風邪

 数日後、やっぱり桜子は風邪をひいた。

 

 

 桜子が学校を休んで二日後…

 

 

 冴木くんは、まだ風邪をひいていない。

 

 お見舞い…いってないのかな?

 

 それとも…風邪うつしちゃいけないから、キスは治ってからたくさんしよう♡って約束でもしたのかな…。

 

 

 

 …

 

 

 オレはいつのまにか、冴木くんの前にいた。

 

 そして…

 

「あのさ、冴木くん。桜子…大丈夫そう?」

 って聞いていた。

 

 

 すると冴木くんは…

 

「え、知らない」

 って言ったんよ⁉︎

 

 

 知らない⁉︎

 

 なんて冷たい…

 

 

 冷気漂う冴木くん…

 

 夏場にぜひ‼︎一家に一台!っていっている場合では、ありませぬっ‼︎

 

「知らないの⁉︎連絡の返事来ないくらい重症ってこと?」

 と、めっちゃ目を見開いて聞いちゃったよね…。

 

 そしたら、冴木くんったらまた冷静に

「あの人とは、別れたから知らない」

 って言ったんよ⁉︎

 

 ええええええええっー‼︎

 

「わ…別れたの⁉︎」

 

「うん。」

 

「なぜっ⁉︎」

 

「あー、理想と違ったから?違うか…?なんか…オレがふった?っていうかー…フラれた…っていうか…とりあえずご縁がなかったっていうのかな?」

 

 と、いった後…爽やかに笑った。

 

 

 …

 

 

 …笑えねーって。

 

 冴木くん…

 

 どうしてキミはそんな…いっつも冷静で爽やかなんよ…?

 

 

 オレは居ても立っても居られなくて、早退して桜子の元へ全力疾走した。

 

 

 こんな慌てて家の方向に戻るんなら、はじめから休めばよかったって思ったけど…休んでたら、別れたって情報は手に入らなかったわけなんだよなーって思いながら走った。

 

 

 色々考えて、働く脳みそ、そして走るオレ。

 

 

 そして桜子の家に着いた。

 

 

 玄関のチャイムを鳴らすと桜子が出てきた。

 

 

「あれ?ケホッ…な、なんで?ケホッ…てっきりピザが届いたと思ったのに」

 

 …

 

「なんで、風邪ひいてんのにピザ届くんだよ…ピザなんか頼んでないだろ?」

 

 

 

 

 ブロロロロロ

 

 …

 

 きた…

 

 普通にピザの宅配便がやってきた。

 

 

「マジ?」

「うん、マジ。」

 

 そうだった…。桜子は、風邪ひいてても食欲だけは、めっちゃあるんだった。

 

 

「熱は?」

「だいぶ良きー」

 

 …めっちゃ元気だ。

 

 

 あ、でも…これは、から元気なのかもしれない。

 

 だって、冴木くんと別れたばっかりなんだもんな。

 

 

 

 

 

「遼も、どうぞ。ケホっ」

 

 咳をしながらのピザ配布。

 

 どうぞって…そんなの食って、もたれないのかよ⁈

 

 

「あー、オレ…腹減ってない」

「あそ?ケホっ。で、どうして学校サボったの?」

 

 …

 

「かあちゃんかよ?サボってないよ。ただ…早退してきたんだ。冴木くんから別れたってきいて。」

 

 

 …

 

 ピザをくわえて一時停止する桜子。

 

 

 そしてモグモグしたあと、

「聞いたんだー。じゃあ、アレも聞いた?」

 っていわれたんだよね。

 

「アレ?」

 

 …

 

「聞いてないんだ…。ケホッ。ま、それはいったんおいといてさ…わたし実は、好きな人いたの。それもずっと前からね。なんなら冴木くんには、申し訳ないけど…冴木くんと付き合う前からいたんだ。まぁさ、それをわたしも最近知ったからあれなんだけどね。」

 

 って意味のわからないことを淡々と話す桜子。

 

 

「好きな人いたのに気づかないとかあるの?それって好きじゃないんじゃない?」

 

 オレの言葉に桜子は、

「それが、わたし漫画読んで気づいちゃったの‼︎わたしが唯一キスできる相手を、っゴホッ」

 と、咳をしながらのおめめキラキラでオレをみてきた。

 

「…ああ、ペットの猫か」

 

「違うよ‼︎」

 

「なら、バーチャルの世界でってことか」

 

「そうじゃなくて……。てかさ、冴木くんから聞いた?」

 

「なにを?」

 

「妹…」

 

「妹?冴木くん妹いるんだ?」

 

「ううん。妹ってわたしのこと。わたし、告白されたらその気持ち受け入れるのが一番だと思って今まで付き合ってた。でも、漫画読んでわかったの。付き合うって遊びじゃないんだって。一緒にいればいいってわけじゃないって。だから、…ずっと冴木くんに好きな人いるから別れたいって言いたくて…でも、言えなくて…今日こそは、今日こそはって頑張って毎日帰りに言おうとして言えなかったんだけど、ある日…遼と本屋にいた妹ヤバかったって…それ聞いたらすんなりさ、あの本屋に遼といた妹ってわたしだよって言えたの。そしたら…ヤバって小声でいわれたんだ」

 

「あー…」

 

 てか、めっちゃ喋るし、咳とまったの?かな?

 

 

「でね、女っけなくてごめんなさい。あと、好きな人があなたじゃないって本屋であった次の日、気づいてしまいました。ごめんなさいって言ったんだ。そしたら、オレ外見重視なんだよねって。だから、わたしって中身じゃなくて外見だけしかみてもらえないんだって思ってね…ゲホゲホ」

 

 桜子…

 

 やっぱり咳とまってなかったんだね…

 

 って、今はそこじゃない!

 

 

「オレは…どんな桜子だってかわいいと思うし、特に…オレの部屋にいるときの桜子が一番ほんとうの桜子だって思う。話し方とか、仕草とか。学校にいる桜子は、凜としてて美しいのかもしれないけど、でも…そんなんじゃ肩凝るんじゃね?もっとリラックスしてもいいとオレは思うけどな。あと、話しながらめっちゃ食うね。」

 

「うん、ありがとう。好きな人には、すべてを受け止めてもらいたい。」

 

「うん、そうだね。」

 

 

 って…

 

 さっき桜子…好きな人いるって言ってなかった⁉︎

 

 

 …

 

「てか、冴木くんのこと好きじゃなかったんだ?」

 

「うん。努力は、したよ?でも…漫画読んでわかったの。キスもハグも冴木くんとじゃ無理なんだって。」

 

「あー…、でもめっちゃ桜子…冴木くんみてたよね?」

 

「あれは、本屋の出来事がバレたかバレてないか様子見てたの。バレてたら、絶対恥ずかしいし、だれにもバラしてないよねって、軽い監視みたいな…ね。だってあの日…色々ヤバかったからさ。思い出しても赤面するくらいラフだったでしょ?」

 

「あー、そうなんだ。だから冴木くんがオレに何かいってきたかと思ってこの前聞いてきたんだ?」

 

「うん、さぐり。」

 

 …

 

 冴木くんは、桜子にめっちゃみられてたから、どうしたのかって思ってオレに聞いてきたっぽいな。

 

 

 キスとか、オレの勘違いかー。

 てか、ただの妄想だった。

 

 とりあえず桜子が元気そうでよかった。

 

 

 

「あのさ、桜子って…好きな人には、告白するの?」

 

「うん。する!でも風邪治ってからしようと思うの。」

 

「…そうだね。オレ…応援するよ。」

 

 桜子…やっと本当の恋を手に入れるんだね。

 

「応援…してくれるんだ?」

 

「うん。だって幼馴染だもん」

 

「そっか…わたしフラれるかもしれないな」

 

「そしたらオレが慰めてやるよ」

 

 …

 

 

「漫画みたいに?」

 

「うん。泣くなよ!的な感じでさ」

 

 …

 

「わたし…フラれたくないグオッホゥオン。遼とは、ずっと一緒がいい。」

 

「うん。」

 

 …

 

「えっ?」

 桜子…今なんて?

 フラれたくないグオッホゥオンってのがインパクトあったけど…オレと一緒がいいって言わなかった?

 

 

「あ、うっかり風邪治ってないのに告白してた…ゲホゲホゲホゲホっ」

 

「大丈夫かよ…てか、え?好きな人って…オレ⁉︎」

 

「うん…」

 

「マジ⁉︎そっか。なら今すぐオレに風邪うつしていいぞ。咳辛いだろ。オレが全部もらってやるよ」

 

「え、でも…」

 

「大丈夫だから。ね?」

 

「うん。」

 

 …

 

 

 少し熱っぽい桜子とオレはくちびるを重ねた。

 

「桜子、オレも桜子がずっと好きだったよ」

 

「遼〜♡」

 

 桜子がオレに抱きついた。

 

「桜子、あったかいな」

「うん、ピザ食べて代謝上がった」

「熱じゃなくて代謝かよ?」

「そうだよ、だって早く元気になってたくさんイチャイチャしなきゃでしょ?」

「じゃあ、もう元気になった?」

「まだ風邪気味だよ…。」

「なら、もう一回キスして風邪菌もらわなきゃだ」

 

 チュ〜♡

 

 

 

 こうして、オレたちは漫画以上にイチャイチャして暮らすのでありました。

 

 

 おしまい♡

 

 

 

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風邪と恋愛を拗らせた幼馴染…これって治る薬とかありますかね?いえ、ありません…いや、ありました⁈ 猫の集会 @2066-

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