第6話 竜屍兵の襲撃
ここ数週間、俺達は情報収集と出発のための準備、作戦会議をしていた。
俺達元
黒い霧に蝕まれた身体を療養する必要があったのだ。
これは貴重な回復手段であるメイエルの魔法では治せない。
この黒い霧は復活した勇者達やラウラの証言により魔竜の瘴気よりもひどく厄介なことが判明している。
魔竜の瘴気は1日ごとに
だが黒い霧は10分ごとだ。減り方は推定で5倍になっている。
効率にしてなんと魔竜の瘴気の720倍だ。
にも関わらず、必要な療養期間は以前のまま。
元気そうに見えるラウラの身体は浸食により満身創痍で、完全治癒まで
加えて1度入ると脱出が不可能という話が難易度の高さをより現実的にしていた。
準備は入念に行わなければならない。戦いは準備をしなければ勝てないのだ。
この暗黒の未来世界では、魔法を取得することが実質できないため
その為
推定で2時間近く潜伏していたラウラが満身創痍なのも頷ける。その事実に気付いてまた驚いた。
俺も魔法は扱えないが、冒険者活動でわずかながらマナの保有量は伸びている。恐らく最短40分程度だろう。
敵の情報を分析解析をする度に、ひどい環境だと痛感する。
ラウラはよくこんなの潜り抜けたな…。
この話をしても、勇者達の中には再び黒い霧に突撃する者達がいた。
命が惜しくないのだろうか。現状、彼らは案の定帰ってこない。
情報をまとめていると、けたたましい声が集落の入口の方でした。
ラウラの治癒とどっちが早いかと思っていたが、どうやら客が来る方が先だったようだ。
◆
勇士達と集落の戦士たち、そして俺は結界の外に出る。
相変わらず赤い月明かりに照らされるだけの岩肌が続く暗黒の世界だ。
そこには普段いない者達がいた。
このラクシアではよく見る動物植物幻獣人族蛮族。
しかして、彼らは似て非なる姿をしている。
その身体は鱗に覆われ、頭には角。一対の皮膜の翼を背に授かっていた。
記憶に一致する。彼らは
大半を占めるスレイブだけでなくパワードやワイズ、ミアズマも混じって…。
「あいつとあいつを殺せ!」
先に戦闘を開始していた戦士達に加勢し、
俺はダムドミアズマカーバンクルと、ダムドパワードドルギラスの背に乗るダムドワイズバジリスクを指差し、攻撃指示を出した。
事前に攻撃対象の指示ができるようには事前にコンサンセスはとってある。
幸いなことに、相手の戦力はさほどなものではなかった。
一番強くて
ドルギラスは7m程の額に2本の角があるサイに似た大型動物だ。
さほどといってもこれ一頭で小国家を場合によっては滅ぼすのだが…。
まぁこの勇士の軍団ならば問題ないだろう。
まずは俺達が変異していたダムドスレイブ。
これは魔竜の瘴気もしくは黒い霧によって
親であるフォールン及びダムドミアズマを倒し燃やすことで元に戻る。
動物並みの知能しかない。
次にパワー型のダムドパワード。
強い肉体を与えられた
フォールンの兵だ。ほとんど自分の意志を持たないが、個体によっては知能が人間並みまである。
厄介なダムドワイズ。
他と違い自我を持つ
パワードと同じく飛べるほどの翼をもち、6つの目がある。
恐ろしいのは生前の姿への擬態だ。これはダメージを受けると解除される。
最後にダムドミアズマ。
魔竜の瘴気を出す能力を持った
パワードと同じく自分の意志をほとんど持たない。胴回りが太いのが特徴。
フォールンドラゴン同様死体を燃やすと、紐づけられているダムドスレイブが元に戻り蘇生する。
ダムドミアズマは
少なくともこの解放された地域に出張するために必要になる。
戦力増強及び黒い霧解放のため、この世界でダムドミアズマは優先して殺すべき敵だ。
戦闘自体は圧倒だった。
俺が指示して10秒と経たずカーバンクルの首が跳ねられ、バジリスクは投擲された複数の槍に貫かれ、ドルギラスの背から落ちた。
その後バジリスクは魔物形態に変身したが、勇士達にドルギラスごと袋叩きにされた。
今はもう指揮官を失って弱体化した残党兵を無力化している。
俺は敵陣をかいくぐってこっそりカーバンクルを燃やした。
ダムドミアズマを燃やしても、黒い霧の解放はなかった。
やはりフォールン本体の撃破が必須か。
うーん、やはり勇士全員アホみたいにつよい。
敵の威力偵察…というには過剰な戦力ではあったが、相手にならないか。
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