際に『あいつは雪姫様のなんなんだ』って呟いてたよ~」
「それだ!」
「急に叫ばないでよ~びっくりするじゃない」
「あ、ごめん…じゃなくて!」
「だから急に叫ばないでって~」
「いや、もうこのコントみたいのはいいから!原因それじゃん、一刻も早く逃げないと…」
「どこに逃げるんだ?」
横から悟が話しかけてきた。
「諦めて話くらいしてやれ、別に付き合ってるわけじゃないんだし。どこかに連れていかれそうになったら俺もついてってやるよ」
「悟…本当にありがとう!」
「男の子の友情は素敵だねぇ~」
何か清水さんのほんわかした声が隣から聞こえてきたとき別の声も聞こえてきた。
「凪野光ってやつはいるか!?」
てか本当に教室に来てるのか…
「はぁ~もう朝から疲れてきたよ」
「おぉー凪野くん大人気だねぇ~」
「ちょっと清水さん黙ってくれるかな?疲れてる原因の半分は君だから」
「えー凪野くん対応が冷たいよ~」
確か今日の放課後は各クラスの委員長、決まってるクラスは副委員長も参加の生徒会メンバーと合同の会議があったよな。放課後までもつかな…
「ねー凪野くん凪野くん。ほら何かゴツイ人が来たよ、こっち睨んでるよ。面白いね~」
とりあえず放課後の心配をする前に隣の清水さんを黙らせることにしよう。
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