第23話 寄り道

「くそ……俺たちが今までやってきたことが、全部消されるのか?」


俺は焦りと怒りを感じた。もしキーマスターがこの空間をリセットすれば、俺たちがここまで戦い抜いてきたすべてが無に帰す。それだけでなく、下手をすれば俺たち自身も存在しなくなるかもしれない。


「奴がキーボードで打ち込んでる内容を消せば、リセットを止められるはずよ!」


桐生が鋭く叫ぶ。彼女の目は、今この状況のわずかなチャンスを見つけ出していた。


「でも、どうやって……この揺れの中じゃ、仙台の能力も……」


「いや、やってみるしかない」


仙台は歯を食いしばり、必死にバランスを取りながら立ち上がった。


「仙台、行け!」


俺が叫ぶと同時に、仙台は全力でキーボードに向かって走り出した。彼が目指したのはキーボードのさらに向こう側。到着点ではなく経過するときに攻撃する。

タイミングを合わせ不安定な空間の中で、時間や空間が歪んでいようと、彼の「3秒」のタイミングは決して狂うことがない。


キーマスターの指が「Enter」に触れようとしたその瞬間、仙台の蹴りが彼の手を弾き飛ばした。


「これで終わりだ!」


加賀が叫び、もう一度サイコロを転がした。サイコロは床を転がり、今度も「6」を示した。運命の「6」の目が再び強力な力を呼び起こし、キーボードそのものが粉々に砕け散った。


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