辛いときポムポムプリンと言ってごらん。ポムポムプリン、ポムポムプリン

気付いてよ、今日のわたしは地面から3ミリ浮いてて前髪も切った


甘い酒しか飲めないと云うきみのようになりたいホッピーは白


にくづきは肉のことですでも知って私の腰に月があること


路地裏の乱雑なシールに導かれ世界を救う夢想をしている


ぽむぽむとうたっておどってのっかってあしたがくるまでいっしょにいるから


この部屋で終わっていくのを想像し、それもいいかとチンするカレー


iPhoneが突然知らせる十年前の今日のわたしのしあわせな顔


ならせめて世界が終わる日が来たらぼくとスパイスカレーを作ろう


お尻からクリームはみ出る 恋破れ泣きながら食うシュークリームも


あとがきを立ち読みしている人に向け書いてる作家、ちょっぴり苦手


あかさたなはまひまらやってヒマヤラはぼくたちの心にいつでもひそんで(ひっそり)


また今度(そのひと言がないままにサヨナラしたからずっと不安だ)


瓶詰の地獄を読んだ恋人の鼻にしっかり皺がよってる


閑静な街をつんざく叫び声 根子整体は上級者向け


適切な人生だったほんとうはあの日あなたと逃げたかったな


君がネコと呼ぶ生き物は何なのだ少しぬめってほんのり光る


触感は辛うじて君のままだけどタバコのにおいが染み付いている


小さめのしあわせだねって微笑んだ君はウルトラ無敵超人


あの鳥が過去からタイムトラベルをして来てないとは証明できない


いつまでもあなたを守ってあげるから、ぬいぐるみがそう言ってる気がして


みんな同じワンピース着て髪巻いて澄ました頭にふと鯖刺さる


さめざめと私の代わりに泣いている神に中指立てる 晴れろ


初経の日履いてたパンツに描かれたパンダよ永遠にわたしを守れ


君の下位互換に過ぎないわたくしのそばでも犬はしずかに眠る


すこしずつ消える消えゆくしょんべん横丁ことばが消えて思い出になる


冬の日にわたしのなかで画家は死に、描きかけのままで残されたハツ


エビ食わずピンクになれないフラミンゴみたいに馴染めぬ三年二組


しってますか切手のカロリー、魂の重さ、自分のこころ


ごめんやけど人生はそんなオモロないだから言葉を散りばめてんだよ


いつのまにきみだけ大人になっていきNISAの話ばかりの散歩


屍体など埋まっていない庭ですしご安心してお眠りください


風邪ひとつ引かない身体に生まれつきそれでも心配されたい秋だ


電源が付かなくなったスーファミを棄てられずにまた年が暮れてく


外は雨(これは心理の隠喩でも何でもなくて私はげんき)


死にたさを東京中から集めたらムー大陸も消せるだろうな


さとるくん、公衆電話がなくなってそちらの世界は落ち着きましたか


わたしコスパのいい女ですどうですか吉野家、サイゼ、野草も好きです


シャンパンが見せた夢だし泡のごと消えてしまった九月の男は


神様がくれた偶然 二人きり帰る夜空にかかる満月


大声で泣きじゃくりたい大人としてゲリラ豪雨は都合がよかった


あまりにもリアル脱出ゲームを極めし者、脱獄夢見て投獄されん


気持ちまで残らないから写真はいい友達のように笑顔で映る


ああここが夜と朝との境界線 紫煙二筋空へと昇る


幸せになれるだろうか一人くらい私のファンが出来るだろうか


勇者しか抜けない剣と嘯かれ終わらぬ作業の口火を切った


木洩れ日に隠れん坊の鬼が消え(消えたのはぼく? それとも君か?)


カレー屋の跡地に出来る王将を君と切なく見つめたかった


高すぎる税金払ったムシャクシャでエロいパンツを三枚ポチる


筆箱で小さな神を飼っている消しゴムみたいな見た目でくさい


身体から詩情が蒸発していって渋谷の街に本屋を生やす


数学のノートの隅にきみとした絵しりとりの痕跡のこる


デパートでお子様ランチが食べたいの、選挙は投票する歳ですけども


学年でいちばん地味で暗かったあの子は二十歳で二人の母に


I was born 生まれてしまった原罪で恋はこんなに苦しいのだろう


彼女ベジタリアン・ガール 物言わぬ緑のいのち咀嚼している


夏だからなんでも出来る気がしてる男子が両手でアサガオ抱え


本日は悪魔の日なので高級なポテチを抱えてオーメンを観る


はつなつの代用として飲み干したクリームソーダよ成仏してくれ


折れ破れ為す術もなく路地裏に棄てられた傘(わたしに似ている)


ご近所の主婦のあいだで流行ってる魔法少女のセミナーに行く


浴槽のへりに腰かけ神妙に泳ぐ鯖から啓示をいただく


捻挫した足で進めば精神の距離と同じ遠さの学校


もじゃもじゃがもじゃもじゃを刈る床屋にはこどもは入っちゃいけないらしい


毎日のように一緒に帰ってる君とデートで出かける海よ


朝五時の都会で途方に暮れている夜行バス処女らを横目に始発


空に住む恋人ができたその日からあまりに遠い、遠い白雲


ガス燈が残る通りを窓越しに眺める 君を待つ五分間


鮫肌の抱かれ心地を思い出し結婚前夜の夜は更けてく


ファミレスもコンビニもみなチョコザップになる草原になるいち万年前


もう愛じゃなくなったのよオムレツもしっかり硬くなるまで焼くし


これは慈雨 全部を隠してくれるから泣けよ喚けよ歩けよ乙女


東京の小さな森でもフクロウは食う寝る遊ぶいのちを繋ぐ


こんなにも愛が溢れた東京でどうして僕ら孤独なんだろう


絶対にふつうの大人になりたくない、とか言う普通のお子様でしたよ


辛いときポムポムプリンと言ってごらん。ポムポムプリン、ポムポムプリン


勝ったとて無くしたものを数えれば両手で足りず冷たい雨だ


レッサーパンダの威嚇みたいなポーズして歩くぶつかりおじさん対策


パスタ食え泣きそうなんだろ糖質と脂がお前を救ってくれる


形而下で助けた蜘蛛の数万倍潰してしまった観念の蜘蛛


本当はディズニーあんま好きくないディズニーではしゃぐ君は好きだが


ここここと冷酒をそそぐここここと素面のあなたを手を挙げ迎える


だから君、膣と子宮をあげるから私を産んではくれぬだろうか


志望校上から順に埋めていく(東京、東京…ぜんぶ東京)


いつだって忘れてしまうカクテルの名前 あなたと並んで飲む夜は


文豪もこの道を歩き時々は腹が痛かったりしたんだろうな


終わらない夏休みでも青春はどこかへ消えてしまうだろうか


ウミガメのスープを煮込むばあちゃんの生への飽くなき執着心は


俺もうここのラーメンだけでいいなんて出来ひん約束せんでいいから


終わらない夏を見ようよめくってもめくっても夏 きみがいる夏


この街を支配している時計塔 百年後にも明日は来るし


喧嘩して先にゴメンをしなかった方が豚に百円入れよう


結末が思いつかずにぜんぶぜんぶ燃やして終わる小説(はなし)ばかりだ


繰り返す人生遭難 焼き払うリクルートスーツ 狼煙として


注意して閲覧してもどうせ嫌(や)な気分になるし適当に見て


いつだって辞めれるんです仕事でも妻でも母でも人間でさえ


YouTubeショートを永遠スワイプし出会った推しも運命だろう


腹が立つことばかりだと言う君はアジフライを食べるときだけ黙る


とりあえずブチ切れてみる夕まぐれ迷子になったこと認めずに


どうしてもトイペはダブルがいい君と暮らして二年、優しいおしり


日曜はシングルベッドで更けていく読まない文庫と氷結とぼく


美しくなりたい君のためじゃなく私が天使になる儀式として


あそこでは蠅の王らが麦藁を被って(無邪気で悪を隠して)


特別な日じゃない単なる生活を繰り返すこと それが特別


バリボリと齧る人参 わたくしは何時でもうさぎになれる所存ぞ


アルデンテみたいな君にオレンジのマフラーを編む音のない夜


コーヒーの染みが消えないマグカップ卒論の時期の狂気の名残


あのひとは日記みたいにうた歌い生きるみたいに話を紡ぐ


六月の霧雨けぶる薔薇園はぼくらのあしたみたいだったね


思い知る きみが人格排泄し抜け殻の身体抱いてもむなし


野良猫と並んで君を待っているときに頭にふと鯖刺さる


せめて痛みを共有したい しあわせなわたしは棄てて遠くへ行こう


ラーメンを待ってる間の真剣な表情わりと嫌いじゃなかった


幸せを強要されるように夏、なつ、晴れ、ずっと明るいまんま


深夜二時、ストゼロかけて食うアイスクリームきみを心から消す


覚えてる深夜のTSUTAYAで見かけあうぼくら確かに同士だったね


今はもう追いかけていないアイドルの歌声不意にぼくを励ます


ささやかな「君も読んだ本」コーナーがどんどん広がるこわいくらいに


できるだけ自由な発想で握られたおにぎりエキスポ、来年開催


あす処女を喪うだろう左様なら一角獣よ、幼心よ


もうやめろ俺に電波を送るのは毒電パパパパインラーメン


十年前の短歌雑誌の投稿欄は知らない名前ばかりで(あ、これ)


行き先をお任せにしてタクシーに乗ってハワイに着けばいいのに


ちょっとずつ自分を消した消しカスで作る練り消し恐竜、弱い


どこへでも行こうよ眼科検診の気球に乗ってどこか遠くへ


消費する言葉をことばを食べるとき排泄はいせつするような歌


擬音でしか知らないあらゆる音たちをふたりで探しに行こうよ 夏に


「そうじゃこれがぶつかりおじさん達の来世」神はアートアクアリウムをつくった


大切な歌をしまったフォルダーのパスワードみな「yakinikutabetai」


短冊に記すは決意 さようなら未熟でかわいい時代のわたし


IHコンロの部屋へ越して行く二度と燃えない君よ、さよなら


ぼくたちが魚であった痕跡を見つけるように風呂で交合う

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さばささる名義の短歌 さとうきいろ @kiiro_iro_m

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