中編1

 地村十利   ランク:H   NEXT:0/100


体力:15

魔力:0

攻撃:12

防御:10

魔攻:0

魔防:10

敏捷:12

 運:1


ユニークスキル:残機10億ビリオン・ライフ


 ユニークスキルという欄を見て十秒ほど固まった。

 何故ならユニークスキルとは、稀少の中のさらに稀少な能力だと聞いていたからだ。


 魔法というものは、大きく分けて三つ。

 属性魔法・治癒魔法・支援魔法


 人によって得意分野が異なり、冒険者はその長所を伸ばす鍛錬が必要になる。

 世界が変貌してから二十年以上、魔力を持って生まれてくる者たちは増え続け、魔法を扱える者もまた増加した。

 それでも魔法を扱えるのは、十人に一人くらいの確率だろうか。


 そして――スキル。これは一万人に一人と言われるほどの珍しい能力だ。

 特殊技能、異能、超能力などに分類されるような、個人的資質による先天的な才能のこと。


 簡単に言うと、魔法のカテゴリーに入らない特別な力である。ただ必ずしも戦闘に役に立つとはいえない。しかし使い様によっては、本人にとても大きな利をもたらしてくれるものなのは違いない。

 故にスキル持ちというのは特別視されるし、多くのギルドから勧誘されるような引く手数多な人種と成り得る。


 そしてこのスキルの、さらに稀少なのが〝ユニークスキル〟だ。


 スキルの中には似たような、あるいは同じスキルを持つ人物がいたりするが、このユニークスキルは、世界でたった一人だけに許された唯一無二の能力なのである。

 確率的に言うと、百万人に一人とされ、そのほとんどの能力が秘匿されていた。

 ステータスに刻まれている文字が信じられないつつも、思わず無意識に呟いてしまった。


「……《残機10億》?」


 その直後、脳内に激流が流れ込んできたかのような衝撃を受けた。

 そしてそれが様々な〝情報〟であり〝記憶〟であることを知る。


 一体どれだけの時間、硬直してしまっていたのか……。


 ハッとして我に返った十利は、《残機10億》という恐ろしい能力の使い方を得た。

 ただそこで冒険者登録をすることなく、十利は一心不乱に神殿から駆け出て、支度金として与えられた金で取った宿へと向かう。

 宿に辿り着くと、すぐに借りている自室のベッドの上に飛び乗り、大きな溜息とともに身体を反転させて天井を仰ぐ。


 頭の中が渦を巻いているように混乱しているのは明白で、まずは冷静になりたかった。

 そして最初から今日の出来事を思い出していき、再び神殿での件に辿り着く。


「…………ユニークスキル。俺に……こんな力が」


 魔力も持たず、魔法は使えない以上、冒険者は諦めなければならないと絶望を感じた。

 これから永遠に等しい時間を、奴隷として過ごさないといけないのかと。

 しかしステータスを見て、絶望の中に希望があることに気づいた。

 この力があれば、十利は冒険者として稼ぐことができる……かもしれない!


 そう思えるだけの知識が頭の中にはあった。まだ実感こそしていないし、ハッキリいって本当に上手く使いこなせるかも分からない。

 だがこのまま成す術なく言いなりになるのだけは嫌だ。どうせ負けるなら、最後まで足掻き切って負けることを選ぶ。


 そうして十利は、改めて冒険者になることを決意し、翌日――冒険者になった。



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