私は彼を推薦します



 HRは滞りなく進み、時計を見るともう終わりになりそうな時間になった頃




「そろそろHRを終わりにしたいんだが、最後に委員長だけ決めておきたい。挙手制にするとなかなか決まらないと思うから推薦の形にしようと思う。各々推薦する人の名前を紙に書いて教卓の上に出してくれ」




 また最後に面倒な事を、さっさと書いて帰りの支度でもしよう。そんなことを思いながら適当な名前を書いて教卓の上に出してきた




「なぁ、お前誰にした?まさか俺にしてないよな」


「お前何かにするわけねーだろ!」




「ねぇねぇ誰書いた?教えて教えて」


「内緒よ!そっちこそ教えなさいよ」




 委員長決めるだけで何でこんなに騒げるのだろうか、いや僕のテンションが低いだけか。単純に自分じゃなければ基本誰でもいいんだけどね




「よし、集計が終わったから発表するぞ~我がクラスの委員長は…」




 みんなが一気に静かになって耳を傾けている




「雪村奏だ。雪村、前に出てこれからよろしくでも頑張りますでも何でもいいから一言頼むわ」




 委員長が奏と分かるとクラスが急に騒がしくなった


「雪村さんが委員長なら副委員長立候補しようかな!」


「ずるいぞ、俺も立候補する!」


「俺も俺も!」




 流石にうるさくなったのか担任が一喝する


「騒がしいぞお前ら!今から雪村が話すんだから静かにしろ!」




 クラスが静かになってから奏が喋り出した


「このクラスのクラスの委員長になりました、雪村奏です。まだまだクラスに馴染んでおらず迷惑をかけてしまうこともあると思いますが精一杯頑張りますのでこれからよろしくお願いします」




 奏の挨拶が終わり拍手に教室が包まれる。本当に何でも出来るんだな




「それじゃ委員長も決まったことだし今日はこれで終わりにする、お前らが気になっている副委員長は別の日に改めて決めることにしようと思う。じゃまた明日遅れないように…」


「ちょっといいですか先生?」


「何だ雪村?」


「委員長はみんなの推薦で決まりました、なら副委員長は私の推薦で決めていいですか?」


「別に構わないがもう誰か決まっているのか?」


「はい、決まっています」


「分かった。それを発表して今日は終わりにしよう」


「ありがとうございます、では発表します。このクラスの副委員長になってもらう方は…」




 突然の発表に同様しながらも、みんなが、特に男子が祈るように奏の方を見つめている




「凪野光くんです。私は彼を推薦します」




「えっ?はぁぁ!?」


 余りに大きい声を出してしまいクラス中の注目を集めてしまった




「どうだ、凪野?やってくれるか?」


「いやーこれはちょっと無理で…うっ、分かりました。やらせてもらいます…」


 断ろうとしたらものすごい勢いで奏が睨んできた、何がなんでも僕にやらせるつもりのようだ




「おいおいどうなってんだよこれは?」


 悟が驚いた顔で聞いてくる


「僕が一番聞きたいよ…」




 去年までは特に目立つこと無く平穏に過ごしてきた学校生活は、幼なじみと同じクラスになったことで平穏には過ごせなくなったことをクラス中の視線を浴びることで自覚せざるをえなくなった




「本当にこれからどう生活していけばいいんだよ…」


 こっちが睨んでも全く表情を変えない幼なじみの顔を見て、僕はため息をつくことしか出来なかった


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