久しぶり
教室について周りを見渡してみると、大体半分くらいの人数が集まっていた。
「おっ、雪村さんじゃん!同じクラスになれるとかラッキー!」
「相変わらず可愛いよなぁ~」
騒がしい教室の中で聞こえてくる会話の中に彼女の名前が頻繁に出てくる。
それは仕方無いことで、中学の時から成績が良いうえにルックスも良く、絵に描いたような優等生だった彼女は高校でも注目の的だった。もちろん羨望だけでなく妬みや嫌味を言われることが中学時代より増えたが、それでも負けることなく中学同様、もしくはそれ以上の結果を出してきた彼女に面と向かって嫌味を言う人はほとんどいなくなっていた。
「しっかし人気だよなぁ奏ちゃん、去年は違うクラスだったしここまでスゴいとは思ってなかったわ」
呆れた顔で悟が僕に話しかけてくる。
「仕方ないだろ、あんな完璧な人が人気無い方がおかしいでしょ」
僕の返事にそりゃそうかと悟が笑う。
「よし、じゃ話しかけてくるか。中学以来あんまり会ってなくて話す機会も無かったし」
「は!?止めとこうよ、別に今行く必要ないだろ?」
突然の悟の提案に僕が動揺しているうちに彼女の席の前まで引きずられていた。
「久しぶり奏ちゃん、相変わらずスゴい人気だね」
「止めてよ遠野くん、そんなにスゴいことしてないわよ」
「またまたご謙遜を~」
悟と彼女が笑いながら和やかに話をしているのを見て、僕も話しかけることにした。
「久しぶり奏、元気だった?」
「久しぶり『凪野くん』、私は見ての通り元気よ。他に何か用事でもあるの?」
「…いや、何でもないよ。そろそろHR始まりそうだし行こう悟」
「お?そうだな」
元の席に戻ると悟が話しかけてきた。
「まだあの頃から変わってなかったんだな、俺はてっきり春休み中に元に戻ったものだと思っていたよ。余計な事をして悪かった」
「いや、同じクラスになった以上遅かれ早かれ奏と話さなければいけない機会はあったはずだよ。それが今日だったってだけの話だ」
あまりに悟が申し訳なさそうな顔をして落ち込んでいるので僕は慌ててフォローする。
「でもさぁ…」
「じゃあこうしよう、今日の帰りに遊び行ってその時に何か奢ってくれよ、それでチャラだ」
僕の言葉に悟は嬉しそうに頷いた。
「よし分かった。どこに行くかはHR中にお互い考えとこうぜ」
「わかったよ」
僕が返事をしてすぐに先生が教室に入ってきてHRが始まった。
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